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SFショート

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黄瀬が書いた、空想科学のショートストーリー
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2022年8月の記事一覧

秘事

 きみと笑い合う時間。  日没前30分。  眼下の入江には、もう深い影が落ちていて、  波はよく見えない。  風を浴びて高台のコンクリ壁に座るわたしたちの背に、  暖かい夕陽がさしている。  きみの制服のスカートがぱたぱた鳴いて、  セーラーが風を孕んでいる。 †  夏の夕暮れである。  ふたりは図書クラブに在籍している。  風通しが悪く、かび臭い図書室でやっているクラブが終わると、  すぐに抜け出してこのコンクリ壁に来る。  コンクリ壁は、  小