アーセナル23/24シーズンレビュー



シーズンレビュー

リーグ優勝に2ポイント届かず、2年連続の2位となったが、大きな進化が感じられたシーズン。

昨季は早々にチームを完成させ、メンバーと戦術を固定して戦ったが、相手の対策や主力の怪我、勤続疲労により最終盤息切れしてしまった。

その経験も活かし、今季はアルテタも少しずつメンバーや配置を入れ替え、さらにあえてペースを落とす試合もみせるなど対策を施し、89という過去最高の勝点で走り切った。

どこまでいっても仕方ないことはないのだが、それでも、これでだめなら仕方ないと思ってしまう、本当に素晴らしく勇敢に戦ったシーズンであった。

来季はペップシティのラストイヤーとなる噂もある。壁が世界で最も高いうちにしっかり乗り越えて、このチームにふさわしい称賛を得られるように、来季さらなる積み上げを期待したい。

監督レビュー

アルテタは、改めて偉大な監督であることを示した。
他所のように監督就任1年目でリーグ優勝!CL制覇!みたいな成果は出せていないが、基盤からチームをやり直し、毎シーズン課題をクリアし、確実に積み上げてきている。昨季の課題もしっかり解決するか、一部持ち越し課題としつつも、解決の兆候は見せている。

特に昨季の大きな課題が、人選と配置の固定化。人員整理が一定進み、アルテタの目指すサッカーの基盤ができたこと。また、開幕スタートダッシュに成功したことから、なかなか選手を代えるタイミングがつかめなかったこともあるだろう。
それにより、主力の疲労や怪我による離脱に伴ってチームパフォーマンスを落とし、連続して勝点を落とす時期を作ってしまった。

今季はビルドアップの配置を複数仕込み、人選も適宜変え、特に前半戦はうまくいかない試合もあったがなんとか勝点を拾うことで、首位チームに食らいついた。
後半戦は前半戦の仕込みもあり、人と配置を変えても安定したパフォーマンスを発揮し、年明け以降のリーグ18戦で脅威の16勝を果たすなど、最大出力を維持しつつも、最低出力の底上げに成功した。

来期の持ち越し課題は、未だ残る一部中心選手の勤続疲労。ずばり、サリバとサカ。
彼らクラスの選手が都合よく市場に出てくることは考えづらいので、①控えを許容してくれる若手か、②内部で調達するかのどちらかだろう。
①もアルテタやエドゥは妥協しないはずなので、②の内部調達をする可能性が高いと見ている。
その場合、ホワイト・ティンバー・ジェズス・トロサールあたりが鍵になるか。
アルテタもっと複雑に深く考えていることは間違いないので、来季どのようにマネジメントしチームを進化させてくれるのか、今から非常に楽しみ。

プレイヤーレビュー

GK

ラヤ

印象の悪いミスもいくつかあったが、総じてハイクオリティ。ミスを引きずる様子のないメンタリティが素晴らしい。

キック・スローも前評判通りだが、一番好印象は判断の良さ。ボールを付けた先で危険に奪われる事がほぼない。スピードアップだけでなくスローダウンの判断も的確で、経験値の高さがうかがえた。
そして代名詞のクロスカット。足運びが良くゴールエリア周りの機動力に優れるので、ハイ・ロー問わずクロス対応が良い。

あとは理不尽なセービングをシーズンでいくつか見せられればもっとファンを納得させられるか。
個人的には1stGKとして大満足のパフォーマンス。

ラムズデール

まさかの降格人事。
イングランド人で若く、代表クラスの実力があり、サポーターから愛されるキャラクターの持ち主である彼を外すことは、決して簡単な選択でなかったはず。
アルテタがいかに満足しない、妥協しない性格であるか推し量れる出来事であったかと思う。 

ラヤとの違いは組み立ての質と安定感。
ラムズデールもキックの精度は標準以上で、距離も出せるのだか、繋ぎの判断やボールを受ける際の軽やかさはラヤに到底及ばない。
また、1on1の場面で予測で動いてしまい、逆を突かれることも多い。その分ビッグセーブも多いが安定性に欠ける面があった。

GKとしてはまだ若く、伸びしろ抜群の選手であり、2ndGKに甘んじる選手ではないので、今夏は新たなチームを探すことが既定路線か。

DF

ホワイト

ティンバー、冨安、ジンチェンコ、トーマスとSB候補が次々と怪我で離脱する中、休まずシーズンを戦い続けた功績は大きく、POTS級の評価を与えるべき活躍をしたシーズンであった。

質の高いランと配球、サカとウーデゴールとのユニット完成度の高さは昨季より引き続きで、今季はランの回数が増え、クロス精度にも磨きをかけた。
また、キヴィオルが3-6の可変に苦しみ、途中から彼が2-6の可変をすることで、ビルドアップを安定させた。
得意ではないと自ら言っているサイドでの1on1も、アタックとディレイの判断が良くなり、アタッカーが得意な形自体を減らすなど対応も改善した。

前述したとおり、来期の課題にサリバの代役確保があり、サリバを休ませるに内部調達としては彼しかいない。
ガブリエルと2センターを組んだ経験があり、予測・ポジショニングの良さ、戦術理解の高さ、ビルドアップ時の落ち着きなど、能力的に申し分ない。
その場合RSBをどうするかという新たな課題が出るので、ティンバーのフィットも合わせて来季の鍵になるか。

サリバ

脅威のリーグ戦全試合フル出場。シーズン通じて安定したプレーを見せ、特にビッグマッチでは存在感を発揮。世界屈指のDFであることを示した。
これ以上はない評価をつけるべきだが、彼にはそれくらいやってもらわないといけないとも思わせるところが恐ろしい。

守備面は総じてハイレベルだが、今季は判断の精度が向上。昨季何度か不用意なアタックによるPK献上やそれに準じるシーンがいくつかあったが、今季はだいぶ減ったように感じる。
また、ボールの預け所としてもハイレベルで、ギリギリまでルックアップしてパスコースを探してくれるし、ボールを運ぶ際の姿勢が良く、2人目3人目を間接視野で捉えながらプレーしているので、危ないシーンが非常に少ない。

課題を挙げるなら空中戦。落下地点に入るのが少し遅い印象。最終守備者であることが多いので、確実な競り方しかできないことは考慮すべきだが、体格を考えると、先に落下地点入ってスタンディングで跳ね返すような場面はもっと増やせるのかなと感じる。

ガブリエル

今季サリバと並んでほぼ休まずに戦いきった。
冷静に相手をみるサリバと積極的なアタックが得意な彼の補完性は非常に高い。
何故か世間の評価が低い気がするが、彼ももはやワールドクラスのCBと言っていいだろう。

非常に身体に無理が効くタイプで、体躯の割に機動力が非常に高い。サイドに釣り出されるのを嫌うCBは多いが、彼が出ていっても不安感は全く無い。
スタッツを見ると、サリバよりもタックル数・勝率ともに高く、特にミドルサードでのタックルが多い。前で潰してくれる彼の存在が、相手に圧力をかけ続けられる一因になっていることは間違いない。

オフェンス面の貢献も素晴らしく、在籍4シーズンでリーグ14Gとすでにアーセナルの歴代DFで2位の記録となる得点力。
(ちなみに1位はコシェルニー。たしかに大事な時によく点取ってた。)

課題は時折見られる最終ラインでの大きめのミス。そしてそれを引きずるように見えるメンタリティ。
彼の実力やチーム内の立ち位置からも、そう簡単に代替できないが、恐らくアルテタにとってサリバ・ホワイトよりも序列は低く、今後アーセナルが進化を続ける過程で入れ替わりが起きることも考えうる。アーセナルを長きに支えてもらうためにも、この課題はしっかり清算する必要がある。

キヴィオル

ティンバー・冨安・ジンチェンコ不在の間、本当によく支えてくれた。彼なしでは今季の成績はあり得なかった。

中盤化が必要なアーセナルのLSBの役割に苦労したが、ホワイトを絞らせるようにし、LSBとLCBの間の役割を与えることでプレーが安定した。

課題は強みをもっと表現すること。キック精度や恵まれた身体能力は垣間見えるので、時には我を出してプレーする必要がある。

今季はSBとして活躍したが、スキルセットを考えると、やはりCBとして信頼されないと生き残れないように感じる。来季は空中線・地上戦でもっとバチバチ戦う姿を楽しみにしている。

冨安

今季も怪我に泣いたシーズン。
昨季よりはフィットすることができたが、リーグ1149分の出場時間は物足りない。(昨季はリーグ663分)

SBとして守備のクオリティはリーグトップレベルで、ビルドアップ時の位置取りも素晴らしい。
怪我さえなければアーセナルのLSB第一人者として最有力候補だったが、離脱によりキヴィオルとジンチェンコに席を譲る形に。

課題は、ファイナルサードにおける付加価値の創出。押し込める展開が多い中、左サイドは右に比べて攻撃力で見劣りするので、間違いなくアルテタは来季テコ入れする。
アルテタに攻撃面のクオリティを絶賛されたティンバーや、3-6可変の第一人者ジンチェンコが競争相手としている中で、守備だけじゃないところを示せるかどうか。
来季はSBの席を争うとともに、CB起用も増やしていってもらいたい。クオリティは間違いなくある。

ジンチェンコ

怪我が長引き、復帰後もイマイチ調子が上がらず、不安定なパフォーマンスに終始したシーズン。

SBからの6番可変は彼の十八番で専売特許であったが、最近はホワイトも冨安もティンバーもできる状況となり、独自性が薄れてしまった。
それでも中盤出身らしく、狭いスペースで自信を持って受けてターンして捌くクオリティは、SB対比だと他に類を見ないレベル。
一方で守備面で軽い対応を見せる場面が時折あり、彼はオンザボールでクオリティを示せないと収支が取れないのだが、今季は捌くシーンでミスが散発したことで、少し評価を下げた印象。

課題はやはり守備面。
空中戦も実は強いし、地上戦も言われるほど悪くないが、一瞬集中が途切れるのか軽い対応をしてしまう悪癖をどうにかしないといけない。
CLではマドリーが、流れが悪くても守備が固ければなんとかなることを証明したし、アルテタやペップも、守備面で計算できる選手しか使わなくなってきている。
SBとしてオンザボールのクオリティはトップクラスで、個人的にずっと見ていたい選手なので、守備面のクオリティが底上げされることを願っている。

ティンバー

リーグ開幕戦でACLを損傷し、最終節まで欠場。CSや開幕戦は圧巻のパフォーマンスで、ライスやハヴァーツよりもフィットが早く感じたので、本当に残念であった。

アヤックスではCBだったこともあり、身体がゴツい。SBとしてはオーバースペックで身体が重いんじゃないかと思ったが、そんなことは全くなく、むしろアーセナルの選手の中でもアジリティの良さはトップクラス。
1on1もかなり自信があるようで、相手選手にかなり食いつき、見るのではなく奪いに行くアグレッシブな守備を行う。

保持ではアヤックス出身らしく確かな技術を備えていて、中盤でボールを受けたり、攻撃に参加することにも喜びを感じるタイプ。あえて身体を開いてDFを動かすようなセンスも備える。

最終節では6番可変のポジショニングはかなり雰囲気だったので、来季しっかり学んで、シーズン通してフィットして活躍することを期待している。

セドリック

19/20の冬市場でサウサンプトンより加入。
18/19から怪我がちであったベジェリンのバックアッパー、プレーが安定しないナイルズやチェンバースの競争相手の立ち位置で加入し、長年チームを支えたが、今夏フリーで退団することが決定した。

4.5シーズンで2,500分程度の出場時間と、まさにバックアップの立ち位置に終始したが、発言からはチームへのコミットメントを常に感じたし、試合に出ればいつでも全力で取り組むプロフェッショナルな選手。

フィジカル面でホワイトや冨安と競えるレベルになく、典型的なSBのためプレー選択も堅く、今のアーセナルのSBとしては厳しかったのは事実。
しかし、キックの精度は高く、アジリティも水準以上。一試合通じてアップダウンもサボらないため、従来のSBの役割であれば活躍できるチームはあるはず。

32歳になったがフィジカル的な衰えは見ててそこまで感じないので、良い新天地を見つけてもらい、もう一花咲かしてほしい。

MF

ジョルジーニョ

まさにマエストロな存在。
細かいパス交換で全体配置とペースを調整し、チーム全体に矢印を示す能力は天下一品。
さらに、機を見たスルーパスは極上で、見てないフリして、横パスからダイレクトに裏に出すパスは彼の代名詞。

非保持はフィジカル的なハンデを隠すべく相手のファーストタッチを急襲し、ボールをかすめ取る。チームのトランジションの速さもあるが、守備者として決して目につかない、穴にならない技術が素晴らしい。

慢性的な怪我から出場試合数は限定的だが、スタメンでない時もタッチラインから監督のように声を張り上げるコミットメントもあり、永遠にアーセナルにいてほしいと思えるベテランの鑑。

ライス

£100mが安く感じるほどのクオリティ。
彼を獲得できるようになったことが、アーセナルの進化を物語っていると思えるほどの選手。

強い速い動ける怪我しないというフィジカルエリートでありながら、止める蹴るの基礎技術が非常に高い。
瞬間的に囲まれたり、サイドで挟まれるなど、奪われる危険性が高いシーンでも落ち着いているし、困った時はスピードとフィジカルでなんとかする、ある意味脳筋な解決策も併せ持っている。
トランジションの反応の速さやカバー範囲は流石の一言で、今季は6番でも8番の併用であったが、どちらにせよ不可欠な存在であったと言えるだろう。

来季の主たるポジションはわからないが、より課題を挙げるなら6番としての崩しの判断か。
トーマスやジョルジーニョと比べると、押し込んだ局面でプレーが固い。
6番はリスクを頭に入れつつ、縦パスを入れなければ一流と言えないポジションで、彼の6番としてはプレー選択は、リスク管理に比重を置いている様に見える。8番の時はより大胆なプレーでチャンスを創出しているので、おそらくポジジョンによる意識の違いだろう。
縦パスを通しつつパスの成功率90%を確保しろという無理難題な要求だが、ロドリやカゼミロ、クロースなどのトップオブトップはそれをなし得ている。ぜひそれに肩を並べる評価を得るべく、来季の成長に期待したい。

トーマス

今季も怪我に苦しみ、リーグ出場時間788分にとどまる。昨季終盤から引き続きフィットできていないため、放出候補の一人である可能性が高い。

ターンの上手さや、ギリギリでプレーを変えられる判断の柔軟性、縦パスのセンス、走力など、本来アーセナルの中心にいるべき能力がある選手なのだが、怪我の間にチームが進化したのか、フィジカルが整っていないのか、復帰後はトランジションでワンテンポ遅れるようなシーンが散見。縦パスのズレも多々発生し、彼らしくないなと感じる試合が多かった。
それでもスタメンに固定されるなどアルテタからの信頼は厚く、フィットすればロドリと肩を並べるクオリティを持つ選手だと思っているので、このままお別れではなく、完全復活を期待したい。

ウーデゴール

GAの数字は昨季を下回ったが、全体におけるチーム貢献度を高め、より充実したシーズンだったと言えるだろう。

原則を守りつつもより自由に解き放たれた今季は、状況に応じて、低い位置のビルドアップに参加したり、逆サイドにも出張するなど、ピッチ全体における影響度を高めた。
単にボールに寄ることは良くない傾向であることが大いにあるが、彼の周辺含めてわきまえてるというか、わかっていて、ライスやハヴァーツがその分動いて、重たくならないような調節もなされていた。

彼に関しては崩しの局面で唯一無二の存在なので、クオリティを落とさず来季もお願いしますということだけだが、個人的要望としては来季は左IHで見てみたい。

左はジャカがいなくなったことで、出し手成分が少なくなっていて、マルティネッリあたりは影響を受けているように感じる。
右サイドにおけるサカとホワイトとのユニットは、攻撃面における最大の武器だが、積み上げのためには破壊も必要。
彼の能力で左サイドをさらに活性化させることができれば、アーセナルはもう一つ高みに行けると思う。

スミス=ロウ

怪我自体は11月の1ヶ月だけであったが、復帰後もアルテタの信頼が得られず、今季のリーグ戦出場時間は353分にとどまる。

基礎技術の高さに加えて、モビリティが良く、ボックス内に入るタイミングとシュート精度は素晴らしい。
チーム内でも特異なスキルセットなので重宝されるように思えるが、なかなか出場時間が伸びず。

その理由としてプレー強度の面が大きい。
意欲はあるがフワフワしていて、行く行かないの判断が曖昧。また、トランジションの予測・反応が良くない。

スタメン起用されたホームのルートン戦では、プレスバックも意識的に取り組んでいることが見えて、得点にも関与したことから少し出場機会も増えるかと思ったが、それ以降出場時間に恵まれなかったことからも、アルテタの基準に達していないのだろう。
来季どうなるかわからないが、キャリアのため判断をするタイミングに来ているのかもしれない。

ヴィエイラ

鼠径部の手術をシーズン途中で受け、長期離脱。
離脱前はインパクターとして確かな信頼を勝ち得ていて、飛躍のシーズンかと思える出来であったただけに悔しさもひとしおなシーズンとなった。

チャンスメイク特化型の選手で、ウーデゴールのようなアイディア満載というより、デ・ブライネのように1本のパスの精度とタイミングで決定機を作り出すタイプ。
ボールを捉える能力も高く、ボレーやミドルシュートによるゴラッソ未遂も多い。
キックの能力で言えばチーム随一の実力者である。
また、決して足元偏重ではなく、裏抜けや前からのプレスなど労を厭わず走れる面も持ち合わせている。

課題はプレーの安定性と守備強度。
チャンスメイカーとしての能力は指折りだが、諸刃の剣でロストも多い。突き抜けられればそれでも収支が合うが、今のままだとインパクターの粋を脱せられない。
スタートから出場する機会を増やすためにも、ロストを減らして、ボールの預け所として信頼されることが重要。
また、彼が生き残るには左のIHだろうと思っていて、そのためには3列目の守備の必要性が伴う。守備強度を高めることも今後期待したい。

エルネニー

15/16シーズンの冬市場に加入。
年越し前に噂が上がり、市場が開く前であったことから個人的な期待値がとても高かった選手。
セドリック同様に今夏のフリー退団が決定している。

パスの成功率が非常に高く、パス&ムーブも怠らない。そして彼の代名詞、圧倒的な運動量で、まさに水を運ぶ選手。ミドルシュートの鋭さもアーセナルの選手にあまりない特長であった。
不動のスタメンまで達せられなかった要因としては、帯に短し襷に長しのスキルセット。
動けるがあまり動きすぎるきらいがあり、6番を任せることが難しく、右足偏重のため密集があまり得意でなく、8番としても評価を上げきれなかった。

ここ2シーズン怪我でほとんど試合に出れていないため、彼のプレーをほとんど見ていないファンも一定いると思うが、現チーム最古参で低迷期を支えてくれた功労者。
新天地での活躍を心から願っている。

ヌワネリ

久々に現れた逸材。個人的にはネルソン以来。
姿勢、ボールタッチ、密集地でのターン、キック精度、アジリティ。総合力が高く、1プレーで違いがわかる選手。

特にファーストタッチの置所が素晴らしい。
モニター越しに見ている自分と同じようにスペースを把握し、そのスペースに正確にボールを落とす。
彼のユースでのプレーを見ると、一見相手の対応が軽く見えるが、無駄なタッチが少なく、ここには来ないだろうという相手選手の想定をひっくり返したプレーができているため。

トップ定着は、サカが定着した時よりも確実に選手層が厚くなっていて、正直ユース選手にとってはキツイ現環境。
課題は、彼だけでなくユース選手全体に言えることだが、プレー強度。強度で基準を満たせない選手をアルテタは使わない。
インパクターとしてすぐにでも活躍する実力は備えていると思うので、あとはアルテタを納得させられるかどうかか。

FW

サカ

プレミアリーグ公式のPOTSはフォーデンで、それに然るべきパフォーマンスであったが、役割の幅広さ、チームにおける重要度でいうとサカだろう。裏返せばチームにおける個人への依存度が高いということである。

彼の特筆すべき点は、本調子でない試合もクオリティを担保してくれるところにある。
終盤戦は疲労によりお世辞にも本調子と言えず、抜けない・背負えない試合も多かった。
それでも、彼に対してはどのチームもツーマンセルで臨むため、いるだけでスペースを生むことができるし、裏へのランやネガトラの反応など、基礎としてやるべきことをサボらない選手なので、調子が悪いからといって外すことが難しい。

来季の最大の課題は、まさに彼の勤続疲労、業務過多をどう解決するか。

個人的にはIHで起用して、アップダウンによる負荷を軽減し、ファイナルサードに専念できる試合を作るべきと思う。
彼はプレーが効率的すぎるが故に派手さが無く、アーセナルサポーターとそれ以外の人で評価の差が大きい。
世界的な評価を受けるべき選手なので、誰でもわかる数字を積んで、然るべき評価を得てほしい。
アーセナルにおいてここ10年で最も数字を残したのは16/17のアレクシス・サンチェスで34GA。
来季の彼に期待したい数字である。

トロサール

PSMの充実からLWGの一番手かと思ったが、序盤戦はあくまでインパクターの立ち位置。 ジェズスの離脱でCF、マルティネッリの離脱でLWG、時にはIHと、前線の便利屋として起用され、最終盤はハヴァーツのCF固定化とともにLWGのスタメンに定着。

スキルセットはカソルラだが、思考はアレクシス・サンチェスのような選手で、ハイリスク・ハイリターンなプレー選択を取るため、IHはいまいちハマらなかったが、CF・WGとしては躍動。
リーグ戦0.71GA/per90は、PKキッカーのサカの0.77に次ぐ数字。CLでもポルト戦、バイエルン戦にて得点するなど、大一番の得点力として最も期待できる選手。
また、今季は非保持の強度が大きく改善。マルティネッリと見違えるほどの反応の速さで、ネガトラで穴になることもなかった。

今季も十分なクオリティを示したが、左サイドを活性化できればもう一段上の活躍ができるはず。
やはりサカやマルティネッリほどのスピードがなく、単純な突破力では見劣りしてしまうため、LSBにホワイトのように多角的に前線と関われる選手を配置したい。もしくはLIHにパサー色が強い選手もしくは幅取りからのプレーが得意な選手を配置するか。

全体のバランスがあるので、彼のやりやすさだけを重視できないが、チーム随一の得点力を誇る彼をゴールに近づけるように仕組むのも一つの手ではないかと思う。

ハヴァーツ

今季最もサポーターの掌を返した選手。
個人的にレヴァークーゼン時代から好きで、昨夏移籍の噂が出た時からやきもきしたのを覚えている。

加入後即フイットとはいかずとも、前半戦から原則を理解したポジショニングとプレー強度、運動量でチームの基盤を支え、後半戦は原則を守りつつも持ち味を生かしたポジショニングをとるようになりパフォーマンスをもう一段階上げ、CFに定着した年明け以降はリーグ18戦15GAとまさに大車輪の活躍を果たした。

ライス同様にデカい速い動ける怪我しないフィジカルエリートながら非常に賢く、相手のラインが低くても裏を取れるセンスは特異的。
中盤出身らしい視野の広さとキック精度も備える、総合力の高い9番に成長した。

来季も彼のためを思うと9番固定が良い気がするが、アルテタは8番でも使いたいと思っているはず。
ホームのアストン・ヴィラ戦など、2列目から再三チャンスを作り続けた試合を見ると、その気持もわかる。
どちらにせよ来季の主軸であることには間違いないので、シーズン通じて今季終盤のような活躍を期待している。

ジェズス

昨季のようにまとまった怪我でないものの、小さな離脱を繰り返し、序列を落としたシーズン。

ブラジル人らしく身体付近の空間掌握が上手く、ラフなボールもかなりの確率で収めてくれるし、ドリブル技術はおそらくチームNo.1。
プレス誘導やネガトラの反応もトップクラスで、前線からチームを牽引できる選手。

課題はここぞで打つべきか、パス出すのか、運ぶのかの判断が残念な場面が多々ある所。
敗れたホームアストン・ヴィラ戦の前半、サカのクロスをヘッドで外したシーン。
中にハヴァーツとトロサールが構えていたため、折り返すか、フォアサイドへのシュートでもマルティネスがこぼして決定機になる可能性が高いシーンであったが、ジェズスはニアの枠外に外してしまった。
ニアの枠外はどう転んでもノーチャンスのため、「それは無い」と夜中声を上げたことを覚えている。

そのような課題を差し引いても総合力は高く、来季のエース候補であることは間違いないが、今季ハヴァーツが9番の地位を確立した感があり、彼の起用にどう影響するか。

マルティネッリ

1ヶ月程度の怪我が2回あったことや、トロサールのハイパフォーマンスにより終盤序列を落とした。
数字の面でも昨季20GA、今季10GAと少し物足りないシーズンに。
90分辺りのxG+xAGは昨季から0.1しか変わっていないので、チャンスには引き続き絡めている。
あとは決めきるかどうか。

決定力が抜群という評価まではいかないが、水準以上の得点力は彼の評価の基礎としてあるので、そこは崩してほしくない。
来季がどうかだが、彼は賢く、底しれぬ強いメンタルの持ち主のため、しっかりパフォーマンスを上げてくると信じている。

課題は左足のクロス精度。
高さと速さが中途半端なときが多く、中の選手からしたら非常に押し込みにくい。
サカのようにフェアへのふんわりやマイナスへの転がしたクロスなど的確に選択し、丁寧にクロスを上げられれば、もう一つ守りにくいアタッカーになれる。

エンケティア

前半戦は、前線のどこかが離脱した際に9番に据えられるなど、控えの中でも評価が高い選手であったが、次第に出場機会に恵まれなくなった。
9番候補を探しているチームは数しれないため、彼もまた今夏の移籍候補になるだろう。

試合に出れば確かな得点力を見せるが、やれるタスクが狭い。
9番を争うジェズスとハヴァーツが、裏に抜ける、キープする、展開する、プレス誘導する、ネガトラの速度抜群という、圧倒的タスクをこなす選手であるため、余計にもっとやらないとと感じてしまう。

得点力は間違いないので、9番の仕事に専念できるチームに移籍することで、本領発揮につながる気がする。

ネルソン

昨季、劇的勝利のヒーローだが、今季は0GAとほぼ活躍を見せられず。ユースも追っていた自分にとっては、ウィルシャー以来のスターがヘイルエンドから生まれると、大きな期待をした選手。

ヴェンゲルが「技術的に教えることは何もない」と称賛した才能の持ち主だが、トップチームに上がって適応していくうちに、尖っていた能力がかなり丸くなってしまった。

性格もだいぶ丸くなったのか、サカを“Starboy“と称賛するインタビューがあり、「君こそが“Starboy“になるんだろ!」と心で叫んだ記憶がある。

スミス=ロウやエンケティア同様に、ユース出身がアーセナルを引っ張っていく姿が一番サポーターを熱くさせるのだが、お互いのキャリアを考えると、袂を分かつときが近づいているのかなと感じる。

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