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石川野乃花生誕祭2021

社会情勢やら何やらかにやら、諸事多端の折と言うこともあり、「きゃわふるTORNADO」としてではなく、石川野乃花単体での生誕祭。

ゲストとして、notallから「世界の」片瀬成美。
二人とも和装。

片瀬成美の召し物も着付けも石川が担当。
樺色が近いだろうか、赤みのある橙色の地に七宝と青海波、秋の草花をあしらった江戸褄。
帯は黒地に紗綾形と亀甲。 亀甲の中に牡丹。
帯留めは金具にハート形のパールがあしらわれ、帯揚げの代わりにレースを。
そして半襦袢の袖もレース。 この辺りは当世風に「若さ」を入れて。
落ち着いた雰囲気の片瀬に、良く似合っていた。

石川は麻の葉と七宝、四季の草花etc...、お目出たい文様が盛り込まれて四季に着られる振袖。
柄と色から見て関西の友禅ではなかろうか。
下は練色と言うか、温かみのある明るい灰色の袴。
頭には白で花とレースのあしらわれたカクテルハット。
足元は皮のブーツで女学生っぽく。

この辺りの和装の組み立てのセンス。
基本を押さえつつ新機軸も盛り込んで程の良い当世感のあるレトロモダン。
石川が「何でもできる」「何でも持っている」と言われる所以であるが、その為の下準備がまた凄い。

片瀬の口から発せられる
「二人とも和装です。」「のの(※石川)が着物も準備して着付けもしてくれました。」
の陰に在るものを想像して戦慄。

2月末からワロップ放送局で始まる石川単独のラジオ番組の公開収録からスタート。
喫茶店の特別室と言う体で話が進む。
内容については番組を聴いてのお楽しみ。

一つだけ書いてしまうと、印象に残ったのは「『かわいい』と『きれい」どちらが嬉しいか」との問いに対する片瀬成美の答え。
暫し悩んだ後、「どちらも嬉しいけれど、もっと嬉しいのが『好き』。」「女の子のファンはよく言ってくれるが、男性からはあまり無い。」。
「かわいい」や「きれい」は相手の状態を形容するものであり、「好き」はこちらの心情の吐露なので、言葉としての重みが違う。
思いをぶつけると言うことは、それで相手を縛ると言うことにも成りかねない訳で、軽々には発せられない。
それだけに「嬉しい」のかもしれないが、自分を社会の中でどう位置付けているかによって発する側の感じる重みは変わるのではないか。

話が奇想天外な方向に面白く転がりつつ、破綻はしない。
片瀬を最初のゲストに選んだ石川の慧眼。

収録が終わり、ゲストの片瀬と歌。
「Youtubeの『ファーストテイク』風に」と、スタンドマイクと譜面台を向かい合わせに立て、目で呼吸を計りながら「ないものねだり」。
高音の伸びが美しい片瀬の声を生かしつつ、石川の力強い歌声を合わせる。
石川もグループ内での役割を離れての歌なので、高い部分を綺麗に裏に逃げたり、いつもと違う一面を見せていた。

出番が終わって片瀬が上手からはけていくと、暗転してバースデーソング。
上手からはけた片瀬が、上手から石川の使っているカメラ(赤のライカゾフォート)を模したケーキを持って登場。
更には神咲くるみがアルバムと花束を。

例年は客からの手渡しの儀式もある貢物も、様々な制約から今年は神咲の手を通して。

一連の儀式が済み、自作朗読劇。
「卒業」「父」がテーマ。
音効は入るが、一人語りで物語が綴られる。
郷里を離れる際に託された、芭蕉の句が記された父の手紙を、折々に読み返し、涙し、教えられ、強くなる。
脚色は入りつつ、自伝的な色合いの濃いもの。

その流れから最後の曲、「白い泥」。
情念をぶつけるようなこってり感のあるいつもの(グループ内での役割と言うものもある)歌い方ではなく、高い音も張らずに裏に逃げてさらりと。
こともなげに開けた新たな引き出しには、試行錯誤がぎっしり詰まっているが、涼しい顔してそれを悟らせない。

石川の、石川による、実に石川らしい生誕祭だった。

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(2021.01.31 記)

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