無色透名祭Ⅱあとがき - 自作品振り返りと10選のネタバレなしレビュー
謝辞、そしてイベント概況
昨年を超える盛り上がり、すばらしい運営
無色透名祭Ⅱ、めちゃくちゃ楽しかったですね。前情報≒先入観なしに音楽を聴いて、それを自由にタイムラインに放流して、大好きな楽曲はあの手この手でレコメンドして――という動きが集団的に行われる、フラットでダイナミックなDigの祭典が閉幕してしまいました。あまりに大盛況だったぶん、幸せな余韻もあとを引きますし、どこかでちょっと寂しさがあります。
開始時はちょっとしたトラブルもあったし、広告の解禁に関する賛否や、公式リスト①〜⑩のうち先頭に位置するリスト①だけが飛び抜けて基礎再生数が高い件に関するツイートなども話題となりましたが、イベント全体でみると、サムネイルの統一やランダム再生ボタンの実装、kiite cafeコラボや公式DJ放送など、全体的により機会の均一化を図りつつ、出会いのチャンスを増やす方向にイベントを設計してくださっていましたし、個人的には不満点はなく、むしろこの貴重な機会を再びデザインしてくださって本当にありがとう……の気持ちです。
昨年に引き続き、主催のちいたなさん、けすまるさん、メドミアさん、及びドワンゴの無色透名祭をご担当された皆さま、ほんとうにありがとうございました!!!
データ、傾向について
データに関しては、今年も例によって #無色透名祭2統計部 の方々が動かれていて、以下ツイートのツリーにイベント開始から終了までの時系列データがまとめられています。ちゃんと読み込むとぜんぶ面白いですが、結果だけ知りたい方はツリーの最下段付近までスクロールしてみてください。
また、イベント概観についても、昨年は「無色透名祭は確率的にノーマークの方がフックアップされやすい構造である」という内容の記事をしたためたのですが、今年はわりと「その人自身がその人っぽい楽曲を投稿している」事例が多かったので、ちょっと毛色が変わってきたかな?とも感じています。
参考までに、去年のまとめ記事を以下に共有します。今回の記事では深掘りしませんが、良きタイミングがあれば、去年と今年の差分についてじっくり考えてみるのも面白いかもしれません。
自作品の振り返り
『季語の空隙』とその概要
今回は『季語の空隙 / Ninezero』という楽曲で参加しました。なんとなく「アルバムの1曲目」みたいなテンションを意識しています。
前回の無色透名祭、および3回のボカコレを経て、シーンの空気も大きく変わっていますし、今回はおそらく前回以上にみんな個性を大爆発させてくるんだろうな……という期待があったので、それに対して「超ヘンなこと」で色を出すか「超まっすぐなこと」で色を出すかで悩み、逆張り精神が働いて、超まっすぐでいくぞ!ウオオ!!となり、今に至ります。
『季語の空隙』については、ちょっとカタめではあるものの、当社比ですごくいい歌詞が書けたつもりでいます。
とはいえ、楽曲ギミック的にはいわゆる「普通のいい曲」枠なので、たとえば直近で発表した楽曲でいうと、VIVIDなリアクションが印象的な『歩行訓練』とslow and steadyに愛されている『旅するアジア』の属性のちがいのように、『季語の空隙』はきっとじわじわ出会ってもらって、ゆっくり愛して頂けるタイプなのかな……と想定していました。(このあたり、ボカコレ巡回リスナーの方々のなかにも「いわゆる"普通のいい曲"って、イベントではagainstだよね」という通念があったりすると思います)
ところが蓋をあけてみれば、期間内3桁再生圏内ではあるものの、ほとんど4桁に近いくらいに発掘して頂けており、歌詞の質感やスネアドラムの音で特定してくださった方もいらっしゃって、なんというか、嬉しい誤算でした。出逢ってくれた皆さま、本当にありがとうございました!とても冥利につきます。
楽曲ジャンルについて
出発点としては「秋っぽいギターフレーズが似合う海外のエモ」と「スリーピース系のメロコア(ポップパンク)」を混ぜた感じの楽曲を意識したんですが、着地としては広義のロック・ポップ・オルタナっぽい感じになっている……ような気がします。
・秋っぽいギターフレーズが似合う海外のエモ
いわゆる日本的なエモというよりは、もっと源流の、90〜00年代洋楽的な「ちょっとキュンとくるギターロック・エモ」を意識しています。リアタイ勢ではないのであまり詳しく語れないのですが、classicなエモコアとかが近いのかも。書いていてエモがゲシュタルト崩壊しそうです。
たとえばSay No MoreのLong Drive Homeのような、哀愁の漂うきれいなアルペジオギターと、ハードコア系統のミュートフレーズと、ドカーンとくるメロディアスなサビ、みたいな。以下がMVなのですが、映像に漂う味のあるダサさも相まって、心にやわらかくグッとくる名曲ですよ!(もちろん狙ってクソダサをやってます)
・スリーピース系のメロコア(ポップパンク)
これはもうシンプルに、昔の10-FEETです。どれくらい昔の10-FEETかというと、以下動画の頃くらい。メロコアはMelodic Hardcoreの略称で、参照した動画でいうと01:24以降のMelodicなボーカルラインとちょっとHardcoreなギターの質感が同居するサウンドが特徴的なジャンルです。WANIMAとかヤバTとかのポップパンクが親戚、みたいな。
キャッチーなサビを繰り返す傾向にあるジャンルなので、いつもは2回し目でメロディを大きく変えるところをあえて同じまま突っ切っていたり、展開的にはいろいろできるけど、スリーピース編成でのライブを意識するとここはミュートで落としたまま引っ張ったほうが"ぽい"な……みたいな、自分のなかのジャンル像やシチュエーションに寄せつつ楽曲を構築していったので、トラック自体はするする決まりました。
そしていざNinezeroの声をトラックにあててみると、あまりに10-FEETのTAKUMAに近い感じがあったので、3度下のコーラスをあてて重みを出して「それっぽい!ウオオ!」などとひとりで盛り上がりながら制作しました。こういう普段と違うアプローチの積み重ねが、無色透名祭におけるちょっとしたマスキング効果になっていたらいいな、と思います。
と言いつつも、すべての要素を意識的に廃せたわけではなく、たとえばメロコアをやるなら第一候補はハムバッカー・ギターの音なのですが、シングルのハーフトーンが好きすぎることと、ハムの音を上手にミックスできないことを理由に、いつも通りすべてシングルコイルで演奏しています。
また、サビのシンセは『VIBES BY VIBES』や『ハローフィクサー』のサビを意識した入れ方を採用していますが、実質的には『彼方のひかり』や『警報のあった日』と同じ差し込み方になっています。
ということで、やっぱり大枠の音作りは変わっていないので、でっかいドラムで、声が前に出て、左右にギターの壁があって、ベースはなんかドライブしている、みたいな部分はけっこういっしょです。全部の音が近めであまり距離感がないのが今後の課題だったりします。がんばるぞ。
ニコニコ動画版は、期間内に頂けたコメントに対してニッコリしているので、昨年同様に個人アカウントからの再投稿はしません。Youtube版については、せっかくなので久しぶりにMVを自作しようかなと思っており、ちょっとだけお時間を頂けると幸いです。制作時間的に厳しくなりそうなら、無色版の動画でそのまま公開します。
その代わりと言うわけではないのですが、『季語の空隙』が各種配信サービスから聴けるようになります。Apple Musicなどの反映が早いサービスはすでに対応済みで、Spotifyなどのちょっとだけリードタイムが必要なサービスは本日中〜明日にかけて配信開始される見込みです。もしよろしければ、たまに読み返してみてくださいね。
ネタバレ前10選の振り返り
いちおうご説明すると、たとえば「ボカコレ夏」や「2023年上半期」など、イベントや年度の区切りを主語にして気に入った楽曲を10曲セレクトする #◯◯ボカロ10選 という文化があります。シェアして他の人との差分をみると楽しいし、他の人の10選からまだ知らない名曲に出会えると嬉しい、みたいなやつです。
今回はなるべくバイアスのない状態で10選を選んで答え合わせがしたかったので、ネタバレの前までにこしらえたいなと意気込み、期間内に聞けた楽曲のなかから、個人的にグッときた10曲をセレクトしました。
その10曲をまとめたものが以下マイリストです。マイリストのコメント機能を使って、ひとことコメントに加えて、制作者さまご本人のニコニコユーザーページにジャンプできるよう追記しています。
Webブラウザならそのまま、アプリからならコメントボックスをタップすることで全文が見える仕様なので、再生していて「オッ」と感じた楽曲があれば、ぜひご本人さまも併せてチェックして頂けると嬉しいです。
とは別に、せっかくのnoteなので、ここではグッときた10曲について、ネタバレにならない程度に「ここ……良いですね……」ポイントをしたためていこうと思います。紹介順は、マイリストの設定同様に、執筆時点の再生数が少ない順となっています。どんどん聴いて、曲順を動かしていきましょう!
1. 水上のバラック / 可不
とにかくサビの歌詞とメロディが良かったです。落ち着いた伴奏のしっとりした楽曲だからこそ歌回しが重要になってくるのですが、譜割りが絶妙で、思わず弾き語りたくなる良さがありました。
歌詞についても素晴らしいです。以下、サビの歌詞なんですが、
あのメロディラインに対して『潸々と白雨がかかっている トタン屋根をうっている』と紡げる方は稀だと思います。本当に素晴らしい。この情景を描きながら、歌っている内容はすこし所在なさげな夜の孤独と不安、そして小さな祈りだったりするわけです。これは……たまりませんね……
シンガーソングライターがカホンと鍵盤でこなすアコースティックなライブのような、コンパクトながらも聴かせる良曲であると思います。素晴らしかったです!
2. 空飛ぶクジラに跨って / 東北きりたん
児童文学を感じさせる物語性の高い歌詞に、劇伴的なインタラクティブさも備えたトラックと、東北きりたんの歌声が見事にマッチした名作だと思います。
時に壮大で、時に破壊的に色を変えるファンタジックな伴奏の軸がジャンル横断性の高いバンドサウンドであることに先ず驚きましたし、物語に沿った展開は常に「そうくるんだ……」の連続で、高い編曲技量を感じました。
また、東北きりたんがメインシンガーであることがすごく効果的に働いているとも思っていて、これはものすごい主観なんですが、たとえばウナちゃんは題材に対してちょっと快活すぎる印象ですし、ずんだもんは多くのパブリック・イメージがつきすぎている印象なので、同じ年齢帯のシンガーにおいて、ダウナーですこし影をもちつつも、しなやかで、芯が強くて、都会っぽくなくて、主人公適正がある東北きりたんであることがベストマッチであるように感じています。
ぼくはこの楽曲をうけて、町を見渡す木造のトンガリ屋根の上でまわるちいさな風車と、古臭い全身羽織りを纏ってそこに立つきりたんと、遠くから迫りくる空飛ぶクジラの幻影が見えました。とても色鮮やかな作品であると思います!
3. 夢を見ていた / カゼヒキ
ネタバレ前生放送の開始を控えた終盤、10選のさいごのピースをそっと差し出してくれた作品です。歌詞とハーモニーの美しさがひかる傑作だと思います。
歌詞とメロディの良い堅実なポップスは、どうしても構造上、より刺激的でより目を引く要素が優位となりやすい拡散ドリブンの大規模イベントにはあまり向かないのかもしれない、と感じることがあります。
ですが、逆説的に、たとえば視聴順などの関係で、変化量の大きい楽曲群のあとに出会ったより純度の高いてらいのないポップスが時に爆発的な破壊力を持つようなケースもあったりして、こういうのって結局は環境依存だし、いまいまのボカロシーンがわりと雑食性の、自由でダイナミックな裾野のひろいものだからこそ、楽しいメタゲームが回っているんだよな、みたいなことを思ったりしました。
すこし回り道をしてしまいました。言いたかったのは、まるで美しい装丁の文庫本みたいな清らかな楽曲が、ちょうど一番効果的なタイミングでぼくに直撃したということなんです。本当に、崩れ落ちるほど良かった。
4. マーチ『フカチナルカチ』 / 初音ミク
歌詞がとにかく素晴らしいです!!そもそもマーチという題材自体が、ちいさな存在がおおきな場所をずんずんと目指すようなコミカルなイメージを纏っているからこそ、題材からしてハマっているのですが、それに対する各モチーフの配置が尋常じゃなく巧いです。
便宜上、「すべてが大きく、大きく映っていたあの頃」を子どもと、「正しさを説く大きな、大きな大きな人たち」を大人とあえて定義するのですが、冒頭で大人に紐づくのが、整った工業文明を想起させる「石ころのないアスファルト」であること、それに対して「もっと知りたいんだから こっそり探検しようよ!」と続くことが、あまりに無駄がなく、とても自然にワクワクさせてくれますよね!探検はこっそりやるものなんです。くぅ〜〜!!ツボをわかっている!
無駄のない整った文明的なモノももちろん悪くはないんですが、いわゆる大人の社会では価値性の薄いとされている、草木や雲のひとつひとつ、もっと言うとわれわれの感情や生き方すべてを含めた大自然、生命そのものって、おっきいなあ!素晴らしいなあ!という、慈愛とユメに満ちた大傑作だと思います。言わずもがな、そのワクワクを彩るトラックも最高です!!
5. 狂人29号 / 知声, ずんだもん
肩を落とした日にもすこしだけ諦めがつくような、ポップでささくれたカントリーの傑作だと思います。
ざらつきと軽快さを両立させるトラックに、より親しみやすさを与える歌詞の筆致とずんだもんの合いの手、チープなようでいて必要十分な音選びなど、全体的に絶妙なバランスで最高の仕上がりになっていると思います。
こういう系統の楽曲って、主人公の立ち位置というか、歌っている内容がどの視点からどう描かれているかのフィット感がそのまま没入感に繋がるんですが、ちょっとハスキーで拙い知声の歌声と、ずんだもんという存在そのものがベストマッチで、楽曲全体に漂う劣等感、不憫さ、どこかうまくいかない生き方が、まっすぐ直撃で心に刺さってきます。本当に知声というシンガーは、不器用な人間味を備えた路線が似合いますね。
人生って大概、ピアニカのソロを間違えて、入り直すタイミングを失って、失敗の念や諦観に囚われながら大きな流れを眺めているようなことの連続だったりするので、はっきり発話できるずんだもんが少しうらやましかったです。だからこそ、最後にシンガロングを用意してくれるのは優しさですね。
ちいさく救われながら生きていくしかない暮らしに、今日たしかに花がひとつ咲きました。なんか、ちょっと大丈夫かもしれないな。
6. ゲルマニウムの夢 / 花隈千冬
トラックは勿論のこと、歌詞のセンスが非常に高いですね。具体的には、言葉選びと表記による世界観構築に長けていると感じました。
ひらがな、カタカナ、漢字、Alphabetの使い分けって、けっこう字面的な印象や意味性を定義すると思っていて、例えばひらがなは「柔らかい」「幼い」「不確かである」「ゆるやか」だとか、カタカナは「カタコト」「強調」「マスキング(もっというと具体的な異物感)」「シャープ」だったり、漢字ならそもそも何を当てるかで含まれた意味を定義するし、そこで利用する漢字の難度や空間支配量によってちょっとカタくなったりやわらかくなったりする……みたいな。ちょっとマニアックですかね?
『ゲルマニウムの夢』は、そのあたりのバランスが本当に絶妙で、たとえば上記を踏まえて「半導体がうたった HeartをHertzにした信号」って歌詞をみると、バシッときまったサイエンス感のなかにも「うたう」の表記にニュアンス的な奥行きが感じられたりしますよね。(なぜなら「うた」は重要なキーワードであるから)
そのうえで、サビの歌詞を見て頂きたいんですが、
どうですか、この幻想的かつ終末感の漂うニュアンス!!!!前半のひらがなパートすべてが、まさに胃袋のなかでまどろんでいるような美しい終焉を感じられるようになっていて、こういった視覚的な土台のうえに、花隈千冬のあたたかくドライな歌声と、無機質かつクリアなトラックが重なると、ヤバいんですよ!本当に素晴らしいです。
7. 大怪獣が歩いてる / 初音ミク
だいたい200曲くらい巡回した頃に出会い、あまりに衝撃を受けすぎてそのまま4回くらい聴いてしまった楽曲です。いい曲すぎて泣きそうになってしまった。
この楽曲も、トップレベルに歌詞がいいです。先ずは2Aメロ〜最初のサビを見てほしい。
ここに描かれているすべての内容が、抽象度を保ったまま具体性のある表現であることが素晴らしいです。たとえば、低い語り声は異常事態であることを伝えますが、それが男性/女性なのか、アナウンサーなのか災害対策大臣なのか、などの特定情報は存在しておらず、だからこそ、物語に大枠で即したあらゆる情景を想起することを邪魔しないんです。全編通して、この塩梅が貫かれているので、具体的な指定がないのに、おのおの視聴者にとって本当に映像的な作品になっています。
サビも素晴らしいですね。ここからわかることは、「水辺が近くにあること」「怪獣は(何足歩行かはさておき)歩行可能であること」「その足が蹴り飛ばした水しぶきは、見上げる場所に虹がかかるくらい高く跳ねたこと」で、つまり、怪獣もけっこうでっかくて、歩けるから街のどこにいても等しく危険なんです。こうした情報を、さらっと自然に余白にのせてくれるから素敵ですね。
この作品は、最後まで歌詞がずっと素晴らしいので、ぜひ本編をご覧ください。非日常が日常になって、でっかい怪獣がきても大きく変化しなかった生活を、それでも変えていきたいね、僕ら変えていかなくちゃね、っていうキュンとくるSF作品を、あなただけの映像表現で堪能できるチャンスですよ!!!
8. ラットと兵隊 / 初音ミク
この楽曲は、歌詞も味があって素敵だったんですが、それ以上にとにかくサウンドですね。楽曲アレンジの技巧がすさまじく、終始引き込まれる作品でした。
いわゆるラウドな系統のミクスチャーとは異なる、たとえば声優さんやVTuberさんのオリジナル楽曲とかでよく見かける現代的なデジタルミクスチャーロックって、とにかくシャープでカッコよくて、重たいけどソリッドなキレがあって、みたいな、根本的な編曲スキルがないと成立の難しいジャンルだと思っています。
『ラットと兵隊』は、編曲的にそれをめちゃめちゃ高次元に成立させており、すごい。歌詞の話はフレーズを引用して「ここが……ここがいいんじゃ……」と文章化するほうがクリアになるんですが、これに関しては音の話なので、率直に言うと聴いてもらったほうが早いです。ぜひ聴いてください。
あともう1点、MVの質感が素晴らしかったです。限られた情報量で、楽曲をこれでもかと言うほど的確に彩っていました。シンプルなフォーマットだからこそ、結果的にトータルコーディネートのセンスが目立ちますね。
9. 2013/11/2投稿 ▶︎897 □38 □25 ❤️70 / GUMI
無色透名祭というフォーマットにおいて、今回これ以上ぴったりな楽曲は存在しないと思います。「特定の誰か」の楽曲になった瞬間に没入感が下がるからこそ、このイベントにぶつけるのは大正解ですし、ちゃんと届いて多くの方にぶっ刺さっていたのは素晴らしいの一言です。
冒頭を贅沢に使って「フリ」にするのって、すごく勇気が必要だと思います。この楽曲であれば、何か音が小さいなと早合点されて、回れ右されてしまう可能性だってあるわけで。そういう意味では、リスナーを信じて託してくださってありがとうございます、ですね。
この楽曲に関しては、内容に関してもあまりネタバレをしない方がいいと思っていて、だからこそこの場で多くを語れないんですが、やっぱりでかいギターは人の感情をちゃんと揺さぶってくれますね。ぼくももっと良いギターを弾こう。良い楽曲をつくろう。大名作だと思います。
10. とうきょうとっきょ / 重音テト
センスに勝てないってこういうことなのかな、と感じます。シニカルでシュールでナンセンスなリリックセンスと、そのワード群を何倍にも魅力的にするメロディセンスの技巧がずば抜けすぎていて、自分にないスキルセットに特大の嫉妬をしてしまいました。
全体的にtweetive(これはキタニタツヤさんの造語で、自分なりに言語化すると「meme的なcontextを1つないし複数含んだ、ナンセンスかつ意味性の高い短文」を指している)な歌詞なんですが、決してそれらが散らかっているわけではなく、ちょっとした劣等感、面倒くささ、すこし不満のある人間関係など、作品を通して中核となる裏テーマに誠実な形で小気味よく繰り出されるので、破綻がないどころかむしろどんどん頭に入ってくるのが最高です。
この軽快な歌詞とバチバチにフィットしているのが、腰高でtoybox的なのに必要以上にチープすぎる印象を与えない絶妙なバランスで構築されたトラックです。ベースとドラムがちゃんと牽引しているし、複数のリード楽器はキャッチーで味があるし、化け物だなって思いました。ぜひ聴いてみてください。個人的には、タワマンの犬がくさいわけではなく、犬という生き物そのものがデフォルトでちょっとケモノくさいのかなと思っています。
おわりに
あらためて楽曲を聴き直しつつ楽しくレビューを書いていたら数時間くらい経ってしまっていました。でもどれもめっちゃいい曲ですからね。最高の出会いに感謝です。
個人的にちょっとおもしろかったのが、今回の10選を通して聴いてみて「クジラ」「怪獣」「探検」みたいなワード自体にすごく弱かったんだなって自認できたことですね。やっぱりロマンのある物語が大好きなんだな……
最後にちょっとした告知なのですが、ボーマス53にて頒布予定のコンピアルバムに自分も参加してます。こまかい詳細は後日あらためてお知らせできるかと思いますが、XFDが公開されているので、ぜひチェックしてみてください。
じぶんはM10『うみべの恐竜』という楽曲で参加しています。あ!!また巨大生物を!!お前!!やっぱりそういうの好きだな!!!!
ということで、無色透名祭Ⅱ、おつかれさまでした!ここまで読んでくださった方、どうもありがとう!!
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