The Rainmaker
子供の頃、運動会前日のお話。
学校からの帰り道、憂鬱な気持ちで雨が降ればいいのにと呟いた。
「お困りですか?」
顔を上げると目の前にはにこやかな表情の紳士が立っている。
「雨、降らせましょうか?」
笑顔の紳士、笑顔のままで聞いてくる。
「雨、降らせる事が出来るのですか?」
「出来ますよ。私、雨の瓶を持っていますから。」
そう言いながら紳士は懐から小さな瓶を取り出した。
瓶の中には勿忘草色のポチャポチャした液体が入っている。
「それが雨の瓶?」
「ええ、これが雨の瓶です。」
笑顔の紳士、ギュボンと瓶の蓋を開け中の液体を地面に一滴垂らす。
すると地面から冷たい風がそよぎ立ち、空に昇って雲を呼び、雨がサラサラと降り出した。
暫くすると雨は止み、空は晴天を取り戻す。
「雨、降りましたでしょ?」
「雨、降りましたね。」
空を見上げながら答えると、紳士は満足そうに一礼しスタスタと行ってしまった。
雨が降って欲しいのは明日なのに。
あーあ、明日雨が降ればいいのにと呟いて、家に帰って仮病の練習をする事にした。
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