憧れのお母さん

                             2020冬
この欄の原稿の締切り翌朝、書き上げた内容がいまひとつ納得いかず「どう直そうかな」と思いながらぼんやりテレビを観ていたら、とても感激するエピソードが。「これだ!」と差し替えました。この展開、もう何度目でしょう。

 モデルや女優として活躍中の高橋メアリージュンさんとユウさん姉妹のお父さんが事業に失敗し、生活が激変したのは中1と小4の時。「引っ越すたびに家がマトリョーシカのように小さくなっていった」そうです。そんな中でいつも明るく4人の子どもたちを包み「大丈夫、できるよ」と励ましてくれたのはお母さんでした。

 「これはね、人生のストーリーのひとつなのよ。あなたはいつか笑ってこの生活についてのインタビューを受けるわよ」と、芸能界に憧れる娘にまるで予言のようなことを言ったり、興味津々に「いろいろ大変ね」と声をかけてくるかつての知り合いに、人の人生には必ず苦労する時がある。今がその時ととらえ、「お先にー」と笑顔で答えたそうです。なんて素敵なお母さんでしょう。彼女自身も実際は不安と絶望の中にいたに違いないのに、子ども達の心に安心と希望を与えることで生きる意欲を守ったのです。姉妹はもちろん、弟二人もJリーガーと絵画アーティストとして成功しているのは、お母さんが「自分を信じて夢と向き合う力」を育ててくれたからに違いありません。

 メアリージュンさんは仕事が軌道に乗ってからも大きな病気と闘い、乗り越えてきたそうです。そしてその病を広く理解してもらおうと啓蒙活動もしているとのこと。どんな災難が降ってきてもへこたれない強さを身に着ける。しかも自分だけでなく、周囲も幸せにする。これこそが自己肯定感のなせる業です。眉間にしわを寄せて、わが子の不満な点を矯正しようと躍起になるよりも、良いところを見つけて自信を持たせること。やっぱりこれが大事!と大きくうなづいた土曜の朝でした。

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