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TIF×フジフイルム 「アイドル女流写真家No.1決定戦」優勝決定ステージ

「アイドル女流写真家No.1決定戦」の予選を勝ち上がった5人による決勝戦。
フジフイルムの協賛で提供された写ルンですを使用した、イコールコンディション。
決勝のお題は「夏〜SUMMER〜」。
それぞれの切り取った夏。

「わたしの夏休み」アンナ(純情のアフィリア)

普段はディズニーのパレードや、メンバーのオフショットなどを撮っているとのこと。
作品は夏フェスに出演した帰りの新幹線での一と齣。
蓋を剥がさず、真ん中に大穴を開けたじゃがりこ。 封が斜めに切られたイカくん。 例のスジャータのものと思しきアイスクリーム。
良く言えばおおらかな「セルフおつかれさま会」。
「今、この瞬間を写す」のが好きだと話していたが、その日その時のその場所でしか撮れない種類の写真。
新即物主義から魔術的リアリスムが生まれたことを考えると、純情のアフィリアの設定とも通ずる所はある。

「16.4 ~あの夏この夏、おなじ夏~」石川野乃花(きゃわふるTORNADO)

手前から「横たわる千羽鶴」「砂の城」「浴衣で花火に興ずる女子3人のシルエット」「海と夕焼け」。
写ルンですで日中シンクロを使う荒業で、近景から遠景まで重層的に。
16.4と言う数字は、我が国の人口に占める太平洋戦争の経験者の割合。
海辺での花火など、夏は楽しい思い出を刻む季節でありつつ、戦争の記憶を呼び起こす季節でもある。
そして苦い「あの夏」と甘い「この夏」は同じ「夏」であると言う、「あー、映える画ですね」と上っ面だけ見ていると、奥から重いテーマが顔を出す。 相変わらず食えない。
映画も撮る石川らしい、物語を詰め込んだ、「その前」と「つづき」か見たくなる一枚。

「はじめての味」江嶋綾恵梨(26時のマスカレイド)

普段はPEN-F(もちろんデジタルの)にアダプターを介してオールドレンズを付けて撮っているとのこと。
「写ルンですのレンズがf=10.0なので、自分のカメラをF=10.0にしてテスト撮影をした。」
と語っていたが、現行の写ルンですは f=32mm F=10 なので、ライカ判に比して焦点距離が倍換算になってしまうマイクロフォーサーズのPEN-Fの場合、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8を使うか、オールドレンズだとホロゴン・ウルトラワイドあたりを使わないと画角が合わないし、おそらく長めのレンズを使っていると思われるので、テストとしてはあまり意味がなかったと思う。
趣味としては面白いところを掘っているが、先達にはあまり恵まれていない印象。

作品はラムネの瓶を持たせた手と、鼻から下の顔を切り取ったカット。
ラムネの瓶の青と、口紅の赤が鮮烈で、構図も面白い・・・のだけれど、惜しむらくは寄りすぎて最短撮影距離を大きく割り込み、ピントが合っていない。
センスに技術と知識が追いつくと、意図を活かした写真になる。

「ぼくの隣、きみが晴らす」大場花菜(=LOVE)

自分のカメラは持っておらず、普段はもっぱらスマートフォンとのことだったが、構図を切るセンスはある。
お台場の砂浜で、自グループのメンバーに傘を持たせて撮ったカット。
水平線と傘の線、波打ち際の線が画面を横に三分割。 傘の柄と背中の線が縦に二分割。
等しく分割されていないのがまた良い。
撮影意図について、言葉足らずながら熱く語るのだけれど、その早口ぶりからも青春の甘苦さが伝わってくる。
江嶋も大場も「男性目線」で撮っていると語っていたが、それは「女性が解釈した男性目線」であり、男性目線そのものではないのだけれど、男性には持ち得ない視点であり、これはこれで面白い。

自分のグループの話になり、撮影可のイベントが多いので撮る客が多いという話に。
それを受けての吉田尚記の発した「(TIFも)撮れるから楽しいでしょう。」的な不用意な一と言により、「スマホ撮可で楽しい訳ゃねぇだろ。」的に、みるみる実る「怒りの葡萄」。

「またいこうね」宮丸くるみ(Lily of the valley)

オフショットや特典会の売り物などで、グループとして写ルンですを大量消費していると言う Lily of the valley 、この「大量消費」が効いており、写ルンですの画角が宮丸くるみの身体に染み付いている。
なので呼吸するようにシャッターを切っても、カメラが身体機能の一部になっているから「写真」になる。
アンナと同じく、生活の中にカメラがある強み。
作品は、自転車の荷台に付けた子供用シートで眠ってしまった弟を撮ったカット。
家族でプールに行った帰り。 楽しすぎた興奮からゴーグルを付けたままだった弟が、そのまま眠りこけてしまった様子を撮っているのだけれど、ざっくり撮ってきっちり決まった構図。
一見すると技巧は見えないのだけれど、意識していないだけでアウトプットとしては高度。
私はノイエ・ザッハリッヒカイトの落穂拾いのような写真を撮っているので、宮丸の写真に心惹かれる。


それぞれの作品についての説明とやり取りが終わり、審査員は別室に。


優勝は石川野乃花(きゃわふるTORNADO)
スポーツチャンバラの大会に剣術遣いが紛れ込んでしまったような頭抜け方だった。
商品として得た、音も録れる新型のチェキは、ランダムチェキなどに活用しているらしい。
副賞として原宿にあるFUJIFILM WONDER PHOTO SHOPでの個展、撮り下ろしフォトブックの販売権、ウェブマガジンへの出演権。

選には漏れたが素晴らしかったのは宮丸くるみ(Lily of the valley)の「またいこうね」。
フジフイルムは、この人にも何らかの特典と機会を与えたほうが良い。
フィルムを活かしきったのが石川だとすると、カメラを活かしきったのは宮丸。
カメラと(現像代と)発表の機会を与えれば、写ルンですで出来ることを、フジフイルムとして提案したい「写ルンですのある暮らし」を、分かりやすく伝える写真を撮ってくれると思う。

構成に重きを置いた石川(と江嶋と大場)、心象を表そうとした宮丸(とアンナ)。
石川が映画で培った構成力でねじ伏せた感じ。
写真は様々な撮り方があり、様々に面白い。
(2019.8.3 記)

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