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「強いつながり」をどうしていけばいいのだろう?

 僕らは「他者」との関係性の中で生きている。

 当然のことだが、家族や友人がいる。彼氏や彼女がいる人もいるだろう。サラリーマンの方なら上司や部下がいて、自営業の人は地元の常連客や取引先などとも関係があることことだろう。
 高齢の方は老人クラブや寄合いなどの集まりもあるかもしれないし、働き盛り世代の方は消防団やPTAなどにも関わっているかもしれない。
 小中高生であれば先生やクラスメイトがいるし、成人になってからも高校の同級生と今でも深い関係がある人がいるかもしれない。

 それら「他者」との関わりは、自分が生活していくうえでなければならない関係性である一方で、僕らに大きな負担やストレスを与えることも多い。
 時には自分のために役に立ってくれたり、自分を助けてくれたりもするが、その関係性にいったん亀裂が入ったりすると修復が難しかったり、時には傷害などの愛憎劇に及ぶ場合すらある。

 なぜなら、それらの関係性は「リアルで(比較的)強いつながり」だからである。   
 
 こうした「強いつながり」は、かつて僕らの生活にはなくてはならないものだった。
 例えば、核家族化が当たり前の現代とは異なり、自分が小学生のころは、一つ屋根の下に3世代の家族が住むのが当たり前だった。
 自分の家では、3世代6人で住んでいた。もっと小さいころは大叔父の家族が一緒に住んでいたこともある。
 また、隣近所も同じような家が並んでいたので、それぞれが協力しながら調味料を貸し借りしたり、体が不自由な高齢者や病気の人がいれば、隣近所で面倒を見ていたものである。

 また、地域のつながりも強固だった。
 かつて、自分の住んでいる地域には「納税貯蓄組合」というものがあって、個人に課せられる市町村税等を地区で集金したものだ。
 期限までに地区住民が全員税金を完納すると地区に報奨金が来るという制度になっていて、その報奨金で地区の温泉旅行に行ったりするのが通例となっていた。

 だが、こうした強いつながりは「同質的」で「閉鎖的」である。

 強いつながりの集団の「おきて」を破るものは、制裁や指導を受けなければならない。先に示した「納税貯蓄組合」の例で言えば、期限内に納税しない世帯に対しては「地域住民」がその世帯に納付するよう「指導」する(そうしないと報奨金がもらえない)。
 「指導」しても納付しないようであれば、報奨金をもらうために「地域住民」が肩代わりすることもあったという。
 
 さすがに現在は、個人のプライバシーを侵すような「強いつながり」の集団は少なくなってきたが、今でもというか、個人化が進む今だからこそ、いじめの温床である『スクールカースト』をはじめとする学校内の人間関係や、任意加入なのに強制的に加入させられている『自治会』など、「強いつながり」による問題が後を絶たない。

 自分は、この「強いつながり」の中で育てられてきたのだが、プライバシーもないこの「強いつながり」を好んでいる訳ではない。
 自分は強制だったり、自由を奪われたりすることに極端に抵抗する性格らしい。
 表向きは従っても、心の中ではどこか強制された環境から抜け出したい、一人になりたい、といつも思っている。
 だから、学生になって一人暮らしをしたときのなんと心地よかったことか!
 だが、一方で「強いつながり」は自分を律してくれる。
 サラリーマン時代、きちんと真面目に勤めていたのも「強いつながり」による強制力のおかげである。

 この地域にはまだ「強いつながり」が残っている。
 買い物をするときにも、量販店が安いとはわかっていても、お世話になっている?先輩が経営している地域の商店で買い物をしなければならない。
 地域住民が集まって月に1回会合を開く無尽は、いつも同じ地区の同じ飲食店を使う。
 自分の母は、菩提寺の地区の代表をやっているので、ことあるごとに檀家から集金しなければならない。
 
 自分はこの「強いつながり」が苦手なはずなのに、気がつけば小学校、中学校のPTA会長をやり、地域のコミュニティのコンサルタントとなっていた。

 
 だが、地域に根強く残っている「強いつながり」も、未曽有の感染症の影響で足元からぐらついている。

 これまで行っていたPTAの事業は、実は無くなっても何も困らないということに皆気づいた。
 これまで必要と思っていた運動会をはじめとする地区の様々な行事は、あってもなくても自分の生活に何も影響がないということを実感した。
 

 これから僕らは「強いつながり」をどうしていけばいいのだろう。

 必要ないからと言ってすぐに斬り捨てるのは芸がなさすぎる。

 もっとスマートに変えていく方法はないか?


 考えられる一つの方法は、「つながり」を弱めることである。
 
 「強制的」や「自動的」な加入をやめて、できるだけ入退室可能な組織とすること。
 ごみステーションの掃除や草刈りなどを協働して行う「自治会」では不具合がでるかもしれないが、加入しない方からは会員の会費よりも高い協力金をいただくなど、うまい方法を地域で知恵を出し合うことだ。


 もう一つの方法は、「強いつながり」に異質なものを混ぜ込むことである。

 強固な「同質性」は、異質なものに弱い。
 地域で言えば「移住者」だったり、「若者」だったり。

 だからこそ「強いつながり」で権力を握るものは、異質なものを排除しようとする。
 だが、制度疲労を起こしている「強いつながり」のままでは、その組織の存続ですら危うくなる。

 「強いつながり」が突然崩壊する前に「異質」なものを混ぜること。
 そのことにより、組織は変革し、新たな方向性へ向かうことができる。

 自分がコンサルタントとして支援している地域でも、「若者」「移住者」「女性」といったこれまで「地域づくり」に参加してこなかった層を混ぜる事で化学変化を起こしている地域が出てきている。

 今からでも遅くはないはずだ。
  

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