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石川野乃花 写真展「好きだ」(演劇「暗室BAR 第2話~プロポーズはしたけれど~」+トークショー)

会期中に3回あるトークショー(+芝居)のうち、11月2日分のみ予約が取れたので、足を運んでみた。

「暗室バー」を訪れる客の悩みを、身振り手振りのみで言葉は発しないマスター(山口勝弘)と、マスターの分までよく喋るウェイトレス的な何かの石川が解決するストーリー。

プロポーズをしてみたものの、色よい返事を貰えずに落ち込む客(森下史也)の持ち込んだプリントが発端。
謎は写真の中にあり、プリントしていない齣に答えが隠されている。
それをプリントすることで、欠けていたピースが埋まり、謎が解ける流れ。

「何故か言葉を発しない」と言う設定にすることで、中年男性の台詞を無くし、その心象を石川が自分の言葉で表す。
石川の口からは「マスターの心象」「石川の台詞」「石川の心象が現れたボヤキ」が発せられる。
山口勝弘の身振り手振りでの演技力によって幻惑されて、不自然さは感じさせない。
ウマイことを考えたものである。

石川野乃花に欠けているものが有るとすればそれは「語彙力」なのだけれど、言文一致体の極みと言うか、物語が自分の言葉のみで綴られており、嘘がない。

物語はエッシャーの騙し絵のように、もっともらしく辻褄があっているような気がすれば、完全犯罪のトリックでも仕込まない限り、醒めてしまうような綻びさえなければそれで良い。
幸せが仄めかされて終わる結末で、後味も悪くない。

トークショーは本日客演の森下史也、wallopの専属?カメラマンのまちだ氏を交えて、未完成映画予告編大賞に応募した作品の裏話や今後の展開など。

アイドルとしての石川野乃花が見せない人間臭さ、監督の石川花としての側面。
知っている人は知っていたが、公にはなっていなかったので口の端には上りにくかった「日大芸術学部卒」の部分。 同期には負けたくないと言う本音。

アイドルと言う職業は、人に嫌われかねない事は避けなければならないが、映画を撮るとなるとそんな悠長なことは言っていられない。 美意識と現実の落とし所を見つけながら撮らねばならないから、やり取りの中に喜怒哀楽が生で出てくる。

良いものを作る才があれば、多少人格に難があってもスタッフは付いてくる。
話の端々から、監督としての石川の面倒臭さが窺い知れるのに、人としては魅力にあふれているし、アウトプットされてくるものの質も担保されている。

石川の影響でフィルムカメラでの撮影を始めたまちだ・森下の両名に暗室作業の楽しさを力説。

「暗室作業、したこと有る方いますか?」との客席への問いかけの反応は弱かったので、どれだけ伝わったかは分からないが、石川の語る暗室作業の楽しさと喜びは、私にはよく分かるものだった。
「カメラ散歩」とか「フィルム散歩」とか、そんな形容をされる、連れ立って街に撮影に出かけて、そのまま現像に出し、上がりを見ながら写真談義をする愉しみについても、熱く(暑く)語る。
こちらも、一々肯ける。
まちだ・森下の両名は、もう一と息で落ちると思うので、沼に向けて背中を押す活動は続けて欲しい。

写真やカメラが好きと言っても色々あり、「カメラが好きな人」「写真が好きな人」「好きなカメラで写真を撮ることを楽しむ人」等々、分かれる。
映画も、見るのが好きな人と撮るのが好きな人に分かれる。
石川と私は属性が似たようなところにあるので、提示される「楽しさ」には大いに共感できるのだけれど、そこから先には分断された未来しか無い。
(まさか私が出入りしている研究会とか店を紹介するわけにも行かない)

閑話休題、石川野乃花(石川花)は、表現も作り出すものも面白いので、線引きと自律を心がけつつ、今後も可処分所得と余暇の許す範囲で追って行こうと思う。

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(2019.11.02 記)

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