考察 麻薬防止の観点から何故人形の製造が禁止されないのか

本編冒頭、秘密クラブ「アーク」での一幕。
一匙の人形の血肉に群がり我先にと飲みたがる観客たち。
邏卒隊の発言によれば人形の肉体はドラッグ同然らしい。
だとすると一つ疑問がわく。
人形の肉体がドラッグ同然と言うなら人形製造は麻薬製造と同義だ。
「製造証明書」は存在するようだが、それは人形所持についての管理の為の物のように見受けられる。
麻薬防止の観点から見れば管理ではなく禁止がふさわしい。
何故人形製造は禁止されないのか。

最も単純に考えるならこの世界は麻薬合法の世界なのではないか。
いや、流石にそんな世界は廃退的過ぎる。ソドムの町か。
そんな世界の住人はもれなくモヒカンで肩パットをしていなければおかしい。
何より邏卒隊にラリッた観客を見つけられたギンバイカは狼狽していた。
やはりこの世界でも麻薬はご法度の様だ。ちょっとホッとした。
麻薬!駄目!絶対!!

逆に考えてみる。禁止しないのではなく出来ない可能性だ。
つまり禁止したくても禁止すべき根拠が見つからない。
どれほど調べても人形の体からは麻薬性物質が一切検出されないのだ。
しかしこの場合当然矛盾が生じる。
麻薬性物質がないのなら何故人形の血肉を摂取するとラリってしまうのか。

ここでマリの発言を引用してみる。
「私たちはこの世の生き物じゃないから相手にも同じ世界に来て貰わなくちゃ」
これはマリが人間を殺した動機だがこの発言から人形はあの世の住人と思われる。
ヤエコもアネモネに出自を問われ「あの世から」と答えているし物語の終盤でははっきりとその事が描かれている。
何しろタイトルからして「冥婚ゲシュタルト」なのだから言わずもがなだ。
であるなら人形の体はこの世で作られたにも拘らず「あの世=黄泉の世界」に属するモノとなる。
百眼好きの方々なら既にピンと来たかもしれない。
これは「黄泉戸喫(よもつへぐい)」だ。
黄泉の国の食べ物を食べると言う事は黄泉の国に属する行為だ。
そして人間の脳は死の瞬間βエンドルフィンやドーパミンを大量に分泌するという。
つまり人形の血肉を食べた者の魂は黄泉の国に引かれてしまい死を認識した脳が大量の脳内伝達物質を分泌する。
要するに自家中毒なのだから人形の体から麻薬性物質が検出されないのは当然だ。
人形はあの世の住人たる自覚があるようだが人間にはそれが理解できない。
なので麻薬性物質に拘るあまりそれを発見できず禁止もできない体たらくと言う訳だ。

如何でしょうか。
あくまで一観客の個人的な考察だが本編との大きな齟齬もなく「冥婚ゲシュタルト」のイメージに似合いの解釈が出来たのではないかとちょっとだけ胸を張ってみる。

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