歌詞感想文・和訳『September in the rain』やまない雨に思いを寄せる

The leaves of brown came tumblin' down, remember
In September in the rain
赤茶けた枯葉が、ひらり、はらりと落ちていった
あの雨の中の9月で

The sun went out just like a dying ember
That September in the rain
太陽が、燃え尽きかけた炭のように陰っていった
あの雨の中の9月で

To every word of love I heard you whisper
The raindrops seemed
To play a sweet refrain
あなたがささやく愛の言葉のひとつひとつに
雨音の甘い調べが幾度も重なっていた

Though spring is here to me it's still September
That September in the rain
もう春が来たのに まだ9月に取り残されているみたい
あの雨の中の9月に

※訳:筆者。意訳です。

Composer Harry Warren
Lyricist Al Dubin

September in the Rainについて

 1937年に映画音楽として作られた曲です。サラ・ヴォーンなどにカバーされ、現在ではジャズ・スタンダードとして広く知られています。
 以下のリンクはジョー・スタッフォード版です。歌声は艶っぽくて重厚なのですが、ゆるやかにスウィングするパーカス運びが軽快でもあり、ぽつぽつと降る雨の情景を思い起こします。

やまない雨

 最初に9月の景色を思い出すときに出てくるフレーズが

”In September in the rain”

です。
 ほかの対応する箇所は"That September in the rain"なんです。ここだけ、Inが2回繰り返される。昔、昔と人に語りかけるような、自分にも確認しているような、そんな聞き心地です。あるいは、ふっと自分の中から出てきてしまう景色を、あふれないようにそっと汲みとっているのでしょうか。
  "In the rain in September"でないのも味わい深いですね。雨で重く塗りこめられ、額縁の中に閉じ込められた9月の風景を俯瞰しているようではありませんか。

"To every word of love I heard you whisper
The raindrops seemed
To play a sweet refrain"

 甘美な場面です。
 ここでは、"refrain"というのがミソなんじゃないかと思います。リフレインとは、音楽用語で繰り返し演奏されるフレーズのことですね。Earth,Wind&Fire(こちらもだいすきです!)の方のSeptemberで言うなら、バーディヤ!の一連の流れ。耳に残りますし、曲の一体感が一層高まる部分です。
 一方で、悪い意味で耳に残る音もあります。
 眠りたい夜に、乾燥台に上げた洗ったばかりの食器から落ちる水音が気になって仕方がないことがあります。私は民謡のグリーンスリーブスがあまり好きではありません。体調が悪いことを職場に報告するたび、保留音として繰り返し流れてきたからです。
 単調で無機質な音は、いやに耳に残るものですね。
 明言はされていませんが、この曲は別れの曲でしょう。落ちる枯葉も、光を失いゆく太陽も、二人の関係が終わることのメタファーのようです。
 一見ロマンティックな歌詞ですが、「私」にとっては素敵な思い出でしょうか、もう思い出したくない思い出でしょうか。
 愛の言葉の一つ一つはもう思い出せなくて、無機質な雨の音ばかりが克明にリフレインされているようじゃないですか。
 忘れられないことばかり、何度も自分から繰り返し思い出して、そのたびに記憶が焼き付いてしまうものですね。

(余談)コードの話

 最後の引き(In September in the rain~)のところで

E♭m7→D♭maj7→Cm7→Cdim→B♭maj7

と流れます。これがあんまりきれいで……ほしい音がすべて過不足なく入ってて……とくに、オチのdimで下げてからのmaj7!これもう雨晴れてません?
 maj7おわりの雨曲といえば、あめふりりんちゃんですね(D♭maj7)。

(余談)バーディヤ!

 バーディヤ!の方のSeptemberも、実はSeptemberを思い出してるだけでSeptemberじゃない(December)曲なんですよね。あっちは「あの9月の恋、サイコー―や!!」って12月に言い出す曲ですけど……笑




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