壮大な夢だった。

私の住んでいる地域がいつの間にか大都市になっていて、私は欧風でカラフルな、四角くて背の高い家屋が建ち並んでいる住宅街に住んでいた。

私は友達と進路の相談をしながら、私が昔アルバイトしていた寿司屋に入った。その店は、私が働いていた時とは雰囲気が変わってしまっていて、馴染みの店長や職人が店の真ん中で寿司を握っているのだが、注文をしても何故か私の顔すら見ず、私は少し不機嫌になって挨拶もせずまま帰った。

その帰りに、郊外にある時代村みたいな場所に1人で行った。(日本武道館の辺りの雰囲気に近い)その場所は家から自転車で行けば近い場所にあって、高台になっていた。

私はその場所を憩いの場のようにして利用していた。その日のその時間はもう夕方で、着いた頃にはもう閉館時間のようだった。管理人が池の水を抜いていた。

そのとき、急にとてつもない大雨が降り出した。風もとてつもなく強かった。私は帰ろうと思って自転車に乗り、時代村までの通路である川沿いの道を通った。しかしその川が増水し氾濫しかけているのに気づいた。先程抜かれていた池の水が逆流し、川からも建物の方からも水が迫ってきていた。川は一瞬で氾濫した。

私は水が出来るだけ迫ってこない場所で留まった。しかし向かい側から自転車に乗った女性が走ってきていた。私は高台側から街まで下ろうとしており、彼女は街の方から高台に逃げてきたように見えた。

しかしおかしなことに、彼女は水の上を走ってきていた。私とすれ違う時には私と同じように地面を走っていたのだが、それまでは明らかに、水面を走っていた。

不思議に思い、すれ違った彼女を振り返る。すると、彼女のいる所には山からの水が波のように迫っており、強風に煽られていた。振り返った時には、彼女は自転車のハンドルに捕まった状態で逆立ちしていた。自転車は地面に着いたままである。

私は驚いて叫んだ。彼女もまた叫んでいた。私は一瞬の瞬きをした。すると、目を開けた時には、彼女の体は水面へ落ちていっており、そして私は彼女が流されていく姿を目撃した。次第に彼女の姿は見えなくなった。

もしも彼女が流されたあと助かったとして、間違いなく怪我をしているだろう。それにこの時彼女が携帯を使える保証はない。そう思って私は警察に電話しようとした。

私はiPhoneを取り出して、緊急通報のボタンを押した。しかしなかなか繋がらない。緊急通報のやり方が間違っているようだった。何度やってみてもできなかった。私の手は震えていた。

私は、見えない彼女の姿を追うと同時に自宅に向かって自転車を走らせた。私が走るところには水のない細い道ができていて、それはまるで魔法のようだった。


既に、彼女がどこに流されるかも想像できなかった。私は実家まで向かった。実家の電話機から通報したのだが、電話機の使い方が間違っているようで、全く繋がらない。何度もそんなことをやった。きっと私はパニックになっていたんだろう。

繋がらないが、自分も彼女を捜索するつもりで着替えた。荷物も最小限にして、母に車を出してもらうように伝えた。その間に何とか警察に電話して、目の前で人が流されたと伝えた。目撃した場所やどんな状況だったか伝えた。電話を繋ぎながら私は時代村のある場所に向かった。

そして、時代村を目指して車を走らせる中で(山道を通った)、街を見下ろした。しかし街は見当たらず、街があるはずの場所には一面、水が広がっていた。海のようになっていた。大雨で、街が海になった。

もう女性のことを探すような状態では無いのだが、パニックになっている私は、とにかく彼女を助けることだけを考えた。当然電話した警察は役に立たなかった。

山道には多くの人がいた。歩いている人は皆、大きな潜水マスクを被っていて、その姿はとても奇妙だった。見たこともないマスクだ。きっと誰かを助けに行くための装備なんだろう。だが私には、潜水マスクを被った彼らこそが、その大洪水を引き起こした正体かのような、何故かそんな不気味な存在に見えた。

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