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ユークリッド『原論』

ユークリッド幾何学(英: Euclidean geometry)は、幾何学体系の一つであり、古代エジプトのギリシア系・哲学者であるエウクレイデス(ユークリッド)の著書『原論』に由来する。

古代エジプトや古代ギリシャなどでは盛んに幾何学が研究されていた。エウクレイデスはその成果を『原論』の1~4巻において体系化した。その手法は

まず点や線などの基礎的な概念に対する定義を与える

次に一連の公理を述べ、公理系を確立する

そしてそれらの上に500あまりの定理を証明する。

という現代数学に近い形式をとっており、完成されたものであったので、それ以降の多くの幾何学者はこの体系の上に研究を進めた。ヨーロッパでは重要な教養の一つと考えられていたものである。こうして基礎づけられ発展した体系は、エウクレイデス(英名:Euclid ユークリッド)に因んでユークリッド幾何学と呼ばれるようになった。

現代的観点からは公理系に若干の不備もあり、「現代数学の父」ダフィット・ヒルベルトがより厳密に体系化している。(ヒルベルトの公理(英語版))

ユークリッド幾何学は、言うなれば直感的に納得できる空間の在り方に基づく幾何学である。直線はどこまでも伸ばせるはずであるし、平面は本来はどこまでも果てのないものが想像できるし、どこまでも平らな面があるはずであった。また、平行線はどこまでも平行に伸びることが想定された。それは、現実世界の在り方として、当然そうであると言う前提であった。

ユークリッド幾何学は永きにわたって「唯一の幾何学」であったが、『原論』の第5公準(平行線公準)に対する疑問から始まった研究の流れは19世紀に至ってついに非ユークリッド幾何学を生んだ。

ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学は一方が正しく他方が間違っているというような性質のものではなく、単に独立した別個のものである。「平面や歪みのない空間の図形の性質を探求する」のがユークリッド幾何学であり、「曲面や歪んだ空間の図形を探求する」のが非ユークリッド幾何学である。

関連項目

非ユークリッド幾何学(ひユークリッドきかがく、non-Euclidean geometry)は、ユークリッド幾何学の平行線公準が成り立たないとして成立する幾何学の総称。非ユークリッドな幾何学の公理系を満たすモデルは様々に構成されるが、計量をもつ幾何学モデルの曲率を一つの目安としたときの両極端の場合として、至る所で負の曲率をもつ双曲幾何学と至る所で正の曲率を持つ楕円幾何学(殊に球面幾何学)が知られている。

ユークリッドの幾何学は、至る所曲率0の世界の幾何であることから、双曲・楕円に対して放物幾何学と呼ぶことがある。平易な言葉で表現するならば、「平面上の幾何学」であるユークリッド幾何学に対して、「曲面上の幾何学」が非ユークリッド幾何学である。

平行線公準

ユークリッドの著した「原論」('element')の1~4巻に於いては、今日で言うところのユークリッド幾何学に関して、古代ギリシア数学の成果がまとめられている。

さて、「原論」では最初にいくつかの公理・公準を述べているが、その中の第5公準が次の、平行線公準と呼ばれるものである。

2直線に他の1直線が交わってできる同じ側の内角の和が2直角より小さいなら、この2直線を延長すると、2直角より小さい側で交わる。

これは他の公理に比べて自明性は低く、また明らかに冗長であったので、いくつかの疑念を生ずることとなった。

公理・公準として扱うことは正しいのだろうか? 定理なのでは無いだろうか。

あるいは、もっと自明で簡潔な、同値な命題が存在するのではないだろうか。

ここから、平行線公準の証明の試み、あるいは平行線公準の言い換えの試みが始まった。

古代ギリシア

プロクロスは、「原論」の注釈書に於いて平行線公準が定理なのではないかと述べている。プトレマイオスは「平行線公準を証明した」と主張したが、その証明は巡り巡って「原論」第1 巻命題 29 に依っており、命題 29 は平行線公準により証明されているので主張は正しくなかった。

アラビア

近代ヨーロッパ

古代ギリシャ以降も、無数の「平行線公準の証明」が生まれたが、多くはプトレマイオスと同じ過ちを犯していた。しかし、その結果として無数の「平行線公準と同値な命題」が作られた。ジョバンニ・ジローラモ・サッケーリは、1773年、論文「あらゆる汚点から清められたユークリッド」(Euclides ab Omni Naevo Vindicatus)において、鋭角仮定・直角仮定・鈍角仮定という互いに背反かついずれかは成立するような仮定を設定し、直角仮定から平行線公準を導けることを示した。

同論文の定理 9 および定理 15 により、各仮定をより分かりやすく言い換えるなら次の通りである。

鋭角仮定

三角形の内角の和は 2 直角よりも小さい

直角仮定

三角形の内角の和は 2 直角に等しい

鈍角仮定

三角形の内角の和は 2 直角よりも大きい

サッケーリは、鈍角仮定および鋭角仮定は矛盾を生じると主張したが、その証明に於いてはやはり平行線公準に依存する命題を使ってしまっており、証明としては正しくなかった。しかしながら、上の 3 つの分類はその後の非ユークリッド幾何学の構築に大きな役割を果たした。

またヨハン・ハインリッヒ・ランベルトも1766年執筆の論文「平行線の理論」に於いて同様の主張をしている(この論文は1786年に発見された)。

カール・フリードリヒ・ガウスは、1824年11月8日の手紙に於いて、鋭角仮定のもとで整合的な幾何学が成立する可能性を示唆し、そこにはある定数があってこれが大きいほど通常の幾何学に近づくと述べた。

ガウスの言うある定数とは、現代の言葉で言えば空間の曲率 k に対し、-(1/k)のことである。ガウス個人は非ユークリッド幾何の存在を確信していたと見られるが公表はしていない。「宗教論争に巻き込まれる事を恐れてか」とその理由を推察する者もいる。

非ユークリッド幾何学の成立

ニコライ・イワノビッチ・ロバチェフスキーは「幾何学の新原理並びに平行線の完全な理論」(1829年)において、「虚幾何学」と名付けられた幾何学を構成して見せた。これは、鋭角仮定を含む幾何学であった。

ボーヤイ・ヤーノシュは父・ボーヤイ・ファルカシュの研究を引き継いで、1832年、「空間論」を出版した。「空間論」では、平行線公準を仮定した幾何学(Σ)、および平行線公準の否定を仮定した幾何学(S)を論じた。更に、1835年「ユークリッド第 11 公準を証明または反駁することの不可能性の証明」において、Σ と S のどちらが現実に成立するかは、如何なる論理的推論によっても決定されないと証明した。

ベルンハルト・リーマン

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あわせて4人が3通りの方法を発見した。その結果をまとめると以下のようになる。なお、ここでは曲がった面上や空間内の「直線」は二点間の最短距離を指すのであって、まっすぐな線のことではない。さらに、平行線は絶対に交わらない二本の直線であって、同角度に伸びている線を意味しない。

画像読売オンライン

note 記事
https://note.com/29530503/n/n9367670fb35b

https://note.com/29530503/n/n12d10d2d63d4


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