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処女に救われた

4月、高校生になりました。現在人生2度目の高校生を謳歌してますけどね。1度目の高校生。

結局のところ母親と義父は揉めに揉め、離婚した。
弟の親権は母親にあったけど、最後まで義父は折れなかった。というのも、中国って昔の日本みたいなところがあって男の子はめちゃくちゃ歓迎されるわけよ。実は義父は中国にいた頃に一度結婚歴があるのだけどその時は女の子が生まれて、離婚しても親権は相手にあった。しかし今度は再婚相手の元に男の子が生まれて、義父ファミリー大喜び。そんなわけで親権は譲りたくないと最後の最後までゴタゴタしてました。最終的には母親が親権を得たけど。

んでまあ俺は家からチャリで15分くらいの距離にあるセブンで初めてのバイトを始めた。定時制だから学校に行くのは夜だからね。9時〜15時とかのシフトだったかな。平日は朝保育園に弟を送ってバイト行って、一旦帰宅して洗濯取り込んだり軽く家のことしてから17時には家を出て電車で学校に通ってました。

半年くらいは真面目にバイトして学校も通ったんだけど、そのうち学校で出来た友達と遊んで帰るようになった。定時制だから授業が終わるのは21時頃。京王線で新宿まで出て、何をするでもなくタピオカ飲んだりプリクラ撮ったり。定時制って私服登校だからそのおかげもあって補導されることは一度もなかった。俺はバイトが出来るようになったおかげで自由に使えるお金もあったし、とにかく友達と遊ぶのが楽しかった。そういう年頃よね。

俺が帰るのが遅くなると母親はブチ切れる。当時は一応門限もあって(23時)、それを守らなかったらマンションの下で待ち構えている母親にボコボコにされる。でも反抗期とか思春期ってそういうもんじゃん?学ばないんだよね、だから何回も同じことするんよ。そのうち平気でバイトもサボるようになったし学校も行ったふりして行かず、渋谷にある吉本無限大ホールっていう吉本の劇場で若手芸人のライブ観たりしてた。

ある日の学校帰り、いつものように友達と新宿で遊んで解散してJRの改札に一人向かってる途中、知らない男に話しかけられた。何してるの?ひま?って。普通にありがちなナンパ。友達と一緒にいるときに話しかけられたおっさんにラーメン奢ってもらったりしたことがあったし、門限を過ぎていて帰りたくなかったのもあったからついて行くことにした。相手は30代前半くらいの私服姿の男。とりあえずカラオケに行くことになって、自分は未成年で定時制の高校に通ってることも話した。カラオケには2時間くらいいたのかな。お酒を飲んで、そのあとホテルへ連れて行かれた。ホテルに連れて行かれてから急に怖くなった。だって俺、処女だもん❗まだ異性とそういう経験が一切なかった。なんなら片思い以外まともに恋愛もしたことない。ホテルに着く頃には男はそこそこ酔っていて「処女じゃないよね?」と冗談みたいなテンションで聞いてきたから正直に処女であることを伝えた。すると男は「さすがに処女はきついなぁ。初めては好きな人とする方がいいでしょ、俺寝るから帰りたかったら帰っていいよ」と言ってそのまま寝始めた。帰っていいよと言われても、もう終電はないしタクシーで帰れるほどの金もない。困った俺はとりあえず男の隣で寝た。人生で初めて男の人の隣で寝たのでめちゃくちゃ緊張した。でも本当に何もされなかった。

今思うとこの男、善人に感じてしまうな。ていうか処女ってそんなにダメなんだ!?それとも俺がセックス出来ないくらいブスだった!?まあ未成年と知っててホテル連れ込んでる時点で全然善人じゃないんだけど処女だったおかげで救われたわけです。

起きると男はいなくなってて、代わりにテーブルの上に1万円が置いてあった。

え!ラッキー!ただカラオケ行って遊んだだけなのに1万円も貰えた!そのくらいに考えたと思う。

携帯を見たら母親から鬼電と爆ギレのメールが来ていて途端にゲンナリ。帰れねえじゃんと思った。とりあえず支度して、日中の歌舞伎町を歩いて駅まで向かう。日中なら母親は仕事で家にいないはずだと思ったので一度家に帰ることにした。

家に帰ったら案の定誰もいなかったので2、3日分の荷物と自分のバイト代を貯めていた通帳(8万くらいしかなかったけど)を持って再び家を出た。母親にはしばらく友達の家に泊まるから帰ってきませんとメールを送った。すぐに鬼電が来たけど全て無視した。そのうちメールで携帯止めるからとも来たけどそれも全部無視。

学校の友達の家に行って、親と揉めて家出したからしばらくいさせてほしいとお願いした。ヤンキーのミチ。この子とは高校に入る前から前略プロフ(懐かしくて死ぬ)で繋がっていて、4月からよろしくね〜と絡んでたし実際入学してからも仲良かった。学校帰りによく遊んでたのもこの子。中学時代に万引きして捕まって鑑別歴のある世田谷ヤンキー。ヤンチャしまくっていて入れる高校がなかったからとりあえず定時に来たという感じ。他に頼れる相手がいなかったし、何度か泊まったこともあったからミチしかいないと思って行くと快く家に入れてくれた。

夕方になってミチと一緒にチャリ2ケツで学校に行き、2ケツで帰る。俺は高校生になって髪を染めるくらいはしていただけでヤンキーとは程遠かったが、ミチと一緒にいると自分が強くなった気持ちになる。ミチは知り合いも多いし、自分とはまた違った人種ではあるがそれが新鮮でとにかく楽しかった。そのうちドンキで買ったブリーチでミチに髪を染めてもらって、ピアスも開けて、なりきりヤンキーそのものになっていた。普段着はプレイボーイのスウェットにキティサン。いかにもパルティで染めた汚い金髪頭でマルメンを吸う。振り返れば火が出る程恥ずかしいけど、当時は本当に楽しかったんだよね。若さって無敵で恐ろしい。

ミチはヤンキーではあったけどちゃんとバイトもしていて、酒タバコはしても絶対に薬物はしない。周りには悪い先輩がたくさんいたにも関わらずそこらへんは線引きのあるヤンキーだった。本人曰く鑑別に行ったことでそういうのは懲りたらしい。俺がなりきりヤンキー以上に道を逸れなかったのはミチのおかげだと思う。

ミチの家で2週間くらい過ごしたかな。徐々にミチの両親の目がきつくなってきた。そりゃそうだ、人が一人増えればその分光熱費もかかる。食事はコンビニで買ってたにしても迷惑なのは間違いない。しかも朝から昼までミチはバイトに行くのにその間俺は寝てるわけだし。母親から捜索願いを出すぞとメールで言われたのもあって、帰ることにした。

家に帰ってすぐ母親と今世紀最大の大喧嘩になった。弟は保育園に行ってたからいなかったけどたまたま仕事が休みだった母親が家にいたのだ。最初はとにかくサンドバッグに徹した。殴られ続けて唇は切れるし後になってめちゃくちゃ痛いんだけどああいうときって全然痛み感じないんだよね。単純に小さいときから殴られ慣れてるのもあったのかもしれないけど殴られてるときってすごい冷静で、もう一人の自分が天井から殴られてる自分を見てるみたいな感覚になる。お前みたいなクソガキ産んだのが間違いだったと言われながらボコボコにされたのが悔しかった。クソガキに育てたのは誰だよと思わずにいられなかった。だから部屋中の家具を倒して滅茶苦茶にして、携帯も折られそうになったけど壊したら殺す!と言って暴れてそれだけは死守した。

今度はボストンバッグに1週間分くらいの荷物を詰めて家を出ることにした。もう二度と帰ってこない、そのくらいの気持ちだった。

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