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【川について】 人類の文明の発祥から現在まで生活に関わり続ける水の流れ

「川」って聞いてどんな川を想像するかは人によりますよね。私は長崎市の割と中心部の出身なので川のイメージはトップ画像にある「中島川」になります。穏やかな流れであまり大きくない2級河川です。眼鏡橋という石橋が架かっていて観光地になってます。京都市出身の方なら「鴨川」を思い浮かべるかもしれませんし、広島市出身の方なら「太田川」を思い浮かべるかもしれません。大きい川も小さい川もきれいな川も汚い川も各地に様々な川があるわけですが、実はこの「川」は文明の発祥から今に至るまで人の生活には欠かせない重要な役割を果たしています。今回は「川」を人がどのように利用してきたのか、そしてどんな恩恵や被害を受けてきたのか考えていきます。

人が集まって村とか町とかの単位になるにはある程度の食料が必要です。狩猟でもある程度は賄えますが人類は安定して多量の食料を確保するために「農業」を発明しました。そして農業には水が必要です。そもそも人が生きるのにも水は必要です。雨だけで全て賄えるのなら楽なのですが年によってはめちゃくちゃ降ったり全然降らなかったりで安定しません。川ならば水を引くこともできますし近ければ運搬も可能です。こうして川の水を利用することで安定した水を確保できます。こうした理由で川のそばで発達した文明が多いわけです。インダス文明とか黄河文明とか世界史で覚えさせられませんでしたか。それらの文明のそばには大きな川がありますよね。インダス川に黄河。エジプト文明にはナイル川がメソポタミア文明にはチグリス川があるわけです。

川は人に恵みを与えてくれる一方で氾濫などの被害ももたらします。氾濫した川は全てを洗い流し畑も家も人も押し流してしまう大災害に繋がります。そこで人類は出来るだけ川が氾濫しないように知恵を絞ります。これが「治水」です。例えば堤防を作ることや支流を作ること、ダムを作ることなどです。古代から現代に至るまで治水の技術は進化し続けています。それでも豪雨が続いて川が氾濫し都市が大きな被害を受けることはやはり現代でも起きます。それだけ川の水のコントロールは難しくまた人類の長い歴史の中での共通の課題というわけです。

川のそばで文明が発達することで様々な発明がありました。まず先にあげた「農業」、農業では土地を作る人ごとに区分けする必要があるので正確な面積を測るための「測量」が発達しそれに伴い「数学」も洗練されていきます。川の向こう側に行くための橋が必要なので「建築」も発達します。大きい川はもはや橋を渡すレベルではないので船で渡りますので「造船」の技術も培われます。氾濫を防ぐために「治水」の技術つまり「土木」の技術が磨かれます。川は水だけではなく魚の恵みも与えてくれるので「漁業」も発達します。上流と下流の街を結ぶ水の通路として「交易」を支えもします。川の流れを利用して「水車」を発明して脱穀に利用しました。簡単にあげてみても川とそれに伴って発達した技術や概念はこれだけあります。川はまさに人の文明と共にあったかけがえのない存在です。

次に日本の川について考えてみます。日本は山が多くその分川も多くあります。しかし川を利用して人が住んだり農業をするためには平地が望ましい。山間や谷間は水の流れも早いし居住地も農地も狭い。ですから当然のこととして平地の多い範囲に住むようになります。それを踏まえて地図を見てみます。

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関西から関東までの航空写真の地図です。大阪も名古屋も東京もみんな平地ですよね。緑色の山の中には街はないんです。平地の中でも海に接していて面積も広い部分が大都市として発達しています。そして平地が続く限りは「関西」とか「関東」とか同じ括りで範囲が設定されています。もう少し詳しく各地を見てみます。

まずは関西です。琵琶湖から京都を通って大阪まで川が流れてますね。

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次に愛知県です。岐阜県の方から川が通っています。

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次に東京です。東京も細々した川から大きい川まで数があります。

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最後に広島です。大都市圏と比べると平地の面積が狭いですね。しかし大きな川が広島を山から海へ通り抜けているのが分かります。

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大小いろんな都市がありますがどの都市にも中心には大きな川が通っています。このように川は文明が生まれて街が大きくなるための必須条件のようなものです。

では逆に川がないところや小さい川しかないところはどうしていたのでしょうか。今回のテーマは「川」ですが面白いのはむしろここからです。川が文明や都市に必要なのは分かります。しかし人間は川がないところにも文明を築き都市を発達させました。川は偉大な自然の恵みですがそれがなくても人間は多様な地域へ入植し独自の文化を作り上げているのです。

重要なモノがある。しかし「ソレ」がない場合にどうするのか。

上記の視点は生きていく上でも歴史や文化を考える上でも大事な視点です。なぜならば人は工夫する生き物だからです。川がない場所なら水があまり必要ではない生活様式になるとか川ではない場所から水を確保するとか発想が変わりるわけです。そうやってそれぞれの地域で独自の文化が育ち多種多様な文明が出来上がります。

川がない場合に人はどうしたのかは次回以降で取り扱います。自分で考えてみるのもいいでしょう。考えてみるといってもどう考えたらいいのかわからない場合もありますよね。そういう時は「具体的」に考えるのです。つまり実際に川がなかったり少ない地域はどんな生活様式を送っているのか。そんな地域を思いつかないのであれば砂漠や山岳地帯、どこまでも広い平地の草原でどんな生活様式が描かれていたか記憶にはないでしょうか。そうやって「具体的」な事例を考えるともしかすると川がなく水が少ないからこその文化かもしれません。

知識というのは「覚える」ことだけではなく次の思考を発展させるための道具でもあります。そして知識と知識を繋げることができるかどうかが「知恵」です。「川」を基準に知っている知識で川がない場合の文化を考えてみてください。

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