Sato Konno photo exhibition 「reminiscence」
銀座界隈でも最古のビルであると思われる、奥野ビル5階にあるギャラリーへ。
古いビルの狭さと天井の低さが、ギャラリーに茶室のような凝縮感として働いており、大きなプリントを見るには向かないが、小品を近い距離で愛でるには良い。
ギャラリーは2室に分かれており、入ってすぐの部屋には古典技法のソルトプリント、奥の部屋にはゼラチンシルバープリント。
震災復興建築の流れをくむ昭和初期の建物の雰囲気や調度にも合っていた。
ソルトプリントの写真は淡い薄茶色、コントラストも低めで朧気な景色。
凝視するより眺めていたい。 見るともなく其処に在ることが意識されるだけで幸せな気分になれる。
奥の部屋は黒の締まったプリント。
同じ人撮った写真なのだけれど、ウジェーヌ・アジェ本人のプリントとベレニス・アボットが焼いたものの様な表現の隔たり。
ピントを合わせずに撮ったカットも散見されたが、ソルトプリントのものが「朧気ながら写っているものだけで構成された写真」であるのに対し、「レンズが捉えた空間に存在する写っていないものまで含めた凡てが閉じ込められた写真」のよう。
心をざわつかせる。
ピントを合わせることで捉えられるものが具象だとすると、抽象はピントを合わせないことで捉えることが出来るのかも知れない。
私の好みは心穏やかに見られる、ソルトプリントの「おむすびころりん」的世界だが、黒の締まったプリントから漂う「漠然とした不安」とか「ただならぬ気配」も悪くない。
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