世界トップクラスのコーヒー豆を“簡単に淹れる”という贅沢について
我々重度のコーヒー好きという人種は、その多くが一杯のコーヒーのための手間暇をかけることを厭わない。
たとえば、豆を挽くところから始めるとか、ドリッパーを前もって温めるとか、蒸らしに使う湯量はキッチリ全体の20%にするとか。
こういう手間暇をかけることで美味しいコーヒーを飲むことができ、豊潤なコーヒータイムを過ごすことができるのだ。
手間暇、最高。アイラブ・手間暇。
さて、そんな手間暇原理主義者の前に、今、丸山珈琲のコーヒーバッグという代物がある。
昨年11月、渋谷スクランブルスクエアに丸山珈琲のコーヒーバッグ専門店がオープンした。
“お湯を注ぐ”ドリップバッグとは異なり、コーヒーバッグはティーバッグと同じように“お湯に浸ける”のが特徴だ。
コーヒーバッグそのものは、特に最近は多くのコーヒー豆店・カフェで販売するようになってきた。
しかし、丸山珈琲のこちらのお店のコーヒーバッグの特徴は、スペシャルティコーヒーをコーヒーバッグに封入しているという点にある。
つまり、メッチャ美味しい高級なコーヒーを、コーヒーバッグで簡単に手軽に飲めてしまう、ということだ。
おいおい。
手間暇をかけてこそのコーヒーだろ。
しかもスペシャルティコーヒーをそんな手軽になんて…
その味、この私が確かめてやる…!
ということで、実際に渋谷に足を運び、コーヒーバッグを購入してきた。
(ちなみに、お店に伺った時点で店員さんとコーヒートークで盛り上がり、コーヒーバッグも三種類くらい試飲させていただき、「コーヒーバッグもかなり美味しいですね!」とあっさりコーヒーバッグ賛同派の軍門に降ってしまった。なのでここから下の文は、コーヒーバッグへの批判的な視点もなく、ただ私が自宅でコーヒーバッグを楽しんでいる様子が書かれているだけのため、閲覧には注意していただきたい。)
今回購入したのは「ロス・グランデス・デ・コペイ」という、2019年のコスタリカのCOE (※)1位を獲得した豆だ。
※COE:カップ・オブ・エクセレンス。年に一度、その年に各国で収穫されたコーヒーのなかでも最高品質のものに与えられる称号で、今回の場合は要するに2019年コスタリカで最も高品質のコーヒー、ということ。ちなみにコスタリカは今コーヒー業界でもっとも注目されているコーヒー生産国のひとつ。
この豆はまだ日本の市場には殆ど出回っていないアナエロビックという特殊な精製方法を用いられている。
正直、「豆でそのまま売ればいいじゃん…」と思わなくもないが、そこは丸山珈琲さんの心意気、誰でも簡単に世界トップクラスのコーヒーを楽しめる、ということだ。
(アナエロビックって何?って話をすると話が長くなるので、今は「要注目の精製方法!」くらいに思っていただければいい)
実際にこのコーヒーを自宅で入れてみた。
用意するものはコーヒーバッグ以外に、カップ・計り&タイマー・お湯。
抽出手順は
①カップにコーヒーバッグを入れる。
②お湯をちょっと入れて30秒待つ。
③お湯を適量まで加えて4分待つ。
④コーヒーバッグをちゃぷちゃぷして取り出す。
以上。とっても簡単。
あまりに簡単すぎて、すごく落ち着かない。
そもそも、普段コスタリカCOE1位の豆なんか淹れない。
そんな素晴らしい豆を、手間暇をかけずに淹れてしまっていいのだろうか…そわそわする…
キッチンを意味もなくウロウロすること4分。完成。
美しいキャラメル色。
お味は…コーヒーと形容することを躊躇ってしまうほどの鮮やかに広がる香り、豊潤な果実味…
手間暇をかけることが当然、それが当たり前だった。
しかし、今私はただお湯を入れて待つだけでコーヒーを飲んでしまっている。
しかも、使っているのは普段自分で購入することなどほぼない、世界トップクラスのコーヒー豆だ。
背徳感すら覚える…
美味しい。とても美味しい。
浸けるという方法で淹れているため、ドリップよりはフレンチプレスで淹れたような味わい・舌触りに近いような気もする。
バッグの中のコーヒー粉はやや細挽きといった感じだった。
コーヒーバッグという選択肢はなかなか楽しいかもしれない。
コーヒー好きには手間暇かけずに美味しいコーヒーを淹れるという背徳感を伴う贅沢として、コーヒー初心者には手軽に美味しいコーヒーを飲めるというコーヒー沼の入り口として、コーヒーバッグという選択肢は要注目である。
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