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トラック輸送の救世主:ダブル連結トラックと隊列走行とは?

はじめに

物流の2024年問題により懸念されているトラック輸送能力の不足に向けて様々な手段が検討されています。運ぶ量を減らす(荷姿を小さくする等)・距離を減らす(ルート・中継地の見直し等)といった抜本的な対策や、トラックではなく鉄道や船で運ぶといった輸送変更のモード変更も積極的に推進されています。

Co2削減の点から鉄道や船へのモーダルシフトは重要ですが、路線、航路、ダイヤが決まっている点において、トラックに対して柔軟性で劣ります。無理に鉄道や船を使おうとした結果、運ぶ距離が長くなるなど不効率が発生して、輸送コストやCo2排出量が増加してしまっては、元も子もありません。やはり、どんなものを・どこから・どこへ運ぶのかといった前提条件を明確にした上で、最適な物流ルート・モードを選ぶことが必要です。

さてトラックの運行ダイヤ・ルートの柔軟性が鉄道や船に対して優位性を持っていることは疑いのないことですが、ドライバー不足は避けることができない未来予想です。そこで今回はトラック自体は使いながら、トラックの輸送能力を上げる取り組みについて取り上げます。取り上げるのは高速道路におけるダブル連結トラック・隊列走行の2点です。これらは近年急速に実用化が拡大してきている領域ですので、2024年問題を解決する大切な技術になるのではないでしょうか。

ダブル連結トラック

まず最初はダブル連結トラックです。こちらは名前の通り、2台分のトラックを連結してしまい、ドライバーを二人から一人に減らしてしまおうというものです。

従来フルトレーラー連結車の連結全長が21mだったものが、25mに緩和されました。それにより大型フルトラクタに大型フルトレーラーを連結できるよになりました。

通常の大型トラックは約12mあるので、2台連結すると約24mです。従来は連結全長の上限が21mだったので、このような連結はできませんでした。しかし連結全長が25mまで緩和されたことにより大型トラック2台分相当を連結することができるようになったのです。これにより、10トン車2台分相当を1名のドライバーで運転できるようになりました。

ダブル連結トラックによるメリットは2つあります。1つ目は先ほどから書いている通り、ドライバーの数を減らせるということです。2つ目はCo2の排出量も減らすことができます。従来2台のトラクタで牽引していた量を1台のトラクタで運ぶことが出来るからです。ちなみに国土交通省の試算によると省人化は約5割、Co2削減効果は約4割とのことです(詳細はこちら。4ページ目)。

なおダブル連結トラックの運行には、車両・運行経路・車両装置・積荷・運転者・通行の条件が定められているので、運行に向けては様々な準備および申請が必要になっています。

隊列走行

次に隊列走行です。隊列走行も、ダブル連結トラックのように、複数台のトラックを連なって走行させることで、ドライバーの数を減らすことを狙っています。

ダブル連結トラックと異なり、隊列走行では物理的にはトラックとトラックを連結をしません。その代わりに複数のトラック間を通信させることで、自動で適切に車間距離を保ち、通信で繋がったトラックが一列に隊列を組んで走行します。先頭の車両は人が運転をし、後続車は先頭車両を自動追尾をすることで後続車の無人化が可能になります。

隊列走行はまだ実証実験段階ですが、これまでには2021年には3台のトラックの隊列走行を公道で実現しています。なおこの時には後続車の助手席に保安要員として人が乗り込んだそうで、後続車の完全無人化は実現していません(詳細はこちら)。

3台連ねて後続車を無人化して隊列走行をすることが出来れば、ダブル連結トラックよりも省人化の効果は大きくなります。一方で隊列走行はダブル連結トラックと違い、トラクタの数は減りません。ですのでダブル連結トラックほど大幅なCo2削減効果はありません。ただし隊列走行はトラック間の車間距離を縮めることができるので、その結果後続車は空気抵抗が減り燃費の向上が期待されています。
2021年の実証実験では、時速80kmで走行しながら車間距離は約9mを実現したとのことです。通常時速80kmで走行する場合、80mは車間距離を確保したほうがいいと言われることを考えると、かなり狭い車間距離をシステムによって既に実現できていることが分かります。

まとめ

ダブル連結トラックも隊列走行も2024年問題解決に向けて大きな可能性を秘めています。実際に最近では23年度に向けて国交省がダブル連結トラックの対象路線拡充を推進していくとの報道もありました。

一方でダブル連結トラックにも隊列走行にもまだまだ課題はあります。双方に共通する問題としては、こういった巨大なトラックを運転するドライバーにかかる影響、他の車への影響、休憩場所の確保が考えられます。

まずドライバーは通常よりも長い車を運転することで、運転中にケアするポイントが増え肉体的な疲労が増す恐れがあります。また、今までの倍の荷物を運んでいるというプレッシャーから、精神的にも大きなストレスがかかると考えられます。こういった難しい運転をしていただくドライバーさんへは、特別な稼働時間体系を作るなどして十分な休憩時間を確保することが、安全な運行にはかかせないのではないでしょうか。

またダブル連結トラックでは25m、隊列走行では60mと巨大な車が走ることになるので、周りを走る他の車両にも影響があります。例えば高速道路の合流地点でダブル連結トラックや隊列走行車が邪魔になり合流がスムーズにできないといったことが考えられます。また、隊列走行の60mも連なる車両群を追い越しをするのも簡単ではありません。

最後にサービスエリアなど休憩場所での駐車場の確保です。こういった特別に長い車両のために、専用の駐車場を設ける必要があります。ドライバーさんに安心して運行してもらうためにも、確実に駐車できるスペースの確保が必要です。

参考 ダブル連結トラックと隊列走行の比較



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