皆さんのダムマネーの感想を読んで

 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体。名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 人生はそうそう簡単には変わらない。
 毎日毎日、希望と不安を抱え、労働力と時間をお金に換えて、パチンコ打って少しの倖せを得る。
 「倖せだけど、物足りない……」
 口に出せば今よりももっと、そうなってしまうだろう。だが気づけばそんな言葉が口をついて出てしまっていた。
 
 「物足りないのですか?」
 突然声をかけられたことに驚いた。
 「物足りないと聴こえましたもので……私こういう者です」
 男は不信感を浮かべた俺の不安を取り除こうとしたのか名刺を差し出す。
『  名の通り太っております。
     ふとっちょPB     』
 『ココロのスキマ…お埋めします』という文章ならまだわかるが、『名の通り太っております』…………。

 …………訳が分からない。
 確かに目の前の男は山のようにでかい大男だった。
しかし、訳が分からない。
 呆気にとられている俺をよそに男は続けた。
「あなたの物足りなさがお金で解決出来ることであれば『ダム・マネー』というものをご存じでしょうか?」
「ダム・マネー?ダムカレーかなんかか?」
「お察しがよろしいようで、その通りダムにせき止められた水や、カレーのようにお金が流れに流れてくる、お、は、な、し……ですぅ……」
 怪しすぎるやろ……、そう思いつつも耳を傾けざるを得ない……。
「あなたの理想はなんですか?」
男に対する不信感は拭えないが興味はあった俺は答えてしまう。
「理想か……、そんな大したものじゃないよ、今でも倖せだし、
 ただそうだな……美女と一緒にポップコーンとチュリトス片手に映画でも観れたらいいな。
 それが、俺の理想……憧れだ……」

「最高ですねぇ……」

 その言葉を聴いた瞬間、俺の中の不信感は悔しいが拭われてしまった。
なぜなら、その言い方が昔世話になった友人とそっくりだったからだ。
 ネット上での付き合いしかなかったが十分に語り合い笑いあった友人だった。
 今はどうしてるかわからないが、その友人に「最後のチャンスだぞ!」と言われた気がした。

 「分かった……ふとっちょPBさんとやら、話を聴こう」


 ふとっちょPB曰く、『ダム・マネー』とは、大阪城の地下で夜な夜なトーナメント式の喧嘩賭博が秘密裏に開催されているらしい。
 喧嘩の経験など全くないが、少しの希望を抱えて参加することにした俺だったが……。
「ふとっちょPB……俺がこのメンツで勝てると思うか?」
 会場には、うっちゃりをかますパンダ、注射器で血を吸う女、高麗人参を持った女、変な禿げ方の親父……etc。

 癖が強すぎるやつらばかりだと、ビビった俺は
「こんなん吸わなきゃやってられねぇ」とタバコをくわえたが、緊張のあまり火を忘れてしまったようだ。
 そんな俺を見かねて煙を纏ったブレイズヘアの男性がジッポで火をつけてくれる。
「どうぞ」
 タバコをふかしてようやく落ち着いた俺はその男性に話しかけることができた。
「火、ありがとうございます」
「いえいえ、はじめましての方ですか?」
 ブレイズヘアの男性は笑顔で声をかけてくれる。
「そうなんですよ、初めてで凄そうな人ばかりで気がひけてしまって……」
「そうですよねぇ、彼らは相当強者ですからねぇ」
でも……と彼は続ける。
「Diamond handsにはお気を付けください」
 俺はタバコをくわえながら固まってしまった。


「俺、初戦でその人なんすけど……」



 ブレイズの男性は俺の言葉に驚き、そしてご愁傷様ですという笑顔で
「せめて情報だけでも……」と言い、空に向かって「Duck Duck Go!」と発すると、信じられないが空中に検索エンジンのようなものがホログラムのように出現し、『Diamond hands』と打ち込むと一人の男が映し出された。
 
 『Diamond hands』……その名の通り、両手にダイヤモンドがちりばめられたグローブをはめ、街中で屈強な人間を次々になぎ倒す男。
 『Diamond hands』は叫ぶ。
「ドンコウデキタ!」「ドンコウデキタ!!」「HODL!」「HODL!!」
 その姿に恐怖を感じた俺は、その場をあとにした。
「勝てる訳ない……」


 「ふっざけんな!てめぇ!!」
 恐怖はやがて、こんな場所に連れてきたやつに対する怒りにかわり、
ふとっちょPBに俺は八つ当たりに似た感情をぶつけてしまう。
 「一回でも勝てたら金でるっつーからお前の話にのったのによ!!
初戦……初戦やぞ!!無理やろこんなん!!」
 「いえ、勝てば良いんですよ、勝てば」
 「そりゃ……、勝てればええけど、勝てるかい!あんなん!!それにお前はアレやんけ……、ひ弱な俺捕まえて相手に賭ければ儲かるもんな!せやんけ、それが狙いか!?がぁぁ!!」

「いえ、貴方に賭けてますよ」
「は?誰に賭けてるって?」
「だから、貴方にかけてますよ?」
「は?なんで、なんぼ?」
「いえ、ですから貴方に全財産かけてますよ」
「俺なんか勝ち目無いのに?」
「それは分からないでしょ、相手が『Diamond hands』だとは思いませんでしたが、逆に大穴ですね!洞窟探検!洞窟探検!♪♪」

 こんな何も無い俺に全財産をかける馬鹿がいる。
「そんなもん言われたらやるしかないやんけ……。」

もう俺は恐怖も怒りも消えていた。



 結果は惨敗だった。
 しがみつき、くらいついてやろうと、やってやろうと……、
頭で思ったとしても出来ないもので、実戦経験がない俺は秒殺されてしまった。
 自分の結果は悔しいけれども、それ以上にやばいことが起こった。

 なんと俺を秒殺した『Diamond hands』は2試合目、
秒殺されていた。

 『Diamond hands』を秒殺した漢は、喧嘩が
始まると同時に踏み上げ、胴回し回転蹴り、ローキックをきめた。
 倒れゆく『Diamond hands』を背に「ダイヤモンドハンドはそういうのじゃないんですよねぇ」と呟いた。


『Diamond hands』を葬った漢は難なく優勝し、勝利のコメントでは
「未来見えるので……、でも経験ですよ……」と優しく、謙虚に語っていた。


「かっけぇな……」
「かっこいいですね……」
俺とふとっちょPBは共に声を漏らしていた。

「すまん、俺のせいで全財産失ってもーたよな……」
「良いんですよ」
「いや、でも……」
「絆はプライスレスですので」
「…………」
「それに、貴方は昔から独居房から言ってたじゃないですか、
『人生必ずやり直せる』って」

「……やっぱりお前『ふとっちょカウボーイ』よな?」

「               最高ですねぇ……」



※この物語はフィクションです。登場する人物・団体。名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

Profilingk様、ツイキャスの皆様、いつも楽しい時間をありがとうございます!!失礼な発言をしてしまってたら、誠に申し訳ございません!!!!

Thanks link
・Profilingk      『700万円を36億円にした男の物語』
・ふとっちょPB   『〜ダムマネー未観覧感想文〜』
・翔        『ダム・マネー ウォール街を狙え!感想文』







 

 

 








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