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於:夜海

大きな波が打ち寄せてきた時、押し流されることはすぐに思い浮かぶけれど、引きも同じだけ強いことはあまり考えない。

まだギリギリ波が見える夜の海。
足元はあまり見えないから、その暗闇にかまけて、靴に砂が入らないように神経を尖らせて歩かなくていいと思ってしまう。

水面は白とグレーと銀の間のような色になり、ピカピカと光っていて、それでいて滑らか。まるで鉛のよう。
昼間よりも波の音が一層強く感じられて、一波一波の間隔が不規則であることに気付かされる。そして、ちょっとだけ怖くなる。

ものの10m沖から離れただけで、波の音はぐんと遠くなる。
海の近くに居続けたら、海の匂いだ!って喜ぶことは無くなってしまうのかな、とそんな予定もないのに考える。

一人で見る海と、誰かと見る海。
どちらも最高で、どちらも少しだけ切ない。

歩けるうちにもっと海に行こう。
でも、たとえ歩けなくなったとしても、誰かの力を借りて見に行きたい。
だから、力を快く貸してくれるような人を沢山見つけておこう。関係性を築ける努力をしていこう。

iPhoneの変換候補には出てこない、夜海(やかい)という言葉を初めて知った日。

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