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すみだオモシロ文化祭(2019.11.24)

主催は自転車操業で名高い、アナログ専門レーベルのなりすレコード。
曽我部恵一との共催で、音楽フェス的なものをやると言うので出演者を見るとなかなかの面子。
主催者と同じく自転車操業の生活を送っているので、給料日前日と言うのは中々のハードルの高さであったが、何とか金策。

会場の八広地域プラザ「吾嬬の里」は、墨田区立第五吾嬬小学校の敷地に建て直された公民館的なもの。
建築年次の比較的新しかった体育館だけは、そのまま使われている。

多目的ホールと音楽室の他、調理室と会議室を借りての回遊構造。
多目的ホールのメインステージは主にオケで演る出演者。 後方のサブステージは楽器の入れ替えが多いバンド構成の出演者。
調理室と会議室は、ギター一本程度で大人しく。

以下、私の見た聴いた部分に関しての、私的まとめ。

曽我部恵一

受付を済ませてリストバンドを巻き、口開けの曽我部恵一を待つ。
曽我部恵一の真っ当なお客さんたちは、それぞれに家庭を築いている人が多く、パートナーと一緒だったり子供を連れていたり。 そう言う年代。
曽我部恵一も、娘との冷戦めいた日常の話を交えつつ。
家族で来ている人も多いが、似たような年格好でもやもめ暮らしの連中も客の多くを占めており、普段の現場ではけして交わることのない人々が共存して音楽を楽しんでいた。

空中カメラ

フェスティバル的な「ハレの場」は忌避して生きてきたので、同時進行で複数の演目がある事に慣れておらず、「さて、次はどうしようか」と思案に暮れているうちに、サブステージで空中カメラが始まる。
いい音なので、そのまま見ることにする。

好きだから巧い、巧いから自分の間合いで音が出せる、そしてそれを全体の中で整えることも出来る。
気合とか根性とか、そんな雑味が表に出てこない音楽。

ATOMIC MINISTRY

3776とどちらを見るか迷ったが、そのまま居残って ATOMIC MINISTRY。
音楽的にはなんだか良く分からないが、やっている方も見ている方も、兎に角楽しそう。

原初の宗教のような謎の高揚感。 朝倉みずほの「依代っぽさ」が上手く機能している。

963

音楽室の下見も兼ねて 963。
思った以上に狭く、鮨詰め。 ステージが一段高くなっている訳でもないので、平均身長くらいの女子の前に平均身長くらいの男の客がズラリ並ぶと、後方からはほぼ見えない。

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曲が良くて掛け合いも面白い。
撮るには厳しいが、聴こえればそれなりに楽しいので、撮ることさえ放棄できれば楽しく過ごせた。

Super Ganbari Goal Keepers

メインステージに戻ると、Super Ganbari Goal Keepers が佳境に入ったところ。楽曲提供した寿々木ここね(SAKA-SAMA)がゲストに入って一曲。

アイドルがバンドセットに入って歌う事に否定的な意見を目にすることはままあるのだけれど、それはバンドとアイドルの相性の問題である場合が殆どであるように思う。
SAKA-SAMAは送り手がトラッシュアップなので、その辺りよく分かっている。

彼女のサーブ&レシーブ

そのまま彼女のサーブ&レシーブ。
フューチャーテニスアイコンと言う設定は止めたらしく、それぞれに私服っぽい衣装。

ゆるく、明るく、楽しく、爽やかに。
喋る役と頷く役に分業されており、二人分喋る方の人が喋り疲れてキレる感じになるのが、毎度楽しい。

ぼんぼん花ーーー火

ぼんぼん花ーーー火から音楽室に流連。
ギター&ボーカルとドラムスの二人組。

老境に差し掛かったものには甘く苦い、元気なスクールロック。
最後にやった「寝ても眠い」という曲は、大いに共感。
しっかり寝たはずなんだが、いま現在眠い。


関美彦 feat.伊賀航 北山ゆう子 広瀬愛菜

何たる贅沢。 秘密クラブのような音楽室で、この顔付けである。
自分のステージとして客前で歌うのは一年半ぶりと語る関美彦。

「ジョアン・ジルベルトなら『エアコンを止めろ』とか言うよね」
などと軽口を叩きつつ、みっちり。
やる気が空回りしているようで空回りはしていない、通常営業。
狸と狐の化かし合いのような大人たちの音楽の掛け合いに混じって、一歩も引かない高校生一人。

広瀬愛菜の多面性を引き出せていると言う点に於いては、関美彦も名伯楽と呼べるのではないか。

WAY WAVE

エレキの若大将に「ギターの好きな蕎麦屋の出前」の役で出てきた寺内タケシのように、フラリと入ってきてギターのセッティングだけして出ていく曽我部恵一。
それは見なかったことにして開演。

べら棒に巧いんだが、鼻にかけても居ないしこれみよがしなところもない。
やっている事自体は高度なのだけれど、大変そうな素振りも見もせないし、間繋ぎで喋ると「抜けている姉としっかりした(でも抜けている)妹」なので、堅苦しくもない。
曽我部恵一が何食わぬ顔で戻ってきて、提供楽曲にギターで参加。
良いものを見た。

bjons

メインステージに戻ると、bjons。

歌詞が飛んでやり直す際の言い訳とツッコミの掛け合いが楽しい。
やる気はそれなりにあるが、やる気を全面に出ていないバンド。
聴いていて草臥れない。
「顔を見合わせて『ハッ』と驚く遊び」に興じながら入ってきた寿々木ここねと朝倉みずほも、曲が始まると聴き入っていた。


加納エミリ

変な動きもだいぶこなれてきていて、スーッと動いてピタリと止まるようになって来た。
(こちらが慣れただけなのかもしれない)
作詞作曲編曲から、今度出たアルバムではミックスまで手がけたとのこと。
本格的自作自演屋。
元ネタとの付き合い方、匙加減が上手く、きちんと換骨奪胎して自家薬籠中のものとした上で使っているので、不快さとしての偽物感が無い。

いーはとーゔ

音出しでさらっと「What's Going On」をひとくさり。


耳を掴んだところで本編へ。
凡てに於いて心地よい音なのだけれど、とりわけピアノが良い。
勿論曲も良い。
分かっている人が主催だと、こんな出会いもある。

SAKA-SAMA

新規蒔き直しになってどうなっているか気になっていたSAKA-SAMA。
原点回帰して、研ぎ澄まされたような印象。
寿々木ここねが演りたい事が、ここにはあるのだろう。

それを形にするパートナーとしての朝倉みずほと言うのも適役。
何かが降りてきた時の激しさや神々しさだけに目を奪われていたのだけれど、「次はサブステージで本日休演さんです。 楽しんでいって下さい。」とバトンを渡せる。
振り幅も奥も深い。

藤本国彦と曽我部恵一が語る【アビイ・ロード】50周年

最後は悩みに悩んで会議室へ。
「藤本国彦と曽我部恵一が語る【アビイ・ロード】50周年」
どういう成り立ちで作られたのか、ゲット・バック・セッションとの関係は、携わったエンジニアは的な話も興味深かったが、藤本国彦と曽我部恵一がそれぞれの自分史に絡めて語る「私的ビートルズ史」のようなものが、より印象に残った。
曽我部恵一はほぼ同世代なので、ビートルズ「以外」の音楽に関してはほぼ同じ頃に受容している筈なのだけれど微妙なズレがあり、私も自分史を振り返りたくなるような、なんとも言えない不思議な心持ちに。
お仕舞いに曽我部恵一がギター一本で、ビートルズに感化されていた頃に作ったものを何曲か。
曲の構成以上に、楽譜には載らない、楽器から出る音。 作動音で有ったり擦過音であったり、を意図して出したところが、憎いくらいに似ていた。

余韻を抱えたまま、徒歩で帰宅。
木戸銭を捻り出すだけでも一と苦労だったので、物販には全く貢献できず、申し訳ない限りであるが、とりあへずは赤字を出さずに済んだとのこと。
有り難いイベントだった。

(2019.12.01 記)

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