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Loop our hours

似たようで。

でも 違うんだ。

「おはよう。今日の気分は?」

穏やかに問い掛ける。

「そうだなぁ…コーヒーかなぁ…」

瞳を擦りながら 寝惚けたままの感性で 君は きっと伝えてる。

それだけは 分かる。

でも 今日の君にドンピシャなシロップとミルクの黄金比までは 見えない。

それでも 求めてしまうほどには 愛してるんだろうな。

何度も 迎えた朝だ。

大丈夫。

気に入ってみさせる。

「…どう? 今日の塩梅は?」

雰囲気と体調の感じを見て 黄金比を目指した。

「最高!…と言いたいところだけど ちょっとだけ シロップが少ないかな笑」

悪びれずに 屈託なく 告げられた。

まぁ 慣れっこなんだけど。

未だに 黄金比には 辿り着けないでいる。

辿り着いたら それは それで 何か残念だから 寧ろ このまま 試行錯誤の日々なほうを望んでるんだけど。

「自分で足しなさい笑」

仕方ないなぁと言わんばかりに 拗ねた顔をして シロップを真剣な表情で足している君を 再愛した。

視線が絡む。

どうやら ずっと見詰めていたのが バレたらしい。

これすら 日常なのだけど。

しばらく 見詰め合って 視線をティーカップに お互いが落として 微笑みながら 1口を交わす。

桃菜(もな)は ニヤけている智(さとし)を疑問視していた。

智は 目の前に居てくれる愛しい存在を ただ 心の中で 抱き締めていた。

湯気の中で キスをしたのだろう。

そんな気がしてた。

「何よ?」

桃菜(もな)は智(さとし)に 分かっているニュアンスを含めたまま 投げ掛ける。

「分かってるくせに笑」

智は また 微笑んだ。

「うるさい。」

素直じゃないなぁ。

「ドライブするんでしょ?」

昨日の夜の会話を掘り起こす。

「プレイリストは任せて!…運転は お願いします…」

徐々に デクレッシェンドの音色を奏でる桃菜の声。

それすらも またまた 愛おしい。

「メイクしてくる。」

楽しげな後ろ姿を洗面所まで 見届ける。

(今日は どこに行こうとしてるのかな…桃菜は。)

メイクをしている桃菜の後ろを通って お風呂に入るんだけどね。

「お先に。」

ちょっとだけ イジワルしてみたりする。

「まだ リップ塗ってないから待って!笑」

鏡の前で 慌てている。

「しゃあねぇなぁ…じゃあ 桃菜が リップ塗り終わるまで プレイリスト考えておくわ笑」

もう1回。

「私も考えてるから そっちも待って!笑」

「はいはい。」

身支度を整える。

といっても 定例化した持ち物には 中々 変化は訪れないもので。

10年くらい使い古した長財布をジーンズの右後ろのポケットに突っ込んで。

家の鍵と車の鍵を 左後ろのポケットに納めて。

タバコ入れと吸い殻入れのセットを 左ポケットに押し込んで。

最近買い替えたスマホを 右ポケットに添える。

お気に入りのパーカーを着て また 椅子に腰掛ければ 戦闘態勢は バッチリなわけで。

「準備出来たよ! 行こ!」

うん。

今日も 元気いっぱいで 麗しい。

車のエンジンボタンを押す。

シフトレバーを『D』に流し込む。

「決めた?」

スマホを操作する桃菜へ 視線を伸ばした。

「今日は『EVERY LITTLE THING』の日だわ笑」

「そうなのね笑」

『Fragile』が流れ始める。

本当に 出会えたことから始まったんだ。

たとえ 傷付くがあったとしても 乗り越えてこれた。

それは 紛れも無く 桃菜のおかげだろう。

一緒に 泣いて 悲しんで 楽しんで 喜んで。

その繰り返しで 今を生きているのだから。

「ねぇ…手 繋いで。」

「いいけど。」

右手でハンドルを握ったまま 智の左手と桃菜の右手は シルエットロマンスした。

オートマチックが 幸福を呼んだ。

お互いの好きな音量の丁度真ん中とシフトレバーをDに合わせたまま ドライブで 時間と道は 過ぎていく。

夕日が良い感じに反射して シルエットロマンチックな横顔を 撮影したかったけど 物理的に無理だから 心のファインダーを 何度も 切り続けた。

実は 朝のティータイムの後 リビングでゴロゴロしていたら お互いに いつの間にか 寝落ちしていて 現時刻は 夕方の17時半を過ぎた頃合いだった。

「美味しい博多居酒屋があるから そこにしよ?」

「いいよ。」

なにやら 俺の知らないところで お店を発掘していたらしい。

桃菜に 導かれるまま お店に到着した。

暖簾を潜る。

「いらっしゃいませ~!」

快活な店主の声が 響いた。

(桃菜が 好きそうな雰囲気だな…笑)

席に着くなり 本日 使用する材料を説明しに 女性の店員さんが来てくれた。

どうやら『レタスの肉巻き』が 本日のオススメらしい。

「何飲む 桃菜?」

「生搾りレモンサワーで!」

「同じもので!」

「常連っぽい雰囲気出してたけど 2回目なんだよね笑」

「常連じゃなくね?笑」

「だし巻き卵とハツと…何だっけ笑」

そんな他愛も無い話さえも 愛しく想える。

「そういやさ 明日 冬季オリンピック開幕するね。」

「アイススケート 絶対観ないと!」

桃菜は 学生時代にアイススケートをしていた。

最近は もっぱら 仕事漬けの日々だ。

いい息抜きになってくれたらいいと思う。

そんな話をしていたら 4種類の表情をした『レタスの肉巻き』が 降臨した。

シンプルな塩味。

お好み焼き風のソース&マヨネーズ味。

濃厚な薫りが充満するチーズ味。

変わり種チリソース味。

「だし巻き卵さ どっち派?」

すると 桃菜は おもむろに 醤油を付け合わせの大根おろしに掛けた。

「さすが…話が分かるわ笑」

またまた 他愛も無い話をしながら 今度は 時間とお酒と箸が 進む。

ひと通り 食べ終わって お腹をナデナデしていた。

「どの味が1番好きだった?…せーので言おう!」

呼吸を合わせて。

『塩!』

ドンピシャだった。

2人で 喜びと味を共有出来た。

それが何より嬉しかったんだ。

ふとした瞬間に 想い出すだろう。

朝のコーヒーを旨く淹れられなかったことも。

手を抜かずにメイクをしていた桃菜を 置いていこうと イジワルしたことも。

プレイリストを勝手に決めようと もう1度 イジワルしたことも。

ドライブの1曲目が『Fragile』だったことも。

ドライブ中に シフトレバーを置き去りにして 手を繋いでいたことも。

常連だと言い張る桃菜に ツッコミを入れたことも。

1番フィットした味付けが『塩』だったことも。

そして 桃菜の見せる表情に 魅せられていたことも。

それがいい。

いや。

これがいいんだ。

ループしているようで 何かが 少しだけ 違う この世界が。

同じモノを見て 感じているはずなのに それぞれが違う意見を持てる こんな世界が。

だから 愛に落ちたんだ 俺は。


※この作品はSIRUPさんの『Loop』という楽曲から インスピレーションを受けて 作成させていただきました。

〜あとがき〜

いやぁ…この曲 痺れますね笑

コーヒーとドライブと『君』は あたすでいうところの三種の神器である 財布とスマホと『タバコ』に類似してるのかなぁなんて 考えながら 書いておりました笑

これからのあたすは 細やかなエッセンスで みなさんにスペシャリティな時間さえも お届けしていく所存ですので 何卒 宜しくお願い致します!

我ながら 最愛のラブストーリーが仕上がったのではないかと 自負しておりましゅ!

良かったら 何度も 読んでください笑

それは 読んだ瞬間の感情や状況で 物語は その精神状態と化学反応を起こすからなんです。

嬉しい時。

悲しい時。

寂しい時。

楽しい時。

おそらく 色んなシチュエーションの中で 表情を変えてくれる作品になったと思っています。

冗談のようで 冗談じゃないこと あったりしますよね笑

アレです。

アレ笑

と こんなところで 今回のあとがきは ここまで!

じゃあ みんな まったねぇ〜。

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