負けを飲む力

 今日、ラグビーの試合において日本がアイルランドを下すという奇跡のような出来事が起きた。まぁ、私はラグビーにはあまり詳しくなく、何となく見ていた人間だ。
 SNSにおいて凄まじいニュースになっていたので、これは何かすごいことが起こったのだな、と感づいた位だ。その中で、非常に興味深いツイートを見つけたので紹介したい。

 実際の勝敗は日本19点、アイルランド12点。7点差がついているが、これならボーナスポイントとして勝ち点1がアイルランドに入るようだ。実際の所、素人が見ていても最後のキックは明らかに勝負を捨てるキックだった。点数の増え方から見て、攻めきってゴール内にボールを叩きつけ、その後ゴールポストにキックでボールを入れればどうやら引き分けには持ち込めたはずだからだ(トライとコンバージョンというらしい)。

 つまり、アイルランドは負けを飲んだのだ。

 これはなかなかできることではない。少なくとも日本は圧倒的な格下であり、世界二位のアイルランドならば勝てる可能性は十分にあったはずだからだ。引用ツイートでは屈辱のキックと書いてあるが、まさにその通りの攻撃だったと思われる。
 スポーツの世界において、敗北とはそのまま人生の一部を失うに等しいものだ。時間、努力、絆、今まで培ってきた全ての結果が「届かなかった」という冷徹な事実として返ってくる。敗北に耐えるメンタルケア術は、スポーツ選手どころか一般人にすら必要なものだが、スポーツ選手に必要なそれは一般人に求められるものとはレベルが違う。さぞや無念だったことだろう。

 しかし、ここにアイルランドの強さの真価がある。たとえ格下相手であっても、確実に勝てる相手でない以上は常に冷静に勝利の可能性がより高い方を選び続けて実行する。それができたからこそ、この1点の獲得である。
 詳しくはないが、アイルランドがこれから戦う相手は日本よりもさらに格下の二国であるらしい。確実に勝ちきって決勝リーグに駒を進める、そのための敗北を選べるチームはスポーツ選手として、そして何より人間としてきわめて強力なメンバーがそろっている。

 アイルランドのこれからの試合に、目が離せなくなりそうだ。

ありがとうございます。