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きゃわふるTORNADO 3rd Anniversary ワンマン・ライヴ~ & Resurrection ~

定時に開場し、割とスムーズに入場完了。

O-WESTのオールスタンディング時の収容人員は600人。
これは鮨詰めの状態での話であり、二階は関係者席になっていたのでどれくらい入ったのかは定かでないが、この規模の箱なら「入る・入らない」「埋まる・埋まらない」ではなく、確実に「詰まる」力量、基礎票は付いている。


1月12日に6人時代が終焉を迎え、それから僅か一と月。
時計の針が進むのが思いの外早い。

「Anniversary & Resurrection」
2016年6月に結成、2017年2月11日にステージデビュー。
2020年2月11日は記念日であり、きゃわふるTORNADO復活の日でもある。

「復活」とは、生まれ変わること。
この5人でしかなり得ない、全く別のきゃわふるTORNADOの新たな物語の始まり。

ほぼ定時に開演。
メンバーの決意表明のような動画から、オーバーチュアへ。

一曲目「星空ディスティネーション」、別所佳恋の歌い出しは笑顔で。
直前まで色々有ったが、ひとまず安心。

ふつふつと道地文子

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襟足を外ハネに、側頭部に黒のコサージュ。
醒めた、青い炎。 青く輝く星のほうが、温度は高い。
繊細さに力強さが加わりつつ、乱れない。

弾ける別所佳恋

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前髪を作らない、総髪っぽいポニーテール。
リミッターを外したような激しさ。 危ういくらいに荒々しい。
「psychology」のソロパートでの、杏斉ゆかとの意地の張り合い。

凛とした煽り、神咲くるみ

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いつものダレないツインテール
制御しきらない生々しさのようなものが、歌にもこもりつつある。 美は乱調にある。

情念のみなぎる石川野乃花

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いつもと帽子が違う(トーク帽?)。
よりこってりと、溜める歌唱。 低く入って高く強く抜ける。

ほとばしる杏斉ゆか

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編み込みで顔の周りで暴れないようにしつつ、ウェーブをかけてふわりと。
一線を越えると言うか、多少乱れる領域まで張っても乱れず、今日も確かな歌声。
激しく歌い踊った次の曲に影響を残さぬ、呼吸器と循環器の強さ。
歌いきった後の「どうだ!」と言はんばかりの表情。

そして音響、「スピーカーを鳴らし切る」更にその先へ。

本篇の最後は「HANDS」。 聴かせる激しさ。
これからのきゃわふるTORNADOの方向性を示す曲。
ユニゾンが厚く、ソロパート間の繋ぎでも、声量の相互補完でもなく、夫々の声質や歌い方を活かしつつ、さらなる高みへ向かう矜持。

歌い終えて、頭上から照らされるそれぞれのメンバーカラーのライト。
「これからもきゃわふるTORNADOについてきて下さい。」で〆。

客電が落ちてもスクリーンが降りてくる気配もなく、余韻を噛みしめると言うか、今さっき起こっていたことにたいする驚きと興奮を共有する人々。
ここまでのあまりの激しさへの配慮からか、それとも起こっていた事態を飲み込むのに時間がかかったのか、戸惑いだったのか、長めのインターバルのあとにアルコールが発動。
(ちょっと嫌な「間」だった。)

円陣の声が聞こえ、アンコールの一曲目は「Onion Link」
神咲→道地→別所→杏斉→石川
ソロパートを歌い継ぎ、一人ずつライトに照らし出されている。
そして、客席はオレンジの光の海。

「ALIVE」を歌い終えて、今日の日を迎えるまでの心境の吐露。

「このワンマンで決めないと、きゃわふるTORNADOは終わると思った」
「ここで決めなきゃついてこないんじゃないか」

フォーメーションや振り付けとか歌割りとか、その辺りの変更調整だけでなく、歌や振り付けそのものの質と量。 振り付けのキレ、情緒のある激しさ。
歌声の厚さ、力強さ。
宮瀬しおりが抜けた穴を埋めるのではなく、今の5人が持っている要素を増幅し、換骨奪胎した別の新しいきゃわふるTORNADOが出来上がっていた。

但し、これまでの牧歌的とも言える要素は影を潜めた感はあり、客の側でもこれを受け止めた上で楽しみ方を変質させていく必要はある。


客の女子率は確実に上がっている。
女性客はパーソナルスペースを広めにとる傾向があるようで、下手側に設えられた女性限定エリアは溢れていた。
女性限定エリアはもっと広くて良いし、上手側にも有って良い。

男性がそうであるように「女性」と一と括りには出来ず、楽しみ方は人夫々であるが、女性限定エリア内で観覧しようとする人々の思考と嗜好は、「静かに且つつぶさに見る・聴く」であるように見て取れた。
「オレモレモン」「psychology」など、客との掛け合いのある曲でも、声を出すのは中央部の従来型の客のみ。
ステージ上から促されても、女性限定エリアは静か。
もみくちゃになりそうな場所からは心理的にも距離をとっている印象。

神々しいまでに変質したきゃわふるTORNADOがキリストを超えたかどうかはさて置き、宗教的とも言える興奮が渦巻く場内で気になったのは「温度差」。

私は女性限定エリアの後方から見ていた(飛び跳ねないので見やすい)のだけれど、中央付近の従来客との「信仰のかたちの違い」のような物が可視化されていた。
スーフィズムに於ける神との一体化を求めた回旋舞踊や、念仏の喜びを体現した「踊り念仏」のような、対象と同化する類の盛り上がりを魅せる中央部。

女性限定エリア、対象の色に設定して灯された光る棒は、時折振られることはあるが、ほとんど動くことはない。
そこにあるのは「祈り」である。
高山彦九郎式の「かたじけなさに涙こぼるる」的な、静かな祈り。

アンコールの「虹のむこう」。 上から風船やら星やらが降ってくる。
降ってきた風船は落ちてくるたびに弾かれて舞い上がる参加型の演出の一つだと思った居たのだけれど、女性限定エリアに落ちてきたものは、地面に落ちてそのまま。
拾って中央部に向けて弾き出すと、落ちてくるたびにまた弾かれて宙を舞い続ける。

見つめていたい人々にとっての風船は、そう言う演出であることを知らないのかも知れないし、演出かどうかではなく、集中を妨げるノイズでしか無いのかもしれない。

女性限定エリアの人々も、従来型の楽しみ方をする人々も、どちらも満足させることを目指すのか、どちらかに軸足を置いていくのか、どう共存させるのか。
送り手の舵取りに注視して行きたい。


セットリスト

星空ディスティネーション
マニュアルな恋
トビキリナミダ
I LOVE YOU. Summer Day
<MC>
撮可のうた 〜SEASON 2〜 
SUPERHERO
チャンドゥ・チャンドゥ
オレモレモン
<MC>
これまでここから
NEVER ENDING STORY
psychology
Silent Voice
GAME
<MC>
HANDS
<アンコール>
Onion Link
ALIVE
<MC>
虹のむこう
きゃわ騒ぎのやつ

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(2020.02.12 記)

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