AMRはAGVと何が違うのか

物流センターにおける無人搬送の重要性

物流センターで発生する中で最も単調な仕事として、物を運搬するだけの仕事があります。一番理想的な状態は、運ばなくて済むようにオペレーションを改善することですが、現実には完全に運搬作業を無くすことは難しいと思います。

運搬作業を手っ取り早くこなす一番簡単な方法は、人による運搬をすることです。しかし単純な運搬作業はそれ自体に仕事として魅力がなく、単純運搬作業を人にお願いした場合、作業をする方のモチベーション低下につながることがあります。

労働人口不足に苦しむ日本において、一人でも多くの人が機械には任せられない付加価値の高い仕事をしていただく必要があります。その意味でも、単純運搬作業は機械にバトンパスすべき仕事の一つです。

従来はAGVを導入しようとした場合、コストが障壁となり諦めたというケースが多かったと思われますが、今は人件費のアップとAGVのコストダウンが同時に急激に進んでおり、数年前とはコスト面での導入ハードルは大きく低下しています。

また従来のAGVとは異なる特徴を持つAMRと呼ばれる自立走行搬送ロボットも市場に多く出てきている現状は、あらためて単純運搬作業の機械化を真剣に考える価値のある時期にあるのではないでしょうか。

AGVとは

AGVはAutomatic Guided Vehicleの略です。日本語では無人搬送車や無人搬送機と書かれることもありますが、一般的な物流現場ではそのままAGVと呼ばれるのが一般的です。

現在は、小回りの利く数百キロ程の荷物を運搬できる小型のAGVから、海上コンテナを運搬することのできるような大型のAGVまで、用途に合わせて各メーカーから様々なタイプが販売されています。

AGVの走行ルートは事前に設計したうえで、走行ルートに誘導体を設置する必要があります。AGVが走行できるのは、この誘導体の設置されたルートだけになるので、何らかの理由で運搬ルートを変更しないといけない場合は、誘導体を設置しなおす必要があります。

一般的に広く使われている誘導体の一つに磁気テープがあります。磁気テープは誘導体の中では比較的安価なため、AGV走行ルートが長距離になる場合には、イニシャルコストを抑えることができます。

磁気テープは安価ではあるものの、床面に貼り付けるタイプのため、その上を人が歩いたり、フォークリフトが走行したりすると、どうしても剝がれてしまうので、定期的なメンテナンスが必要になります。一方で磁気テープが剝がれないように、磁気テープの上をいろいろな方法で保護しようとしてしまうと、レイアウト変更の際に剥がしにくくなるというジレンマがあります。

AMRとは

AMRはAutonomous Mobile Robotの略です。日本語では自立走行搬送ロボットと書かれていることが多いですが、こちらもAGV同様に物流現場ではそのままAMRと呼ばれていくのではないでしょうか。

AGVは人とは切り離され、AGV単独でモノを運ぶ作業をすることが多いのに対して、AMRは人と一緒になって運搬作業を担う使われ方をされることが一般的です。例えばある商品のピック作業の場合、作業者とAMRが一緒に移動して、商品が保管されている場所まで移動します。目的地に到着し作業者が商品をピックし、AMRに乗せ換えたらAMRは単独で移動しピックされた商品を次工程へ運搬します。その間に作業者は次の作業の準備や、別の商品をピックするために移動したりすることができるので、作業効率を大幅に改善できます。

AGVは運搬ルートに誘導体を設置することが必須ですが、AMRは物理的な誘導体を設置することなる、運搬ルートをAMRに指示することができます。この点がAMRとAGVの最大の違いです。AGVは決められたルートしか通ることが出来ないため、仮にルート上に障害物が置かれてしまうと、止まってしまいます。

一方でAMRは(それ自体が通れるスペースがあれば)、障害物を自分で判断し避けて目的地まで向かうことが可能です。AMRがそのような走行ができるのは、AMRに内蔵されたレーザーやカメラを使い、AMRが今どこにいるのか自らの位置把握し、障害物を含めた周囲の環境を認識し、事前にマッピングした物流センターのマップと照らし合わせながら動いているからです。

それぞれの優位性

AGVは既に長い期間様々な製造現場や物流センターで使用されてきた実績があるため、多くの信頼性の高いAGVがあります。また長らく製造されてきたこともあり、一台あたりのコストもAMRに比べ安価に抑えられています。

またAGVは磁気テープなどの誘導体を設置することが、手間という面ではデメリットですが、反面そのおかげで停止位置をAMRより高い精度で設定することができます。停止位置に精度が求められる場面では、AGVに軍配があがるでしょう。

ところでAMRの中には、走行方法がハイブリッド型のものもあり通常はカメラやセンサーにより走行をコントロールしつつ、シビアな走行動線や、停止位置など特別なエリアに限って誘導体を認識して走行することが出来るタイプもあります。

AMRは物理的な誘導体を必要としないため、導入に際して大きな工事をすることなく導入することが出来ます。またレイアウト変更にもAGVよりも柔軟に対応が可能です。そのためAMRの存在が、ピックや出荷といったメイン業務の改善の障害になりません。

そしてAMRは人との協働・AMR同士の協働ができるため、小規模でのAMR導入が可能です。同じエリアで10人分の仕事があったとした場合、一気にすべてをAMRにすることなく、1人分ずつAMRに置き換えて問題を解決しながら効果を確認し、徐々にAMRを拡大していけます。

まとめ

物流センターの中では、日々色々な作業が発生していることかと思いますが、単純運搬作業は機械化が進めやすい部分です。また単純な作業に対して、人は一般的には興味を持てず定着率の悪い仕事になりがちであるという点でも積極的に機械に置き換えるべき仕事です。

しかしながら、その作業自体が不効率であるとAGVやAMRを導入しようとすると、一人の作業を担うために何台ものAGVやAMRの導入が必要になることがあります。そうなってしまうと、投資対効果が得られず導入を断念せざるを得なくなります。しかしAGVはコストが高いからダメだと考えるのではなく、単純運搬作業は必ず機械化するのだという意思をもって現状の仕事を改善していくことが必要とされています。

仮にこれ以上効率的な運搬方法はないというレベルにまで改善が出来たのにもかかわらず、AGVやAMRの費用が高く投資対効果がない場合は、機械化の明確な損益分岐点を決めたうえで、人件費とAGVやAMRの導入費用を継続してウォッチしていきましょう。いずれすぐに、投資対効果が得られる状況がやってくることかと思います。いつでも機械化できる状態にして、待っておくというのが重要ではないでしょうか。

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