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石川野乃花 写真展「好きだ」

TOKYO IDOL FESTIVAL2019に合わせての企画「アイドル女流写真家No.1決定戦」で優勝した石川野乃花(きゃわふるTORNADO)。
いろいろあった副賞の一つである写真展が、神宮前にあるフジフイルムのアンテナショップ「FUJIFILM WONDER PHOTO SHOP」の二階で始まったので足を運んでみた。

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会場全体が暗室モチーフ。 プリントも貼られるだけでなく、吊るされて干されていたり、バットに張られた液体の中で揺蕩っていたり。
ポジも吊るされて干されていたが、温度管理を厳密にしなければならないE6現像を手元でやる必然性も無い(信用できるラボに出したほうが上がりも確実で早くて安い)ので、このあたりは近松の言う「虚実の皮膜」であろう。
イメージとしての暗室を表現するために、必ずしも本当である必要のない部分。
(濃すぎるポジも吊るされていたので、実際やらかした可能性も無くはない。)

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暗室用品は、新品で買えるものは新品を、貰えるものは貰って、中古でしか手に入らないものは手を尽くして揃えている。
印画紙現像用の竹ピンセットに「石」と書かれている私物感。
展示用のバットに張られているのは水道水なのだけれど、器具に染み付いた定着液の臭いがそこはかとなく漂う。

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引伸機は3台。 ライカ判専用のLPL 3301D、6×7まで焼けるラッキーV70とフジ670MF。
670MFにのみ、引き伸ばしレンズ(ライカ判用フジノン EX 50mm F2.8)が付いていた。
カメラはミノルタフレックスとリコーオートハーフ、ペンタックス67など。
ペンタックス67用のファインダーはアイレベルファインダーとAEファインダーが置かれていた。
人を撮ることも多いなら、スクリーンを方眼マットにしてウェストレベルファインダーで撮るのも良いのではないか。

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自家現像のネガ・ポジ、プリントの質などは手放しで褒められないところもあるが、技術は後からどうにでもなる。
先天的なセンスに左右される部分と、今出来ることを動員して形にする発想力と構成力は平凡ならざるものがあるので、長所を伸ばすための研鑽は続けていただきたい。
拙さを「味」と居直ったり、センスに逃げて技術を軽視したりして伸び悩む例も沢山見てきた。

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写真について熱く(暑く)語る動画も流されていたが、石川の考えるフィルムで撮る写真の良さは「失敗も手元に残ること」。
近代美術館で見たカルティエ=ブレッソン展だったか、展示したプリントの横にコンタクトプリントを置いていたことがあるのだけれど、採用された前後の齣では、結構失敗もしていた。
決定的瞬間のブレッソンですらそうなので、過程と結果の記録と記憶が残るのがフィルムで撮る良さであると言うのは大いに頷ける。

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粗さはあるが、初回としては上々の出来。
写真そのものだけでなく、写真を撮る、そして現像する歓びと愉しみを、視覚と嗅覚(暗室の澱んだ空気)で訴え掛けてくる。
展示空間そのものが作品になっていた。
(2019.10.27 記)

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