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「私の部屋には穴が空いている。」

誰かに話すと必ず笑われるが、どうして穴が空いているのか、いい機会だからその経緯について書こうと思う。

私は絵本が大好きだ。小さい頃は必ず、寝る前に、双子の妹の部屋か、私の部屋で母に絵本を読んでもらっていた。

あの日は確か、私が読んでもらう絵本を選んだ日だった。地元の図書館で借りた、マヨネーズが出てくる絵本。ルンルン気分で、部屋に入り、その絵本を布団に置く。そのつもりだった。
ご機嫌だった私は絵本をブンブン振って思わず、ぶん投げた。すると絵本は、私の手からすっぽ抜け、壁に直撃。しかも、運悪く、絵本の角が壁に当たった。(本をぶん投げる時点で、どうかしてるけど)

なんだか、嫌な予感がする。
まるで絵本が壁に吸い込まれたみたいだった。こんな時の嫌な予感は、大体当たるもので、恐る恐る、絵本の角が当たった壁を見た。
「穴、空いたんだけど…。」
絵本で壁に穴が空いた衝撃と、壁の脆さに対する驚き、せっかく選んだ絵本を、絶対今日読んでもらえないじゃんという悲しみ。そして絶対怒られるという焦りと、もう絵本を読んでもらえないかもという絶望。
今でも鮮明に覚えている。いろんな感情で頭の思考が絡まった糸のように、解けなくなる。ぐちゃぐちゃで、嫌な感覚だ。

人は思わぬところで簡単に物を壊す。(まさか、絵本で壁に穴が空くなんて思わなかったけど)
物だけじゃなくて、言葉もそうだと思う。
時に人を元気にしたり、傷つけたり、言葉には良くも悪くも力がある。

毎日、毎回、誰かと話すたびに、言葉の力を意識するなんて、疲れるし、馬鹿らしいけど、
せめて、目の前の人は傷つけないように、言葉をうまく使いこなしたい。

壁の穴を見ると時々こんな事を考る。

#エッセイ #穴#言葉の力
#幼い頃の事件





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