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SFショート

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黄瀬が書いた、空想科学のショートストーリー
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#読書感想文

車窓と海

 この列車の終着駅、ジュール・ヴェルヌ・ステーションが刻々と近づいている。  寝台列車ノーチラス号と謳う割には、その形状は在来の車両群と、さして変わらない見た目をしている。  氷海を切り裂く金属製のツノも、船長室、もとい車掌室に特注の巨大な円形ガラス窓は取り付けられていない。  反面、わたしにあてがわれた小さな部屋には、水槽を見物するための、簡素な、すきとおった円形ガラス窓がしつらえてある。  莫大な水槽の中を覗けば、海底にそびえたつ高山の山腹が眼前に見えた。  う