わかめ:BFC千字戦1回戦

 ジェーソンに行きました。年末年始の食べ物を買いにです。
 あ、
 ところでジェーソンというのを知ってる人は少ないかもしれません。ジェーソンというのは多分埼玉県にしかないのです。ディスカウントストアです。いや、正確なところは私も知りません。埼玉に引っ越してきた時、家の近くにジェーソンという得体のしれないお店があって、行ってみたら楽しかったのです。
 そのジェーソンに行きました。
 私はカゴをもって店の中を回遊しました。ちなみにジェーソンで生鮮食品とかそういうものはあまり期待しません。してはいけません。そもそもあまりないです。人によっては全くねえ。という人もいるかもしれません。ジェーソンにそういう事を期待してはいけません。ジェーソンに期待するのはどこから持ってきたのかわからないカップ麺や飲み物。スナック菓子などです。あとお酒とかです。
 彼の地にはもうすぐ賞味期限の切れるような食べ物が、なぜか、どういう経路をたどってくるのかわかりませんが、集まるのです。集まってくるのです。
 ジェーソンではそういうのを見るのです。で、目についたものをカゴに入れていくのです。
 それはとても楽しい事です。甘美な。甘くて美しいかどうかは私にはわかりませんが、でも私にとっては間違いなく甘美なことなのです。
 ぶっちゃけて言うと埼玉に引っ越してきた当初、もし家の近くにジェーソンが無かったら私は孤独に耐えかねて死んでいたかもしれません。
 ジェーソンが救ってくれたのです。
 そんなジェーソンで私はわかめを発見しました。
 わかめ。増えるわかめだと思ってみたら、増えるわかめではありませんでした。
 それは伸びるわかめでした。
 伸びるわかめ。
 何なんだろう伸びるわかめって。
 私はそれを買って、家に帰りました。
 伸びるわかめは増えるわかめと同様に水に入れて戻して食べるもののようでした。
 ボールに水を入れて伸びるわかめを一袋全部入れました。
 私はそのあと、伸びるわかめが戻る、伸びる間に洗濯をしたり、掃除をしたりしました。
 それから、伸びるわかめを見に行きました。
 伸びるわかめはボールからはみ出して伸びていました。時間はもう夕方になっていました。陽が傾きベランダをオレンジ色に染めていました。
 伸びるわかめはボールからはみ出して太陽の、陽の光、ベランダの方向に向かって伸びていました。
 伸びてるなあ。
 私はそう思いました。

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