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Jacob Collier jazz

Jacob Collier jazz   2020年04月07日
歌も演奏もすべて自分、天才ジェイコブ・コリアー Jacob Collier
来日迫るニュー・タイプの音楽家がYouTube発のサクセスを語る INTERVIEW
インタヴュー・文/原雅明 2016.03.02 https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/10280
欧米で注目を集める若きマルチ・ミュージシャン、ジェイコブ・コリアーの初来日公演が3月7日(月)、8日(火)にブルーノート東京で開催される。ロンドンの音楽一家に生まれ育ち、アカペラ&楽器演奏の多重録音パフォーマンスをYouTubeで配信して一躍話題に。大物ミュージシャンも彼を絶賛し、まずはジャズ畑から台頭を果たしつつあるが、ヒップホップやビート・ミュージックなど同時代の最先端をフラットに吸収したセンスも卓越しており、独自のパフォーマンスをステージ上で再現するためにマサチューセッツ工科大学とタッグを組むなど、新世代らしいサクセス・ストーリーは加速する一方だ。
今回は音楽ジャーナリスト/ライターの原雅明が、来日直前の奇才に迫った。Mikiki編集部

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ジェイコブ・コリアーとは何者か? 
才能溢れるミュージシャンを流動的に組み合わせて、ジャズやR&Bからワールド・ミュージックまで音楽シーンを自在に横断していく音楽コレクティヴとして多方面から注目を集めているスナーキー・パピーが、ニュー・アルバム『Family Dinner Vol.2』でフィーチャーした新鋭アーティスト、とひとまず紹介しておこうか。しかし、彼は単なる新鋭と呼ぶには、すでにあまりにも有名な存在になっているのだ。

それは、ネットを中心にこの1、2年の内に起こったことで、自身がアップした演奏動画がその引き金となった。スティーヴィー・ワンダーの“Don't You Worry 'Bout A Thing”を一人でアカペラと多数の楽器を演奏して多重録音でカヴァーしてみせた映像は特に有名で、2013年に公開されてから現在までに130万回近く再生されている。他にも、映画「夢のチョコレート工場」で主演のジーン・ワイルダーが歌った“Pure Imagination”や、バート・バカラックの“Close To You”のカヴァーなども同様に一人で多重録音をし、そのプロセスも動画に撮って編集してYouTubeに公開している。

ネットに自分の演奏を公開することは何ら珍しいことではないが、ジェイコブ・コリアーは、あらゆる楽器を自分一人で操り、その演奏スキルも圧倒的に高く、出来上がった音楽も多くの人を惹き付けるだけの魅力があって、さらに驚くほどに若いのである(94年生まれ!)。

すべてが映像としても示されるから、説得力は十分だ。それに、若いというよりもまだあどけなさが残る顔で、冷静沈着かつ実にあっけらかんと凄い演奏を見せ、そのうえ、ハービー・ハンコックやパット・メセニーなど第一線級のミュージシャンからの絶賛の声も伝え聞く。突如ネット上に登場した才能ある若者という、そのあまりに出来すぎな登場の仕方は、もしかしたら壮大なフィクションなのかと思わせたほどだ。

とはいえ、ジェイコブ・コリアーの存在はジワジワとネットから現実世界へと浸透し始めている。クインシー・ジョーンズの後押しで〈モントルー・ジャズ・フェスティヴァル〉に出演したり、前述のスナーキー・パピーに曲を提供して録音に参加するなど、次第に、生身のジェイコブ・コリアーの姿が見えてきた。特に、スナーキー・パピーの曲では、同時代の音楽への鋭い感覚も感じられ、単なる早熟な才能というに留まらないポテンシャルを示している。

まだ一枚もアルバムをリリースしていない(現在制作中だというが)新人アーティストとしては、異例なほどの注目度の高さだが、間もなく日本にもやってきてライヴを披露することも決まっている。それも一人だけの単独公演だ。いったいどんなライヴ・パフォーマンスを見せるのか、そのことも含めて、この注目すべき才能にインタビューを試みた。


“Close To You”のカヴァー映像。ヒップホップ的なビートや、聖歌を思わす多重コーラスを用いたアレンジも見事


――ロンドンで生まれ育ったそうですが、まずは幼少期のことから訊かせてください。

「僕は音楽一家のなかで育ったんだ。だから音楽というものが常に身近にあって、思い付く限りのたくさんの音楽のスタイルを聴いたり、探求したり試してみることを勧められたよ。音楽は僕にとって表現するための言葉の一つになったんだ。核にあるものが正しければ、音楽を通してもっと表現することができると思うよ」

――YouTubeで公開したような多重録音はいつから、どんな理由で始めたんですか?

「きっかけは学校のプロジェクトのためにいくつかミュージック・ビデオを作った時に、僕の友達がYouTubeでシェアすることを勧めてくれたからだよ」

――多重録音をする際にはどんなプロセスでやっているんですか? 作曲や演奏はもちろん、最終的なミックスまで一人でやっているようですが、何かコツみたいなものはあるんでしょうか?

「曲を作る時は僕の部屋で一人で行うんだけれど、僕の家族も一緒に住んでいるからたくさんの楽器で溢れているし、その部屋の中で僕の人生の大部分を想像力と共に費やしてきたよ。その部屋が僕のすべて。そこですべての演奏、録音、プロデュースをしたり、友達とジャムしたりするんだ」





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