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23-24マンチェスターシティ選手名鑑〜トレブルの先に何を見るか〜


#選手紹介


#2 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 K・ウォーカー 移行

チームを勝利に導くストライカーや見る者を虜にするドリブルを披露するWGとは異なり、SBは相手の猛者を止めるのが仕事だ。たがこの男は時にそれだけでは自己アピールの場が足りようである。
昨シーズンは開幕から数試合はスタメンに名を連ね、ビルドアップ時は内側に入るタスクを与えられた。だが(恐らくウォーカーの独断で)内側に入りすぎてしまい、RCBのストーンズやアンカーのロドリがやりにくそうにしている場面が見られた。またビルドアップ時にパスミスをしてショートカウンターを誘発するなど組み立てに関してはシティのバックラインの中でもエラーが多い。
ピッチ外では3月に女性問題が取り沙汰されたり、記者会見でペップに「ウォーカーは偽SBができない」と言われるなどピッチ内外で話題を提供してくれた。
シーズン中盤はベンチを温めることもあったが本領発揮はCL準決勝マドリー戦。一昨シーズンは怪我でフルで出場できなかったが今シーズンは180分フル出場。ヴィニシウスにほぼ仕事をさせず、任務を遂行した。
ペップに「ウォーカーは偽SBできない」と言われて傷心したのか今夏はバイエルンへの移籍の噂された。日本ツアー中もクラブ間交渉が行われたようだが結局合意には至らず残留。
今シーズンはキャプテンマークを巻くことも増えそうだがエゴは最小限に抑えつつ、ビッグマッチでの猛者封じに専念してもらいたい。

#3 🇵🇹 R・ディアス 支柱

この男の加入から始まったプレミアリーグ3連覇と言っても過言はないだろう。
コンパニが抜けた19-20シーズンのシティはCBの補強ができなかったことと怪我人が重なった。それにより衰えを隠せなくなっていたオタメンディーや一軍スタメンレベルではなかったエリックガルシア、本職DMFのフェルナンジーニョらでCBを回す羽目に。
20-21シーズン開幕後もチームの調子は上がらず、レスターに5失点するなどペップ政権下における最悪の出来で世論は「ペップの時代は終わった」というものだった。
しかしながらシーズン開幕後にルベン・ディアスの加入が決まるとストーンズを生き返らせ、シティのDFラインに再び秩序と魂をもたらした。
話をシティに戻すと昨シーズンは、W杯後のリーグカップでチェルシーやリバプールには勝ったもののその後はサウサンプトン相手にあっさり敗北、リーグ戦でも不可解な判定がありユナイテッドに敗れるなど波に乗れないでいた。
しかしながら4-2で勝利したスパーズ戦でルベンディアスが復帰するとそこからチームは優勝するまで僅かに1敗のみ。
引き分けもリーグでのノッティンガム・フォレスト戦とCLベスト16以降のアウェイでの3戦(いずれも1-1)のみだった。
シティのバックラインでは唯一、偽SBや偽CBのタスクを与えられていないがそれは非カウンター時に中央にいることでシュートブロックや周りへのマークの指示をするリーダーシップを買ってのものと思われる。
グヴァルディオルという若手ナンバーワンの相棒を向かい入れたことでルベン個人の負担も減らし、ビックマッチでは共に最強の盾として立ちはだかってもらいたい。

#4 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 K・フィリップス 洗礼

昨夏、フェルナンジーニョの退団に伴い獲得されたイングランド人MF。序盤から少しずつ慣れていって欲しかったところだが肩の怪我でW杯前はほぼ全休。W杯後は体重超過でベンチ外になるなど歌番組やライブに参加する前に規律違反を起こしてしまった乃木坂の5期生みたいな前半を過ごした。
後半戦もスタメンで出場したリーグカップ・サウサンプトン戦では敗退。また前節から中1日で望むこととなったリーズ戦でもアンカーの位置で起用されたのはギュンドアンとペップの信頼を掴めずに終わった。
まあそもそもシティ加入1年目で圧倒的な活躍をしたルベンとハーランドが異常なだけなのでフィリップスも勝負は2年目である。
ポジションを1列上げてIHとして勝負するのか、DMF、SB、CBをこなすポリバレント性を身につけるのか注目したい。

#5 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 J・ストーンズ 伏線回収

18/19シーズン、シティはフェルナンジーニョの控えとして当時ナポリのジョルジーニョの獲得を目論んでいた。だがサッリがチェルシーの監督に就任したことでジョルジーニョもチェルシーへ移籍した。
その年、アンカーの控えがいないことを尋ねられた際にペップは「ジョンも中盤でプレーできるから大丈夫だよ」とコメントしていた。
ただ実際にストーンズがアンカーの位置でプレーしたのはシーズン序盤の体勢が決まった試合のみでシーズン終盤にフェルナンジーニョが怪我で離脱した際にはギュンドアンが担っていた。
19/20シーズンは怪我で目立った活躍は出来なかったがルベン・ディアスが加入した20/21シーズンは復活。
21/22シーズンは序列的には3番手に戻るもCLマドリー戦ではウォーカーの代わりにRSBとしてプレーするなど幅を広げた。
こんな風に怪我と進化を繰り返しながら幅を広げてきた背番号5は昨シーズン遂に世界屈指のマルチDFとなった。
シーズン序盤にW偽SBとして使われたのはウォーカーとカンセロ、中盤に入ると小さなフィリップ・ラーム"ことリコ・ルイスが偽SBの役割を託された。
終盤戦はストーンズがRSBとしてスタメンの座を掴み、ビルドアップ時にはロドリと一緒にパスコースに顔を出し続け、トランジションでも強みを出した。特にエティハドでのリバプール戦でのパフォーマンスは圧巻で4-1の勝利に大きく貢献した。
CL準々決勝のバイエルン戦ではバイエルンの快速WGに対抗すべく、アカンジがRSB、ストーンズがCBに入り、ビルドアップ時にはロドリの横に行く偽CBシステムもこなした。
世界を見渡してもCB,SB,DMFを高い水準でこなせそうなのはマドリーのアラバ、PSGのマルキーニョスくらいだろう。
昨シーズン開幕直後の選手名鑑で『持ってるものは間違いないのだから"最高の選手"だと言わしておくれ』と書いたが今なら胸を張って言える。「ストーンズは最高の選手だよ」ってね。

#6 🇳🇱 N・アケ 遅咲き故に満開

冬の移籍市場でボーリー・チェルシーが大型補強をしたためスターリングが移籍したのも遠い過去のことのようだが、実は昨夏このオランダ人DFにもチェルシー行きの噂があった。
結局話はまとまらず残留することになったがシーズン序盤はビルドアップ時に両SBが内側に絞る形を採用していたので出場機会は限定されたものであった。
しかしながら次第に4バック型やアシンメトリー型のビルドアップをチームが採用したこともあり、次第に出番を増やしていった。
どこかの7番が「最近出番ないから移籍するわ」と冬の移籍市場が閉まる直前に言い出したことでLSBはアケとまだ不安の残るセルヒオ・ゴメスの2人になってしまった。ロドリ同様、実質本職1人状態になってしまったがその中でもハイパフォーマンスを維持してくれて感謝しかない。
強みであったヘディングの強さや粘り強い守備に加えて今シーズンは左サイド内側のレーンから背後に落とすボールを蹴るようになっており、チャンスを作るシーンも見られた。
準々決勝2ndleg・バイエルン戦でハムストリングを痛めてしまい、その後復帰するも再び負傷。レアルマドリーとの準決勝の2試合はピッチに立てなかったが決勝ではLSBとしてプレー。見事に3冠の立役者になった。

#8 🇭🇷 M・コバチッチ 異質のキャリア

5,6年前に「将来、ヴァランとカゼミーロはユナイテッドに行くし、ロナウドとベンゼマはサウジアラビアに行くし、イスコもアセンシオもコバチッチもマドリーのスタメンを取ってないし、なんならベイルはゴルファーだよ」って言ったら誰が信じるだろうか。
それくらいマドリーで絶対的なレギュラーになるのは難しい。でもマドリーを追われた者には珍しくコバチッチはチェルシーでCL優勝、2年後にCL優勝チームから引き抜きというステップアップを遂げている。
ギュンドアンの退団発表直後にコバチッチ加入が発表され、背番号も同じ8を背負うことから完全なリプレイスと思われがちである。だがコバチッチにはギュンドアンのようなボックス内でのセカンドストライカーとしての能力はあまりなく、ゴール数も多くない。
そのため前に出ていく役割より後方支援がメインになるのではないだろうか。
フィットしないということはないと思うが、懸念点で言えば怪我だけである。

#9 🇳🇴 E・ハーランド 本物の怪物

『野球界には何年か1度、怪物とか天才とか言われる選手が現れます。うちからもそれに近い選手は何人も出ています。しかし1人で客を呼べるような"本物の怪物"は1人も出ちゃいない』

上記は人気野球漫画MAJORにて主人公茂野吾郎の才能に惚れ込んだ海堂高校のスカウト大貫の発言である。

勝利史上主義の海堂にとっての怪物が茂野吾郎であったようにイングランド国内でその地位を築き上げたペップシティにとっての怪物がハーランドなのではないだろうか。

シティにも才能のある若手は沢山いた。現にペップやアルテタやリージョ、その他のスタッフの努力や選手本人の成長が無ければこれほど多くのタイトルを取ることはできなかった。

だが、"本物の怪物"が居たことはあっただろうか。

17/18シーズンには勝ち点100に貢献したサネ、ジェズス、スターリングは全員クラブを去った。サネはシルバを失ったことで左での輝きを失い、右にはB・シウバやマフレズが居たことで次第に序列を下げバイエルンに移籍することとなった。
ジェズスはオフザボールでの動きと両サイドでも起用可能な献身性で貢献してくれたが絶対的な9番となることはできなかった。
スターリングも18/19シーズンまではエース級の働きをしていたが翌シーズンにパフォーマンスを落とし、フォデンと入れ替わるように序列を落とした。そしてそのフォデンですらまだ絶対的なスタメンとは至っていない。

だがノルウェー国籍の背番号9にはプレミアリーグ初年度とかプレッシャーとかいう言葉とは無縁のようだった。

開幕前にはグリーリッシュに「僕の移籍金は君の半分だからプレッシャーはないね」とジョークを飛ばしたかと思えば、実際にハットトリック連発。終わってみればプレミアとCLの得点王、チームはトレブルと実力を結果で証明した。
しかも多くの得点に関与するだけでなく、アーセナルとの大一番では右サイドまで下がってジンチェンコのマークについたり、B・シウバとサカのマッチアップでファールが続いたときにアーセナルの選手よりも早く主審の元に行き、味方を守ったりとチームへのコミットメントも高い。

2年目を迎える今季はよりマークも厳しくなるだろうが怪我だけには気をつけてその怪物っぷりを見せつけてもらいたい。

#10 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 J・グリーリッシュ 150億の本領発揮

一昨シーズンは内容、結果共に寂しいものになってしまい、移籍金の高さを揶揄する声もあったが2年目の昨季は見事にLWGのポジションを自分のものにした。
敵地でのアーセナル戦では空中戦では冨安に苦戦を強いられたが72分に決勝ゴールを沈めた。
更にハーランド不在のエティハドでのリバプール戦では1点目を左足でアシスト、試合を決める4点目を決めるなどビッグマッチでも目に見える結果を残した。
守備面でも改善が見られ、エティハドでのスパーズ戦ではグリーリッシュが行かなければ数的不利になってしまう非カウンターの場面をタックルで止めるなど着実に"シティのグリーリッシュ"へと成長を遂げている。
ハーランドとも仲が良い上に、3冠達成のパレードの前にはベルナルドに「移籍しないで」と懇願するなどピッチ外でもチームメイトを繋ぐ役割を担っているようだ。
フォデンやドクもLWGとしてプレー可能だが本職の控えはいないので悪質なタックルにだけは気をつけてもらいたいところ。

#11 🇧🇪 J・ドク 踊るボク、名前はドク

マフレズの退団に伴い、獲得されたWG。
プレー集を見る限り、マフレズよりもスピードで抜くタイプで左右両方でプレー可能なようである。
グリーリッシュがふくらはぎを痛めたことで4節のフラム戦で初スタメン。試合開始時は右でスタートしたが途中から左に回って仕掛けるシーンも見られた。また守備面でもプレスバックからボールを奪うなどシティのWGとして必要な素養も持っていそうである。
グリーリッシュやベルナルド、フォデンとは違うタイプのWGでハマったときのワクワク感は新加入選手4人の中でも1番高い。
ハーランドにも既に可愛がられているようだし、デ・ブライネ先輩の言うことをよく聞いて大きく育ってもらいたい。

プレス時の決まりをしっかりこなしつつ、敵陣では違いを作ることが求められるのでフィットするまでには時間がかかるかもしれないが年齢もまだ若いので少しずつ成長していってもらいたいところ。

#16 🇪🇸 ロドリ グラシアスロドリ

シティ加入後から労働基準法という言葉とは無縁のスペイン人ピボーテ。
フィリップスの加入、W杯シーズンということもあり、序盤は時間を管理しながらの出場になるかと思いきやフィリップスの怪我で休みなし。
スペイン代表にはブスケツがいるからさすがに休めるだろうと思ったら本戦でCBで起用され結局休みなし。
W杯後は怪我から復帰したフィリップスが居るのでさすがに休めるかと思いきや、フィリップスがオーバーウェイトでベンチからの信頼を掴めず、しばらく休みなし。
フェルナンジーニョの衰えで実質本職1人だった去年に続き、今年も実質1人でポジションを守った。サポートに入る偽SBとパスコースに顔を出し続ける動きや状況を見て下りる動きもスムーズで替えが効かない存在となっている。
ストーンズが偽SBや偽CBとして横にサポートに入るようになってからは臨機応変に高い位置まで上がることもあり、もはやアンカーに求められる以上の役割をこなしている。CL決勝では"奇策をせずにはいられない指揮官"のアイデアにより慣れた3-2ビルドから3-1ビルドを強いられて前半はやや苦戦気味だった。チームとしても中々先制点を挙げられない中、68分にインフロントでの外巻きシュートで先制点をゲット。
指揮官と同じポジションの男が、2年前のファイナルではピッチに立てなかった男がペップとチームを見事に救った。
コバチッチやヌネスの加入でさすがに今シーズンは少し休めるかな...?

#17 🇧🇪 K・デ・ブライネ 神に募る一抹の不安

ケインを獲れず偽9番システムで戦うこととなった一昨シーズンは、自らゴールを決めるプレースタイルにシフト。リバプールとの2試合、チェルシー戦などでゴールを決めストライカー不在のシティに多くのゴールと勝ち点3をもたらした。
怪物が上陸した今季は再び、クロスモンスターになり、シーズン開幕と同時にハーランドとのホットラインも開通。
得点数自体は昨シーズンよりも減らしたがアーセナルとの大一番ではハーランドが序盤からラムズデールに阻まれたり、シュートが薄く当たってゴールが奪えない中、兄貴分のデ・ブライネが2ゴールをあげた。
CL決勝ではハムストリングを痛め、2年前と同じく負傷交代を余儀なくされた。優勝後のインタビューでは2ヶ月間ハムストリングに問題を抱えていたことを明かしていた。
そのためプレシーズンのアジアツアーにも帯同はしていたが1人別メニューをこなすなど出番はなし。
プレミアリーグの開幕戦には間に合わせ、スタメンに名を連ねたものの再びハムストリングを痛め、4ヶ月の離脱に。
ペップシティの象徴とも言えるデ・ブライネの稼働率が下がっていることは残念ながら事実でチームとしてもデ・ブライネの後釜をどうするのか考えなくてはいけないだろう。

#18 🇩🇪 S・オルテガ

昨シーズン、ステフェンのローン移籍に伴い獲得されたドイツ人GK。シティに移籍してくるまで彼のことを知っていた人などほとんどいないだろうが想像以上の実力者だった。
出場はカップ戦中心ながらファインセーブを連発。12月のリーグカップ・チェルシー戦ではチームの調子が上がっていないこともあり、後半に何本もピンチを迎えたがことごとくオルテガが止めた。
FAカップでは決勝でPKで失点するまでは無失点と防御率0.00だった。その決勝の舞台でもアディショナルタイムにスクランブルの末にクロスバーごとクリアしようとするファインセーブを見せるなどFAカップ優勝に大きく貢献した。
移籍市場ではバイエルンからもお声がかかったが結局残留。
今シーズンもオルテガのファインセーブと下田さんの「オルテガ、オルテガです!!!」を楽しみにカップ戦を楽しみたいと思う。

#19 🇦🇷 J・アルバレス 大物ルーキー

一昨シーズンの冬に獲得されたアルゼンチン人FW。
前線のメンバーを見るとフェラントーレス、スターリング、ジェズスの3人が抜けてハーランドとアルバレスが加入なので枚数自体は減った形でスタートした今シーズン。しかもアルバレスは欧州未経験、更にW杯イヤーということもあり、回せるのかどうか不安だったがまあ心配ご無用だった。
J3相模原の監督を務める戸田和幸さんからも「アルバレスがいると長い距離のプレスを行ってくれる」と評価されている通り、まずは走れることが魅力。
そしてロングパスやキーパーの肩口を狙うシュートなどキックの質も高い。ハーランドの数少ない欠場試合となったエティハドでのリバプール戦ではクロスに合わせて同点ゴールを挙げると2点目、3点目にも絡む活躍を見せた。
ジェズスとスターリングのビッグマッチでの決定力に涙していたシティズンにとっては1年で怪物・ハーランドとジェズスの上位互換を手に入れてしまうという夢の年になった。
アルバレスにとっても欧州初挑戦、W杯初出場ながら、プレミアリーグ、CL、W杯の3つを制するという最高の1年に。
今シーズンからはそのタイトルの"数"を増やす工程に入る。

#20 🇵🇹 B・シウバ ベルナルド、SBやるってよ

ピッチ上では絶対的安定感、移籍市場では家族に近いところに帰りたいでシティズンをハラハラさせる小さな巨人。
だが、移籍できなくても嫌な顔1つせずハイパフォーマンスをしてくれるから本当によくできた選手である。
今シーズン序盤はマフレズが不調だったこと、ボックスに入っていけるギュンドアンがハーランドと相性がよかったこともあり、RWGで起用されることも多かった。シティの中盤はみんな良い選手だし、ベルナルドは走ってくれるし、だったら全員使っちゃえばいいじゃん的な。
かと思ったら今度は2月のヴィラ戦でLSBデビュー。自陣でのビルドアップではやエデルソンやウォーカーにパスコースを作ってあげる動きで貢献。敵陣では狭いスペースで受けたパスを右足で止めて、そのままの流れで左足でグリーリッシュにパスを送りPKを誘発した。次節のエミレーツでのアーセナル戦でもLSBとして先発、さすがにサカには手を焼いたがイエロー1枚までで済ませて、アケにバトンタッチ。RWGにポジションを移すとプレス強度を高めて2点目、3点目を呼び込んだ。
CLのバイエルン戦、マドリーとの2ndlegでは得意の正体ドリブルからA・デイビス、カマヴィンガを翻弄し、計3得点の活躍。
怪我知らず、疲れ知らずの大活躍だったが去就に関しては今夏も安定の「何が起こるか見てみよう」状態。
お馴染みのバルセロナ、PSGに加えてサウジアラビアからもお誘いがあったようたが8月24日に契約延長を発表。
世界一の小さな巨人は今シーズンもスカイブルーのユニホームを纏い指揮官の過剰な要求に応え続ける。

#21 🇪🇸 S・ゴメス 這い上がれ

シーズン序盤の選手名鑑ではバックアップ的な立ち位置とおでこが広いのが似てることからレアル・マドリーのルーカス・バスケスのようになってくれたらと書いたがまあ一定の経験は詰めたのではないだろうか。
CLのGS第1戦(対セビージャ)で初スタメン。ホームでのダービーではハーランドのゴールをアシストして勝利に貢献し、まずまずのスタートを切った。
しかしながらCLのGS第4戦(対コペンハーゲン)ではスタメンに名を連ねたものの、前半にDOGSOで1発退場。直後にリバプール戦を控えていたため、早めに試合を決めたかったチームは数的不利での試合を強いられ、結局引き分けに終わった。
守備面でもフィジカル的に敗れて抜かれる場面も見られるが、左足からの速いクロスは武器になると思うので頑張ってほしい。

#24 🇭🇷 J・グヴァルディオル グヴァかグヴァ以外か

7月末の国立競技場、3冠チームとして来日したシティのプレシーズンマッチでは鎌田がパラーシュートで登場してシティ移籍が発表されるのではと噂されていた。
そんなことより、シーズン中からトップターゲットと言われてきたグヴァルディオルの獲得が中々決まらず、祈るような思いでRed Bullを買っていたのが懐かしい。
なんだかんだあって遂に獲得された若手ナンバーワンCB。バックスの絶対神であるルベンをプロテクトするためにルベン不在時にリーダーになれて、且つルベンと一緒に組めるCBとしてこれ以上の人材はいないであろう。
W杯で時の人となったグヴァルディオルを子供扱いしたメッシはMLSに移籍し、5得点を決めたハーランドも今はチームメイトである。「1年目だしゆっくりフィットしてくれれば」なんて言葉は彼には野暮だろう。

#25 🇨🇭 M・アカンジ お得なお買い物

昨夏、移籍市場のクローズ直前に獲得が決まったスイス人CB。
ドルトムントでは出番を減らしていたようだが特徴的な髪型と対人の強さですぐにシティにフィットした。
ルベン神ほど状況を読んだビルドアップはできないが身体能力を活かした守備でカウンタープレスや自陣でのデュエルに貢献してくれる。
シーズン序盤から中盤にかけてはCB、RSBでの起用が多かったがアーセナルとの大一番では負傷のアケに代わり、LSBとして先発。
サカにこれといった仕事をさせず、左でも使えることを証明した。
レベルの高い選手であることは間違いないのだが欲を言えばビルドアップ時のパスコースを作るのが遅いのと、相手に読まれやすいパスの出し方を改善してほしい。

#27 🇵🇹 M・ヌネス 強運を実力に変えて

開幕1試合でデ・ブライネの4ヶ月の離脱が確定し、シティは代替選手を探すことになった。だが最初に名前が上がったのはウェストハムのパケタでヌネスではなかった。シティはパケタとも個人合意をしたようだが、後から賭博疑惑が浮上したこともあり撤退。そして名前が挙がったのがヌネスだった。
£55m以上払いたくないシティと£60mは欲しいウルブズとの交渉が続き、一時は撤退との話も出たが粘って最終的に合意に持ってくるのが我らがチキ・ベギリスタン。
トップターゲットではなかったところから市場閉幕ギリギリで移籍を勝ち取った強運の持ち主はその実力をピッチ上で見せられるか。

#31 🇧🇷 エデルソン 感情を取り戻したエディ

エデルソンとアリソン。
同じブラジル出身で名前も似てる2人だがアリソンにあってエデルソンにないものは何か。
それはここぞの場面でのセービングとCLのタイトルである。そんな感じで迎えた昨シーズンは序盤の複数失点が続いたこともあり、過去4回のリーグ優勝と比べても失点の数はワーストになってしまった。
ただ20/21シーズンのギュンドアンへのアシスト以来となる(ハーランドへの)アシストも達成。相変わらずキックの質と飛距離は半端なく、エティハドでのアーセナル戦ではエデルソンのキックから少ない人数での攻撃を取り入れていた。
CL準々決勝のバイエルン戦では同僚だったサネの強烈なミドルを何本も浴びるがサネには決めさせず。決勝の舞台でもアカンジのミスから迎えたピンチを救った。更にアディショナルタイムにはロングボールをパンチングではなくキャッチする勇気あるプレーを見せ、最後も難しいボールを処理し、見事にCL優勝チームの守護神となった。
CL優勝後のセレモニーではアルゼンチン代表のキーパーとは違い、股間パフォーマンスはせず、トロフィーにキスをするのみだった。
数年前、エリックガルシアと交錯してエリックガルシアが担架で運ばれる際にヘラヘラ笑っていたエデルソンはCL優勝でサッカー選手として最高の"喜び"という感情を手に入れた。

#33 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 S・カーソン 守り神

チーム最年長且つ愛されキャラの第3GK。
昨シーズンは出場こそなかったがベテランとして、第3GKとしてチームやエデルソン、オルテガのサポートに徹した。
イスタンブールの奇跡のときのメンバーの1人であるカーソンは「(昨シーズンCL決勝の開催地だった)イスタンブールに帰る度にCLのトロフィーを持ってかえるんだ。だから心配ないよ」とチームメイトに話していたそう。
今シーズンは試合数も多いのでどこかでカーソンのプレーが見れるかもしれない。

#47 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 F・フォーデン 秘蔵っ子の行く末

初めてのW杯イヤーに望んだ昨シーズンはコンディションが整わないことも多かった。
シーズン序盤こそ、スタメンで起用されていたがW杯後は怪我で離脱。
その後は復帰するも代表ウィーク後に虫垂炎の手術を行い、復帰したのはバイエルンとの2ndleg。一気にシーズンの総仕上げに取り掛かるチームで序列を引っくり返すのは簡単ではなく、その後はベンチメンバー1番手としてシーズンを終えた。
CL決勝で見せたライン間でのターンからの推進力、左右両サイドでプレー可能な万能性などの持ってるものは間違いない。デ・ブライネの4ヶ月の離脱が決まってる以上フォデンにかかる期待も今まで以上に大きいはずだ。

#82 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 R・ルイス 小さなフィリップ・ラーム

えーー、巨人にいたデラロサに顔が似てるのがライリーでモンスターズ・インクのセリアに似てる髪型なのがエスブランドだよね。
昨シーズン終盤に出番を得たSBの若手をこんな風に記憶していたが、今シーズン出番を得たのはアフロヘアーの18歳だった。
CLのGS第6戦(対セビージャ)で初スタメンの座を掴んだ。前半は内側に絞る偽SBを務めたがビハインドで迎えた後半は外側を取る役割に変更。そのタスク変更も功を奏し、オーバーラップから見事に初ゴールを決めた。
W杯後はリーグカップのリバプール戦ではスタメン、アウェイでのチェルシー戦では後半から投入されチームの勝利に貢献する働きを見せた。
シーズン終盤になるとアケ、ルベン、アカンジ、ストーンズ(+ウォーカー)からDFラインが構成されることが増え、スタメンの機会自体は減らしたが高い評価を受け、契約を更新。フィジカルを鍛えてSBとして生きていくのか、SBもやりつつ最終的には中盤に落ち着く、キミッヒみたいになるのか今から楽しみである。

#別れ

#7 🇵🇹 J・カンセロ サヨナラ

カンセロロールで時の人となって2年。スターリングの退団に伴い、背番号も7に変更。たが、昨シーズンはカンセロにとっては厳しいシーズンとなってしまった。
アンフィールドのリバプール戦ではチームも互角以上の戦いをしていたがコーナーキックからの非カウンターで後ろに残っていたカンセロがサラーと入れ替わってしまい、両チーム唯一の得点を許してしまった。
開幕直後は両SBが内側に絞る形でビルドアップしていたためコンスタントに出場していた。しかしながら、チームが4バック型、アシンメトリー型を採用するようになるとアケやリコ・ルイスが起用されるようになり、出番を減らした。
そして1月28日のFAカップ、アーセナル戦でスタメン起用されなかったことで不満が爆発し、クラブに出ていくと脅し、クラブも「No bigger than the club 」と主張し、バイエルンにレンタル移籍することとなった。
フェラントーレスといい、スターリングといい、今シーズンのカンセロといい割と妥当な序列の下がり方だとは思うがみんながみんな自分のプレーや序列を客観視できるわけじゃないので仕方ないでしょう。

#8 🇩🇪 I・ギュンドアン 愛人と呼ばれて

ずっと地味だけどずっと活躍してる人。
序列的には4番手のことが多いけど過去の優勝を振り返ってみてもギュンドアンの貢献度は計り知れない。
フェルナンジーニョの控えとしてナポリからジョルジーニョを獲得できなかった18/19シーズンはシーズン終盤フェルナンジーニョの怪我によりアンカーとして起用され、1ポイント差での優勝に貢献。
ストライカーのいなかった20/21シーズンはカンセロロール共に前に出ていける良さとシュート上手さが光り2桁得点。
21/22シーズンはシーズン最終戦で途中出場からの2得点で再び1ポイント差で優勝。
フェルナンジーニョの退団に伴い、キャプテンになった昨季も安定してプレーでチームを支えた。ゴール前に入っていけて得点力を発揮できるギュンドアンとスペースを作るハーランドの相性は良く、序盤からスタメンで起用されることが多かった。の戦ではハーランドが作ったスペースに上手く入り、得点をあげている。
シーズン終盤、エティハドのリーズ戦ではアンカーとして先発し、5-4-1と後ろを固める相手に手前からシュート2本を決めた。次節、敵地でのエバートン戦ではこれまた後ろを固める相手に対してボックスに侵入、技ありのシュートで先制ゴールをあげた。さらにハーランドの得点をアシスト、後半にはFKを決めるなど全得点に絡む活躍を見せた。マドリーとの試合が間に挟まる中でも3ポイントを得られたのは彼のおかげだろう。
過去にはペップと同じマンションに住んでいることが明かされ、極東のシティズンからは愛人と揶揄されていたがアンカーでもインサイドでもこれだけのクオリティでプレーできる選手は中々いないだろう。
そりゃペップもエバートン戦の前に “I love him.. I love him, I’m married but I love him.”と言いたくなるわけだ。

#14 🇪🇸 A・ラポルト 怪我を引き換えに

一昨シーズンは終盤に怪我を押して出場、苦しい台所事情の中、最終戦のピッチにも立ち、連覇に貢献した。
だがその怪我の影響で昨シーズンは開幕から数試合は欠場。その間にアカンジやアケが対人の強さやスピード面を活かして信頼を掴んだことでラポルトの出番は減少。
リーグ戦では数少ないスタメンでの出場だったノッティンガム・フォレスト戦でスピード面の弱さを露呈して以降は更に出番を減らした。
CL準々決勝・バイエルンとの2ndlegではアケが試合途中に負傷したことにより、LSBとして途中出場。翌週のアーセナルとの大一番におけるLSBの人選が注目されたが結局指揮官が選んだのは左利きのラポルトではなく、アカンジだった。
同じ左利きのグヴァルディオルの加入や29歳という年齢もあり、サウジアラビアへと活躍の場を移すことになった。
もし一昨シーズンラポルトが無理をせず、治療に専念していたらラポルトは今もシティでプレーしていたかもしれない。だがもしラポルトが最終戦出場していなければルベンもウォーカーも欠いたバックスではヴィラに勝つのは難しかったかもしれない。
だからこそラポルトの幸せを願ってやまない。例えユニホームの色が違ったとしても...

#26 🇳🇬 R・マフレズ 魅惑のレフティー

昨シーズンの選手名鑑でもマフレズはスロースターターと書いたがやっぱり序盤は中々調子が上がらなかった。
調子が上がらない中で迎えた10月のCLドルトムント戦ではPKを自らゲットするも失敗。
しかしながら手袋をつける季節のマフレズは頼りになり、12月から1月にかけて3試合行われたチェルシー戦では全試合でゴール、内2試合ではFKを決めるなどの大活躍だった。
また疑惑の判定もあり、敵地でユナイテッドに敗れた後のスパーズ戦では前半に2点を先制される苦しい展開の中、後半は全得点に絡み、4-2での逆転勝利に貢献した。
3月に入るとフォデンがRWGで結果を残したため、ベンチスタートも多くなったがFAカップの準決勝ではハットトリックを達成した。
だがCL準決勝のマドリー戦や決勝のインテル戦などではベルナルドがスタメンに選ばれ、攻守で躍動。20/21シーズンにチームを初のCL決勝に導いた男の序列はやや下がっていた。
2022年の7月に契約延長を発表していたので残留が基本路線かと思っていたのだがサウジブーム到来で5年間過ごしたチームに別れを告げることとなった。
個人的には移籍1年目の18/19シーズン、シーズン序盤はスタメンで出ていたものの中盤くらいからスタメン出場が減っていた中で最終戦に右足で決めたゴールが忘れられない。

#今シーズン雑感

開幕から数試合を見ているとギュンドアンとコバチッチの持ってるものの違いが出てるように思われる。
コバチッチは主にロドリの横やCBの脇でサポートをする後方支援に長けている。だが一方でギュンドアンのように適切なタイミングでハーランドの空けたスペースに入り、ヘディングで点を取ったり、マイナス方向で待ってヒットすることは得意ではない。それによって何が起きるかというとコバチッチの分をウォーカーが上がってRWGは絞る形を取っている。つまりグリーリッシュ、ハーランド、アルバレス、ベルナルド、ウォーカーの5人で5レーンを取っているのだ。一見これでも上手くいきそうではあるがうちのウォーカーにクロス精度を期待するのはおかしな話であり、デ・ブライネ負傷によりハーランドが欲しいタイミングで最高級のボールを供給してくれる存在もいないという事態に陥っている。
なので今年のシティはシーズン序盤からギュンドアンとデ・ブライネ不在による問題に立ち向かわなくてはいけなくなっている。
地味だけど後ろのサポートもしつつ、前衛で点も取っちゃうギュンドアンって実は凄かったんだね。たかが愛人、されど愛人である。
この役割はヌネスも試されるだろうし、更にはIHにフォデンを使うということもあるかもしれない。そうするとグリーリッシュ、フォデン、ハーランド、アルバレス(デ・ブライネ)、ベルナルドという夢の5人が共演するわけだがそうなるとフォデンが守備時にロドリの横を埋めなくてはならない。中央での守備強度と機転の利き方をフォデンが持てるかどうかだろう。
えっちょっと待って、アンカーの横を守れて前に出て行って点を取れる人ってベリンガ...

その話はやめておこう。
すき焼きやしゃぶしゃぶをするのにA5ランクの松阪牛があればいいに決まっている。
松阪牛なきシティではフィリップスなんかがIHでハマってくれると嬉しい誤算なのだが、プレーシーズンを見る限り厳しそうである。

#最後に

D・シルバ引退。7月にスペインとシティのEl・Magoの引退が発表された。これでまた1人、ペップシティを知る選手がユニホームを脱いだわけだが彼のシティでの最後の試合はコロナ禍でのCLリヨン戦だった。
コンパニが退団し、CBは怪我人が相次ぎ、前線も決定力を欠いたチームではCL優勝という最高の花道を作ってあげることはできなかった。それでもその前年はコンパニ、アグエロと共に国内3冠と間違いなく歴史に残るシーズンを送ることができた。
それから4年、ペップシティは唯一足らなかったCLのタイトル獲得のため、試行錯誤の旅に出た。そして遂に昨シーズン、あの横に大きなトロフィーをマンチェスターに持って帰ることに成功した。
コンパニやシルバやアグエロと一緒にCLは取れなかった代わりにルベンが新たなリーダーとしてバックスに君臨し、フォデンは同じアカデミー出身でマンチェスターを飛び出たサンチョやブラヒム・ディアスよりも先にファイナルの舞台に立った。
ウォーカーやストーンズといった古参組はシティのバックスを支え、グリーリッシュやマフレズはビッグマッチでも仕事ができることを証明した。ロドリは世界最高のアンカーとして成長し、ベルナルドはベルナルドであり続けた。遂に獲得された怪物・ハーランドはたった1年でバロンドール一歩手前までくる活躍を見せた。ペップが惚れ込んだギュンドアンとデ・ブライネが指揮官の頭の中に描く映像をピッチで表現し、CL優勝のセレモニーでは彼ら2人がペップの脇にいた。
Twitter界隈ではシティにはドラマがないとかつまらないとか言われているだろうが本当にそうだろうか?
自分には7年という長い月日を経て1つの大きな物語が終わったような気がしてならない。
昨シーズン優勝が決まった後にシティ公式に挙がっていた動画の中で指揮官は「何かを勝ち取るために1番大切なことはそれに値するかどうかだ」と語っていた。
7年のペップシティの歴史の中で5回のリーグ優勝、内1回は国内3冠、内1回は真の3冠。これからは否が応でもこの偉大なチームや成績と比べられることになる。
「CLというタイトルを再び取るに値するかどうか」今度はその物語が始まるのである。
3冠を達成したチームだからこそまた最高の景色が見れると信じて今シーズンも小さな画面と睨めっこしようと思う。


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