見出し画像

【蓮ノ空感想文】DOLLCHESTRAショートコント批評

こんにちは。
わたくしはリンクラサークル『わたくしは大丈部』の看板娘(兼サブリーダー)を務めている花宮ニルヴァーナと申します。わたくしたちはリンクラで最も大丈夫なサークルをコンセプトに掲げ、わたくしたちの大丈部が本当に大丈夫であると信用してもらえるよう日々活動に励んでいます。

そんなわたくしが思わず「大丈夫か……?」と零してしまうような配信が2024年6月29日にスクールアイドルコネクトにおいて実施されました。DOLLCHESTRAの3人による『ENTERTAINMENT』と題されたWith×MEETS配信です。予告画像にはCOMEDIANの文字を背景に佇む3人が写っています。

確かに夕霧綴理は独特の感性を持っていますし、徒町小鈴の振る舞いには愛嬌を伴った可笑しさがあります。そして、そんなふたりに対する村野さやかの応対は時としてお笑い芸人のツッコミのようでもあります。しかし、それらは他人を笑わせるために演じられたものではありません。そんな彼女たちが、意図的に『お笑い』を行えばどうなってしまうのでしょうか? ともすると、それはわたくしたちの『DOLLCHESTRA感』を揺るがすことになりかねません。この配信の内容次第では、わたくしたちは今後、夕霧綴理の奔放さを、徒町小鈴の健気さを、あるいは村野さやかの真面目さを『お笑い』と受け取らなければならなくなるでしょう。わたくしはただならぬ緊張感をもってWith×MEETSに臨みました。

配信が始まると、幾らか舞台袖のやりとりが聞こえた後にDOLLCHESTRAの3人が喊声をあげながら登場しました。先頭は徒町小鈴、次に村野さやか、その背後には「ぱちぱちかちまち」と口遊む夕霧綴理が続きます。どう考えても大丈夫ではありません。各々の自己紹介とDOLLCHESTRAの名乗りの後にも、夕霧綴理は追い打つように「ぱちぱちかちまち」と唱じます。これはアドリブなのか。それとも台本なのか。いったい誰の発案によるものなのか……わたくしの脳裏には「綴理先輩はぱちぱちかちまちと言いながら出てきてください」と指示する村野さやかの姿が浮かびました。やはり、この配信は大丈夫ではないのかもしれません。そんなことを考えているうちに、ショートコントが始まりました。まさかのショートコント。モノマネでも、一発芸(これは昼の部でやったらしい)でもなく、ショートコント。わたくしたちはこれから何を見せられるのでしょうか。本記事では、そんな不安と期待のもとに披露されたショートコント10本を振り返り批評を行いたいと思います。

果たして、彼女たちのエンターテイメントは大丈夫なのでしょうか――?

●1本目『警察手帳』
まず前提として、わたくしはこの配信で披露されたものは複数のショートコントを連ねた一本の漫才であったと考えています。同じフォーマットのやり取りを繰り返し、その過程や結果に変化をつけることで笑いを誘う形式のお笑いです。これは『システム漫才』と呼ばれ、2019年のM-1グランプリを制したミルクボーイの漫才によって広く知られることとなりました。この警察手帳と題されたショートコントは、警察手帳を見せびらかす夕霧綴理に村野さやかが「自慢したいだけ!?」と応じるシンプルなネタではありますが、これから始まる一連のネタのフォーマットを視聴者に理解させるという意味で、トップバッターに相応しい内容であったと言えるでしょう。

●2本目『エレベーター』
打って変わってボケが徒町小鈴に移ります。ここでボケを夕霧綴理から徒町小鈴にスイッチしたことも、この芸のフォーマット(即ち、夕霧綴理か徒町小鈴がボケて、村野さやかがツッコみ、チェストーで締めるという流れ)を視聴者に印象付けるうえで効果的だったと思います。しかし、階層という意味の『何階』と、回数という意味の『何回』の誤解で笑わせるというネタの内容には少し無理があったのではないでしょうか。そもそもエレベーターの中で小鈴が「押しますよ」と告げた後に「何回ですか?」とたずねる理由がありません。お笑いとは、視聴者が想像出来る部分と、その想像を裏切る部分の接合によって成り立つものだとわたくしは考えています。その点において、このネタにはまだまだ改善の余地があると思います。

●3本目『桃太郎』
個人的に好きな一本です。夕霧綴理の魅力がよく活かされています。彼女の持つミステリアスな雰囲気と、どこかあどけなさを残した可愛らしさをお笑いに転用した秀作であったと思います。ただし、オチが弱かった点は残念です。流れてきた桃を警察に届けたという綴理に対して、「常識的ですね」と応じる村野さやか。ここはもうひとつ捻りが欲しかったように思います。たとえば、「常識的ですね。綴理先輩ならその場で食べちゃったのかと思いました」のように、夕霧綴理が活動記録の中で稀に発する「ボクなんなの」というセリフに繋がるようなツッコミがあれば、よりネタに奥行きが増したのではないでしょうか。

●4本目『名推理』
さやかが作ったお菓子を食べた犯人が分かったと声を上げる小鈴。その犯人が小鈴自分であるという古典的な内容の一本です。そんな彼女に対する「ただの自白ですよね」という村野さやかのツッコミも明快です。そこで終わるかと思いきや、夕霧綴理がチェストーを言い忘れてしまい微妙な間が生じてしまいます。これは、(台本通りであれば)ここまでの流れを上手く利用した変化球であったと言えるでしょう。この変化球を印象付けるために本題部分を簡素にしたことも評価出来ます。

●5本目『たまねぎ』
中盤に差し掛かり、ここでさやかのツッコミに変化が現れます。しくしくと涙を流す夕霧綴理に対して、さやかは「どうしたんですか?」とたずね、たまねぎが原因であることを知ると「なんだ目に染みただけですか」とコメントしています。これにより、その後に続く夕霧綴理の「食べられるたまねぎが可哀そうで」というボケを際立たせることに成功しています。往年の笑点で繰り広げられた五代目三遊亭円楽と桂歌丸の掛け合いを想起させる秀逸な一本であったと思います。

●6本目『コーヒー』
夜に勉強をするためにコーヒー飲んだのに眠気がとれないという小鈴。そんな彼女に対して夕霧綴理は自分はコーヒーを24杯飲んだから眠くないと言います。そもそもなぜコーヒーを24杯を飲んだのかという理由が触れられていないため、ただ夕霧綴理が異常であるように感じてしまいました。まず眠気を退けなければならないという理由を説明してこそ、「(眠気を退けることは出来たが)別の問題が起こりそうですね」というツッコミが活きるのではないでしょうか。

●7本目『太陽』
フリからボケまでを夕霧綴理が一気通貫で行うシンプルなネタ。このネタ自体に特段の面白さはないものの、10本構成の7本目にこのネタを持ってきたことを評価したいと思います。ひとつ前のコーヒーのネタが少し長めだったこともあり、ラストスパートに向けてテンポを整える役割を果たす一本だったと言えるでしょう。

●8本目『運転』
車の運転に憧れていて勉強をしていると言う小鈴。上がアクセルで下がブレーキと語る彼女に対して、さやかが「何と勘違いしてるんです?」と応じます。小鈴の勘違いの正体も判明せず、釈然としない内容の一本だったように思います。アクセルとブレーキの位置を間違うというボケに、聞き手は不穏な予感さえ覚えるでしょう。アクセルが上で、ブレーキが下にある乗り物について何らか想像の余地が与えられていれば、もう少し咀嚼しやすい一本になったのではないでしょうか。考えてみれば、今回披露されたショートコントには『例えツッコミ』がひとつもありませんでした。活動記録本編において村野さやかは夕霧綴理の大丈夫発言に対して「昔の梢先輩ですか!?」と見事な『例えツッコミ』を行っています。ここでその力量が十分に発揮されなかったのは残念な点です。

●9本目『スケジュール』
今日は一日中スケジュール通りに行動すると決めた夕霧綴理は、まず『目をあける』ところから始めようとします。これに対して、さやかが「また細かく決めましたね」とツッコミを入れるベタな展開です。ここでわたくしはあることに気付きました。1本目の警察手帳から始まり、奇数番目のネタ――つまり、夕霧綴理がボケを務めるネタを、わたくしはベタだと感じる傾向にあるようです。それは、ともに過ごした時間の違いかもしれません。わたくしはまだ、徒町小鈴を夕霧綴理ほどに知ることが出来ていないのでしょう。もし来年の撫子際でもDOLLCHESTRAが一発芸を披露したならば、わたくしは小鈴のボケをベタだと感じるのでしょうか? 一年後のことを想像すると寂しさばかりが過りますが、わたくしは来年の撫子際が少し楽しみになりました。

●10本目『神頼み』
困った時は神頼みだと言い、何かあったら自分を頼るようにとさやかに告げる小鈴。そんな彼女を後目に、「すいません。あの、後輩が急に神を名乗り始めて困っているんですけど」と聴衆に訴えかけるさやかの台詞回しが光ります。続いて現れる夕霧綴理に対する「先輩まで神になった?」というコメントも秀逸です。With×MEETS Afterでも示唆されていましたが、今回披露されたショートコント全10本の中で唯一のダブルボケです。夕霧綴理と徒町小鈴のダブルボケを捌ききった村野さやかによる二段オチが爆笑をさらう、トリに相応しい傑作であったと言えるでしょう。


以上。DOLLCHESTRAによるショートコント10本を振り返ってみました。
あなたはどのショートコントがお気に入りですか?

こうして振り返ると、この短い10本のネタの中にもコメディアンとしての彼女たちの成長が垣間見れるように思います。来年の撫子祭ではどんなネタを見せてくれるのでしょうか? 来年はさやかと小鈴のコンビになるのか、それとも新入生を交えたトリオとなるのか。新入生が加わるならば、その子はボケになるのか、ツッコミになるのか。想像は膨らむばかりです。そんな彼女たちのスクールコメディアンとしての未来に期待を込めて、本記事の括りにしたいと思います。

追記:
この度、『わたくしは大丈部』の姉妹サークル『あなたなら大丈部(正式名称:もしあのときわたくしかあなたのどちらかが諦めていたら今のようにはなれなかったきっとねリンクラサークルはずっとずっとそうしてきたのだから大丈夫あなたなら大丈部)』が発足しました。スコア不問・ファンレベル不問のサークルです。大丈部に興味があるけど、わたくしは大丈部の入部基準を満たしていないという方は、是非『あなたなら大丈部』へのご加入を検討いただけると幸いです。

わたくしは大丈部 サブリーダー
花宮ニルヴァーナ 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?