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― 曇リ ノチ 晴レ ―

不思議な夢を見た。たまに見るのであるが、ふと、書き残し、報告しておきたくなったので、ここに記す。何故、そうなったのか、そうゆう自分になったのか、自分でもよくわからない。
 
雨が降っていた。何か、用を済ませた私は、古びた建物から出て車に乗り込もうとしていた。目の前に現れたのは、白のスカイラインGT‐R。ちょっとまった、私はこんな車持ってない。今時MT車、しかも型は古そう……中古で買ったのか?私?
とにかく、これに乗らないことには移動できないし、夢の中の話は進まない、ここは流れに任せて乗り込む。しかし、我ながらずいぶんと際に停めたものだ、茶色い水が勢いよく流れる側溝の直ぐ横ではないか、乗り込むにも実に乗り辛い。
そんなこんなで出発する訳だが、MT車は久しく乗ってない、クラッチを上手く合わせられず、スムーズに発進できない、そうして駐車場をでる際あわや右からの直新車と接触しそうに。互いに一旦止まり、向こうが目の前を通り過ぎると、改めて駐車場を出た。
 
雨がより一層酷くなってきたので、ワイパーを動かすが、これがまた全然動かない。ダイヤルを回してみても、一回、一回、とゆっくりとしか動かない。この雨の中、これでは困る。視界不良だ。案の定、前方がよく見えなかったせいで、私は咄嗟の出来事から進路を変更せざるを得なくなる。気が付けば同じ道を一周していた。いつの間にか、雨は止んでいた。
 
そのまま車を走らせていると、突然、空が晴れ渡った。郊外であろうか、ところどころ田畑の見受けられる、幾つものS字カーブが連なった曲がりくねった道を、そのまま、流れのまま行く。一時停止の交差点を一つ、二つと曲がり、電車など全く通っていないような踏切を越える。
最後のカーブを曲がると、突然、目の前に周囲を木々に囲まれた雑草だらけの空地、駐車場であろうか、そして右手に廃墟のようなマンションが建っていた。整然と並ぶベランダに、数人の人影。その内の二人、女性に見える、ちょうど上下に並び立つその姿はハッキリと見えた。というよりも、見ようとした。気になったからである。上の女性が何かを叫んでいた。
「私も私の母も、私たちは皆このような目に遭い、苦しんでいる。何とかしてほしい。」
このような内容のことだった。
内容が飛んでしまいそうになる程に、その姿に衝撃を受けた。火傷をしたかの様な赤黒い肌に、バサバサの長い黒髪、それはその場所の荒れ果てた様を表しているようであった。そして彼女たちのその面立ち、日本人離れしている。外国人、移民や難民なのだろうか、いや、それとも何か違う、確かに、そうゆう外国人だと言えばそう見えるだろうが、何かが違う。うまく言えない。だが違和感を覚えた。
彼女たちは恥ずかし気にしながらも、何かを訴える、悲しげな目をこちらに向けた。
 
ひとまず、そのまま車を進めることに。棟を結ぶ連絡橋の下を潜ると、私は何故か車を降りた。車の一部、いや、車から伸びた紐状のもの、何だこれは、何かのケーブルか、それがオブジェの様に置かれた赤錆びた鉄屑の塊に引っかかっていた。
取り外そうとすると、恰幅のいい男性が、にこやかな顔でこちらに近づいてきた。肌は日焼けした様に黒いが、先ほどの彼女たちの様な焼けただれたものではない。外すのを手伝ってくれるそうだ。すると、何故か私は「外してくれるなら、車はあげるよ。」と言い放った。どうしてこんなことを言ったのだろう、と、夢の中でも不思議に思ったが、直ぐに、まるで異国のスラム街の様に見える此処の有様から、自分が持っているよりも此処の人たちが持っていた方がいいのでは、きっと此処の人たちの方が必要だろう、という思いも浮かんだ。
男性は「いいのかい?ありがとう!」と非常に喜んでくれた。その様子を見ていたのか、別の男性も近づいてきてお礼を言ってくれた。ふと、私はここが何処なのか、どの地域なのか気になった私は、彼らに尋ねた。
「ここはM市かい?」
「いや、ここはN町だよ。」
「そうなんだ。でも、N町でもM市よりの端の方では?」
「そうだね。確かに端の方だよ。」
そこへ辿り着くまでの景色、その雰囲気、風情から、知っているとある町が浮かんだのだ。確かに、あの町、あの辺りはこんな感じかもしれないと思い、私は納得した。
 
そのようなやり取りの後、改めて此処がどのような場所か気になった私は、辺りを散策することにした。よく見ると、建物のあちらこちらに子供たちの姿が見える。遊んでいるのだろうか。皆、興味深げに私を見る。建物の中はまさしく廃墟であった。日が差し込まないところもあり、全体的に薄暗い。ふと、ここで私は自分が裸足であることに気づいた。コンクリートのヒンヤリとした感触を足裏に受ける。所々にある水溜まりや、藻や苔であろうか、それらを避けながら奥へと進む。緩い坂になった場所、その先に特に暗い所があったので、そこへと向かったが、あったのはコンクリートの壁、行き止まりであった。
引き返し、手前に横道の様にあった階段を上ってみる。その先には開けて外の景色が広がる、大広間の様な場所があった。そこには一人の少女がいた。私に気付き、少しの間こちらを見ていたかと思うと、奥へと駆け出した。しばらく晴れ渡る景色を眺めていた私は、穏やかな風を浴びると、彼女の跡を追う様に奥へと歩み出す。
 
……夢はそこで終わった。
あの夢、あれはなんだったのだろう。
あの場所は、そして彼らは……。
 
……実は思い当たる節があるので、今度そこへ行ってみようと思う。後日談があれば、また。

書き終わって、ふとこれが浮かんだ↓


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