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石川野乃花 写真展「好きだ」最終日(演劇「暗室BAR 最終話~死神との契約~」+トークショー) (2019.11.04)

芝居とトークショーに関しては、見る前は「一回だけで良いだろう」と考えていたがこれが大間違い、全部見ておくべきだった。 後悔先に立たず。
最終日はキャンセル待ちで。

順番を前後させてトークショーから。 ゲストはきゃわふるTORNADOのプロデューサーである細谷準平。
今回の写真展が実現するに至った経緯は複雑なのだけれど、発端となったのは未完成映画予告編大賞への出品だったと思う。
その発端の「発端」、出品に至る経緯や撮影裏話など。
「アイドルのうちにこそ、何かやるべき」
「映画監督の他に何かもう一つ点を作って、三角形を作れると強い。」
「細かく助言すると石川のものではなくなってしまう気がするので、ああしたほうが良いとかではなく『こう言うものがあるよ』的な物言いにとどめている」
「こうやれ、とは言わない」
と細谷。

映画を撮るにあたって、レンズの効果や特性を知るために写真を始めたと言う石川。
それもあってか、石川の写真は一枚で語りきれているのに、前後にある物語を感じさせる。

そんな細谷の「好きだ」はベイヤーダイナミックのヘッドフォン。
二万円くらいの、然程高くないものだがバランスがよく、これで聴く音楽が「好きだ」。

キャリアの振り出しが演者で、裏方仕事をこなしつつ、経営の一角も担っている細谷。
もう一つの「好きだ」は行動デザイン。
「自分のデザインでひとが幸せになるのが嬉しい。」
敵を作らず味方を増やす Wallop の送り出すアイドルに共通する「真っ当さ」の源は、こんなところに有るのかもしれない。

そしてゲストとのやり取りの中で、アイドルとして装わない部分、石川野乃花の面倒臭い、厄介な部分の人間臭さが滲み出ており、その辺りも面白く感じられた。

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芝居は暗室BARの第三夜。
飲んでいた客が会計を済ませて出ていく体での一人芝居から、マスターが言葉を「発しない」のか「発することが出来ないのか」、石川が問い詰め始めたところで異変が起こる。

ちょっとした切っ掛けで声を取り戻し、人魚姫よろしく、願いを叶える代価として声を取り上げられていたことが明かされるのだけれど、ここからは堰を切ったように饒舌になるマスター。

身振り手振りのみでの芝居を課したと思ったら、最終盤で長台詞の山。 石川も食えないと言うか何と言うか。
遅筆なこともあって、役者泣かせではあるが、見ている分には面白い。

石川も四つに組んでの熱演。 オカルト掛かった芝居はあまり好きではないのだけれど、出来としては悪くない。
余韻を遺して終演。

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年初からの石川野乃花は、絵に描いたような、そして貪欲な「わらしべ長者」であった。
少ないチャンスをものにしたら、得たものを最大限に利用して次のチャンスに繋げ、そしてそのチャンスに持てるものをつぎ込んで、更に大きな実りを得て来た。
明らかにオーバーワークであり、疲れの色が見えることも無くはないが、目の輝きは寧ろ増している。

嘗てアイドルは、まだ何者にも成り得ていない、半人前の存在でとして認識されていた。
然るに今、石川が体現しているのは「何者にも成り得る者」である。
アイドルの枠を超えるのではなく、切り拓いた地平をアイドルのものとして、その枠を拡げている。

(2019.11.13 記)

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