沼にハマるる歌
どうかわたしを引きずり込んで
その魅力のどツボに
虜になったわたしは
霞でも銀玉水でも貪欲に取り込んで
見通し0センチのその泥水をかき分ける
いざ、未踏の地へ
かつては不要の土地だと開発された湿地へ
湿地は湿地のままでいいのだ
多様性が潜んでいる
*
英語沼にハマったのは13のときだった
童謡の押韻の美しさとメロディに魅せられた
広島の話を読んでくれたカナダ人指導助手の先生の発音が美しかった
それらを、自分のものにしてしまいたいと思った。
アニメ沼にハマっていたのは10くらいのときだった
週間スケジュールをつくって見逃すまいとしていた
漫画のもつメタファーが熟しない心を捉えていたことなど
そのときどうしてわかっただろう?
インド映画沼にハマったのは30のときだった
6年近く閉じていたものが少し開いて、現実で恐る恐る、一歩を踏み出し始めた時だった
こんなにも喜びを表しながら生きていけるなんて!
悲しみを踊り飛ばしてしまうことができるなんて!
それは芥川龍之介の描写した蜘蛛の糸に似ている
わたしは、必死に糸をたどった
心を殺して、生きながら得て
この生に何の意味があろう?
*
どうかその魅力で虜にして
何に心惹かれるかはあなた次第
虜になったあなたが
他人の視線を本当の意味で気にせずに
自由に生きることができたなら
この世界は豊潤で湿潤な
楽園になるでしょう
湿地は湿地のままで
あなたはどの沼にハマりますか?
”緑の森よ 谷よ丘よ われ今しばし 慣れと別れん”
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