きゃわふるTORNADO ONE MAN LIVE T-03 TOUR 〜夏のきゃわ騒ぎ・東京編〜(30.8.11 )
開場時間に新宿RENYへ。
丸ノ内線の西新宿駅から地下通路で直結しているので、降り出した雨にも濡れずに辿り着く事が出来るのは有難い。
ほぼ定時に開場。 メンバーの親族や招待客のアイドルに、それと分かっていても群がらない。 これもこの現場の居心地の良さに繋がっている。
チケットの売れ行きは、正直なところ思わしくはなかったように感じられる。
メンバーも触れていた通りソールドアウトとまでは行かなかったが、「ソールドアウト商法」的な誤魔化し(見られる区画を狭くする)などはせずとも、じわじわと客が入り続けて開演する頃には一階フロアはほぼ埋まった。
客の出足が遅いのは、定期ライブでもそうなのだけれど、今の所「入れない」気遣いは無く、後ろの方に居た方が自由に動ける空間を量的に確保しやすいので、開演前にさえ入っておけば不都合はないからであろうと思われる。
別の現場から廻そうとすれば猶の事だし、暑い中待つ必要もない。
開演五分前、録音されたものと思しき「観覧するに当たってのお願い」が放送される。
当局からの指導が入ったとのことで、観覧マナーについて、また建物の構造上の問題でジャンプは禁止。
跳ばない迄も、床にかかる荷重を可変させるような動きを集団でするだけでも盛大に揺れる(建物そのものが揺れるのではなく、床がうねる感じ。)ので、これは仕方がない。
BGMの音量が上がり、客電が落ちて幕が上がる。
ステージ後方のスクリーンにスロットマシーン的な映像が流され、絵柄が揃ったところでオーバーチュア。
先ず、宮瀬しおりが泣いていないかどうか観察。 笑顔を確認してから全体を見る。
喉を傷めて(精神的なものもあったのだと思う)歌えないどころか声も出せない時期もあった杏斉ゆか。 ほぼ本復したようで安心した。
歌える喜びに満ちていて瑞々しく、張りがある。
この時点で良いライブになる事を確信。
始まるまでのもやもやは消えた。
初期からの楽曲で顕著だったが、精度と表現力は上がっており、広いステージもきっちり使いこなしている。
ただ、上下方向の目配りはもっと有って良いかもしれない。
ユニットコーナーへ入る前の予告映像的なものでプロデューサーに扮する宮瀬しおり。
臭い上にも臭い茶番なのだけれど、その臭さに照れずに遣り切っているのが良い。
その宮瀬しおりがプロデュースした(事になっている)男装ユニット「モエシャンルージュ」は別所佳恋と杏斉ゆか。
「モエシャン」が Moët & Chandon の事だとすると、シャンパンに白とロゼは有っても赤はないので「ルージュ」は存在し得ない。
架空の存在としての命名なのかもしれないし、茶番VTRの中で「何故赤にしたの!!」とブチ切れて担当スタッフに当たり散らす場面とも符合するが、語感だけでテキトーに決めたのかもしれない。
杏斉もサマになっていたが、Narzissmus に徹する別所のハマりっぷりに驚く。
後半は石川、神咲、道地の胡散臭いヒップホップユニット SRC。
柄ではないことに楽しげな神咲、ひたすらインチキ臭い道地、客を煽りに煽る石川。
どちらのユニットも照れに逃げずに役割を演じ切るからこその楽しさ。
着替えの間に今後の展開についての告知映像。
息を整えたり着替えたりする為の間繋ぎなのであるが、動画担当のスタッフの腕が良く、見る者を飽きさせない。
切れ目切れ目で時計を見ると、大体タイムテーブル通りに進んでいるのが見て取れる。
この辺りは企画の練り方とリハーサルをやる意味を知っているからだと思う。
告知の内容は
・新曲「トビキリナミダ」のPV完成
・GYAOで先行配信、その後youtubeの「きゃわふるチャンネル」にて公開
・spotifyで世界に配信
・TFMでのパワープレイ決定
・来年2/11の周年ワンマンはO-WEST
etc...
弱者の戦略を徹底し、「人的資源」「資金」「時間」etc...限られたリソースを重要な部分に集中しており、今出来る施策として的確。
spotifyでの配信やTFMでのパワープレイからは、「広く知らしめる」にはどうすれば良いか考えた上で、合目的的に営業を掛けていることが見て取れる。
(これも「実績」としてのちのち使える)
上手く行くことばかりではないが、起用してもらう為の既成事実の積み上げの材料にはなる。
責任を取るのではなく「取らされる」日本の組織に於いては、決めて貰う為に「材料」「事実」「実績」が必要であり、それを積み上げている。
客は勝手に頑張る(意気に感じる)が、頑張るように使嗾はせず、安易に客の財布に寄り掛からない。
一定規模までは「訳知りのアイドルファンの口コミ」でやっていけるが、それ以上の「規模の経済」を求めないと大きく売れることは望めないし、その為には不特定多数の耳目に触れる機会を作り増やさなければならない。
その為の手を打ってきていて、結果が出たり出なかったりはしているが、その時々では最適解に近いと私は思う。
wallopの良いところは「正業に就いた経験」のあるスタッフの質だと思う。
現場で油を売っているスタッフがいないし、血相変えて駆け回るものもいない。
きちんと準備をして現場に臨んでいるし、イレギュラーな事態にも落ち着いて対応できている。
だから客に親しまれても舐められていない。
後半は新衣装。
ダボッとした白いパーカー的なものに蛍光色でロゴが入った新衣装。
初めて見た時はもっさりして冴えないデザインのように感じられたが、照明が強くきっちり当たるステージでは蛍光色が様々な方向からの光を吸収し反応して輝く。
なかなか良い。
「激しく踊る曲」「強く歌い上げる曲」「楽しく盛り上がる曲」「しっとりと聴かせる曲」と。
ライブでの盛り上がりのみに舵を切らず、緩急強弱多彩な楽曲を持っているのも、グループとしての強みだと思う。
どんな場に呼ばれても対応出来る。
最後は「星空ディスティネーション」で〆
別所佳恋の歌い出しが儚げな裏声ではなく、パンッと張りのある歌声になっていて驚く。
「成長」「進歩」より「進化」と呼ぶに相応しい驚き。
個々が激しく変化しているのに、全体としての一体感は寧ろ増しているのだから恐れ入る。
挨拶をして捌けて、一と息ついたところでアンコールが掛かる。
或る程度やらせてからうっすら点いていた客電を落としてスクリーンに映像。
客のやる気を活かしつつダレ場を作らず、転換の時間もしっかり取る。
間合いの取り方がプロの仕事。
アンコールは丈の長いTシャツなのだけれど、宮瀬しおりのみ、腰で結んで下はスカート。
これはズルい。 「ズル可愛い」という危険な新ジャンル。
明るく楽しく始まったものの、ワンマンライブに当たっての所感をそれぞれが述べると空気が変わる。
喉を傷めて歌うのが怖くなったとか、学業との両立に悩んだとか、グループが終わってしまうかもしれないと思ったとか、リーダーにはなったが出来ることより出来ないことの方が多いことに直面したとか、発する言葉が一様に重い。
お為ごかしの励ましや混ぜっ返すような茶々を入れる者はなく、耳を傾ける。
それまではメンバーのMCでもお構いなしに仲間内の駄話に興じていた暴れたい盛りの若者ですら、聞き入っていた。
余談を敢えて挟むが、関係者席や招待席は二階にあり、客席後方の圧縮が生じにくい場所でもメンバーの家族親族が観ている。
無作法な振る舞いの一部始終はステージの上のメンバーやスタッフからも、招待された家族親族やアイドルからも見られてしまっているのである。
特典会で幾ら積もうが、お金は免罪符にはなってくれない。
閑話休題。
この仕事の99.9%は辛いことだらけで、楽しいことは0.1%しかない。
「でも、その0.1%が素晴らしいんだよ」と教えられたと神咲。
素晴らしいアイドルは数多居て「憧れてはいるけれど、なりたい訳ではない。」
出来ることと出来ないことを自省しつつ、それを踏まえて自分を肯定し、前に進もうとしている。
成長を促す為に、なかなかどうして厳しい負荷を掛けられていると思うが、その分のケアもしっかりしている。
何もかも上手く行くわけではないし、上手く行かないことの方が多い。
その「上手く行かなかったこと」を糧に出来ている。
この送り手なら娘を安心して預けられると親御さんから信頼されるのも頷ける。
未来への希望を感じさせる「虹の向こう」で終演。
この先のきゃわふるTORNADOへの期待が膨らむ、良いライブだった。
(※写真はアンコールの撮影可能曲「撮可のうた~Season 1~」の時のものです)
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