ナナメの関係

                             2021春
地域の小学校で新入生のスタートを教室でサポートする活動が4年目になりました。。

メンバーは地域で様々な活動をしてきたおじちゃんおばちゃん10数名。40日間各クラスに入って1年生と過ごします。授業中のお手伝いはもちろんのこと、保健室への付き添いやトイレの見守りなど、1日があっという間に終わります。そして最も大事な役割が子ども達と「ナナメの関係」を作ることです。親や先生のようにタテでもなく、友達同士のようなヨコでもない緩やかな繋がり。ワクワクとドキドキが続く学校生活の中でホッとできる存在になることがねらいです。

マイペースかつエネルギッシュで団体生活では注意されることの多いA君。ある日、教材作りをしていたメンバーは切れないハサミに四苦八苦していたそうです。そんな様子をそばで見ていたA君が彼女に声をかけました。「切れないの?ボクのを貸してあげるよ」そして道具箱から自分のハサミを出して貸してくれました。彼女はもちろん「ありがとう」とそのハサミを受け取ったそうです。

ふだん「静かに」「早くやりなさい」と言われることの多い子が、大人に「ありがとう」と言われた時の心の動きはどうだったでしょう。私はこの話を聞いて嬉しくなると同時に「自分だったらこんなふうにできただろうか」と思いました。現にその場にいた数人の子達の中で、彼だけがその行動をとったのです。こんな力を持っているA君の姿を見られたことは、彼を理解し応援していく上で重要なことです。私は早速学校にこの話を伝えました。そして子どものそんな姿をキャッチする機会を得るためにも、ナナメの関係の仕掛人として頑張ろうと私もA君から勇気をもらいました。

子どもに限らず人にとって、親や先生は一番近くで自分を守ってくれる信頼感や愛着と同時に、育つ過程でどうしても叱られたり厳しい目で見られる緊張感も持ち合わせる関係です。友達は心を許せる仲間であると共にライバルの関係という側面も。

一方ナナメさんは利害関係がなく、気楽に付き合えて甘えることもできて、しかも自分より物知りで頼りになり…というなんともおいしい存在です。人はそんな心地よい交流の中で新しい価値観に出会い、視野を広げていくと言われています。ほっとスペースで、わが子の新しい姿に出会うというのもその一例かもしれませんね。

ほっとスペースのスタッフもまさにお子さんにとって、そしてみなさんにとってもナナメの存在でありたいと願っています。心結会のおじちゃんおばちゃん達が可愛い1年生との交流を楽しみにハードなサポートに協力するのと同じように、それは我々にも喜びをもたらしてくれるwin-winの関係なのです。

どうぞみなさんが持っているナナメさん、思い浮かべてみてくださいね。

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