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思えば貞操観念なんて元から持ち合わせていませんでした

夏休みに入ると学校がない、それをいいことに母親はほとんど帰ってこなくなり家のこと弟のこと全てを俺がするようになった。お金だけは定期的に渡しに帰ってきていたので困ることはなかったけど、遊びたい盛りに友達と遊べないフラストレーションでもやもやしながら過ごしていた。一瞬でも今度こそ変わってくれるかもと母親に期待し、ばーちゃんちから自宅に戻ったことを後悔した。やっぱりこの人は変わらない、子供よりも男や自分のことが最優先なのだ。

ばーちゃんに電話で助けを求めたこともあった。もう弟の面倒を見るのは嫌だ、やっぱり帰らずばーちゃんちにいればよかったと。するとばーちゃんの方から母親に連絡がいき、なんで告げ口したんだと心底機嫌の悪い母親が帰ってくる。告げ口のつもりはないが、機嫌の悪い母親に帰ってこられるのは困るのでそのうち身内にすら助けを求めるのをやめた。全部自分が我慢してれば済む話だと。ばーちゃんは母親がいないことを知り夏休みの間、何度か家に来てくれたことがあったけどだからといって問題の解決にはならなかった。

2週間か3週間近く弟と2人で生活していたんだけど、ある日帰ってきた母親にしばらく弟を父親に預けることになったと話をされた。

離婚してからも弟と父親は定期的に会ってはいたのだけど、父親が夏季休暇で中国に帰省するからそれに弟を連れて行きたいと言い出したらしい。母親は母親で家にいないもんだからあっさり承諾。という流れ。当時弟2歳か3歳くらいだから全く覚えてないと思うけどね。

突然自由になった俺はこれまでのストレス発散とばかりに遊び歩いた。新宿の747でカラオケオール中に私服警官に突入されて補導されたり、友達と新宿東南口で朝まで語り明かしたり、酔って死んだように眠るおっさんの財布をパクって逃げたり、下北でナンパされた大学生にホイホイついていったら実はルームシェアしていてついていった男じゃない奴とセックスすることになったり、本当に最高に最低な思い出ばかりです。しかしバイトを辞めた俺は次第に金に困るようになる。

ある日ミチと遊んでいたときのこと、ミチの同じ中学の友達だというサキと知り合った。ミチは地元で顔が広いからどこへいっても友人がいたし、一緒に行動するだけど必然と知り合いが増える。今となっては連絡取る友達なんてほとんどいないけど、当時はわりと陽キャだったので知らない人ともすぐ仲良くなれる人間だった。

サキはミチとは違ってヤンキーという感じではなく、ヤンキーはもう卒業したちょいお姉さんぽい雰囲気のどこか品のあるギャルだった。そんでめっちゃジャニオタだった。高校はすぐ中退して通っておらず、普段はバイトもしてないという。趣味趣向は全く合わなかったけどお互いに家庭環境が残念なことからどこか通ずるものがあったように思う。暇だったのもあってそのうちミチがいなくても2人で遊ぶようになった。

サキは同い年なのに異様に金を持っていて遊ぶときは毎回奢ってくれた。バイトもしてないのになぜ?と不思議に思った俺が訊ねると、ネットで知り合ったおっさん相手に使用済みのパンツや靴下を売って稼いでるという。ちなみにミチもこの件は知っていたけど常に彼氏がいるような地元限定ヤリマンだったのでそういうのとは無縁だった。俺はそういう世界があるのはなんとなく知っていたけどドラマや小説の中の話だと思っていたから本当にあるんだなぁと驚いた。コンビニバイトを辞めて金に困っていたのと、そういうことに対する嫌悪感がなかった俺は興味津々でサキに根掘り葉掘り質問した。そして話を聞くうちにそんな簡単に稼げるなら自分もやってみたいと思うようになった。

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