1. ビリケンうちわ

初めて丈くんにファンレターを書こう、と決めたのは2016年8月。担当と呼ぶことにしたin大阪の収録後の後の夏松竹のときだった。その頃の私はファンレターなんて書いたことがなかったから、たくさん悩んだことを覚えている。

丈くんにファンレターを書くにあたって、これからたくさん書くだろうから自分にとっての記号を決めようと思った。きっと名前なんて覚えてもらえない。だからこそ、せめて何かシンボルを作りたかった。

まずはどうやったら捨てられないかということを考えていた。読んでくれなくてもいい。最悪、捨てないで欲しい。これはまず「手紙 捨て難い」などで検索したところ、「鶴や亀など、縁起が良さそうなシンボルのものは捨て難い」というコメントを見た。なるほど、一理ある。では…と考えた時に真っ先に頭に浮かんだのはビリケンさんだった。大阪の幸福の象徴ならこれじゃないだろうか。そして、丈くんを応援するために初めて作ったうちわの写真を合成した。これが私のシンボル、ビリケンうちわのはじまりである。

まずは、丈くんの好きなタイプを検索。(これ、今になるとびっくりするけれど、当時の私は結構丈くんのことが好きだったのだ。いや、今も好きは好きなんだけど、いわゆるリアコ?ガチコ?的な好きさはなくなってしまった。これはいつか、別の記事で触れる予定。)好きなタイプは「決断力のある子」ということで、次に「決断力がある 文字」と検索する。いわゆる文字の書き方の性格診断を逆手に取るアプローチである。その時、決断力のある人はまっすぐな線を太くしっかり、グッと書ききるという情報を得た。次に、小中学時代のジャポニカ学習帳漢字学習を引っ張り出してきた。そしてひたすら書いた。藤藤藤藤…原原原原…丈丈丈丈……一一一一………郎郎郎郎………曲線はまだいい。例えば、原の小の部分の縦棒や、なんといっても「一」…どちらかというと優柔不断な私にはかなり難しかった。二時間ほど練習を続けた。

そして銀座の伊東屋にいき、紙を購入した。封筒にも便箋もオリジナルにしようとおもっていた。丈くんが過去に松竹座で「東急ハンズとかいって全部ここからここまでもらったことある!」と言っていたのが癪だったからだ。こっちはゼロから作るからな、と思っていた。パソコンで便箋をデザインし、右下にシンボルのうちわを持ったビリケンを入れて、家のプリンターに紙をセットして印刷した。設定を変え、同じように封筒を印刷した。初めてプリンターの設定を変え、ちゃんと出来た時、作品だ!と思ったのを覚えている。

はじめは震える手で書いていたファンレター。名前だって「丈くん」何て呼べなくて、「丈一郎さん」と書いていた。全て敬語で、絶対に傷つけないぞ、ともう親戚の手紙?というぐらい当たり障りのない内容を書いていた。でもそのうち、松竹座に入る回数が増えるたびに慣れてきた。「丈くん」と書けるようになったし、感情を素直に書けるようになった。目標をあげてくれてありがとう、だったりその日の感想。アドリブネタのアドバイス。今どんな状況で書いている、なんていう他愛もない話。そんなことも書いたし、反対に重い感情も綴った。「丈くんも好きに生きてくださいね」と書いた次の日には「昨日は好きに生きてって書いたけれど、やっぱりアイドルを続けてほしい。きっとそんなわがままを書いていいのは、私たちファンだけだと思うから」と書いた。本音だった。悔しい時には悔しいとかいた。丈くん、どう思いますか、と書いた。読まれているかもわからない手紙を、ボックスに入れ続けた。

そのうち、お手紙が趣味になった。遠征先では必ず文房具屋巡りをするようになった。奇跡を意味する青いバラの便箋、幸せを呼ぶ青い鳥の便箋。野球テーマや、タイヨウのウタの時には太陽のカード。丈くんが好きそうな文房具風のカード。たくさん買い集めた。一つ一つ、書く時を思い浮かべながら買った。そんな風にオリジナル便箋にこだわらなくなってからも、シンボルのビリケンうちわだけはシール用紙に印刷してたくさん貼ってきた。いつも、封筒にビリケンうちわを貼って、吹き出しをつけて一言書く。封を開けなくてもいい、またこの子だ、なんて分かってくれなくてもいい。今日もあなたが手に取る手紙の束が、1mmでも厚くなってほしかった。読む気力なんて起きなくても、「今日この公演に、あなたを見に入った人ですよ」と示したかった。

今でも、なにわのにわに入れる封筒にだって、ビリケンうちわは笑っている。SRもその名前でやっている。「ビリケンうちわ、ふふ、すごい名前やね」君の声をした誰かが笑っている。このワードで、多分君はあのシンボルを思い出さない。私のうちわをコンサートでみたって、多分君の頭の中にあのビリケンのシンボルは浮かばないだろう。そんなこと知っている、知りきっている。でもこれは私の矜持でこだわりなのだ。あなたを応援して、あなたに幸福を運びたいと。

2年前、8.8。ファンレターを書かなくなった。2021年7月、2年ぶりにファンレターを書いた。懐かしいな、と思いながら糊をあけて、青い封筒に、ビリケンうちわを貼る。吹き出しに「CDデビュー決定、本当に心の底からおめでとう!!!!!!!」とかいた。よかった、よかった。

見てくれなくていい、私の書いた手紙の一つでも、内容じゃなくていい、ただ届いたという事実が、もしあなたの力になれていたら本当に嬉しいな。もうデビューしたら手紙を書く機会は減るのかもしれないけど、私は書いている時間が好きだったよ。

#Jr担卒業文集

↑頑張ってデビュー日まで定期的に書いていきたい

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