見出し画像

アナキン・スカイウォーカーは何故ダース・ベイダーに成ったのか Ⅰ

スターウォーズ・ファンは勿論、そこまで詳しくなくても、エピソード5での「あるシーンとそのパロディ」で広く知られていると思いますが、ダース・ベイダーはエピソード4~6の主人公ルーク・スカイウォーカーの父「アナキン・スカイウォーカー」が暗黒面へと転向した存在(姿)です。

エピソード1~3において、その過去が描かれ「エピソード3 シスの復讐」において遂に暗黒面へと転向、ラストにあの全身黒尽くめのサイボーグの姿と成ります。

ポイントなのは、サイボーグ化したから「シスの暗黒卿」に成ったのではないということです。その前の姿、生身の状態で、すでにシスに転向していたということです。シスもジェダイも、そういう名称の教義、ある種の宗教なので、成りたければ掟や教義を守ったり、その為の修練を積めば普通の人(ヒューマノイド)でもエイリアンでも、サイボーグでも成れるわけです。

では、何故、アナキンはジェダイからシスに乗り換えたのか(まるでケータイ会社みたいに……)。Ⅰでは、アナキン自身から探ってみましょう。

まず、アナキンがシスへと転向した理由、それは、「愛する妻」であるパドメを死の危機から救いたかったからです。

……そうです、アナキン、(作品内における)当時のジェダイの教義では禁止されている結婚をしています(つまり、この時から既にジェダイの協議・掟を守っていない。まあ、実は他のジェダイも守っていないのですが……)。しかも、妻であるパドメは元老院議員、政治家です。銀河の平和の為、調停役として活動することも多く、また、オンブズマンとしても機能していたジェダイが、本来ならば特に、一線を置いておかなければならない相手ともいえます(調停役、それもフォースという不可思議な力を用いての心理操作や高度な戦闘能力を有する者たちが、どちらかに肩入れ、つまり『癒着』していたとしたら、不公平どころか理不尽とも言えますね……)。

ある夜、アナキンは、パドメが苦しみの末に死んでしまう夢(予知夢)を視ます。そのことで、アナキンは苦悩します。前作「クローンの攻撃」にて、愛する母シミの危機を同じように予知しながらも救えなかったアナキンは、何が何でも、その最悪と言える未来を回避したかったのです。

が、秘密裏に結婚しているので、師であるオビ=ワンをはじめ、なかなか周りに相談できない。誤魔化し誤魔化しヨーダに相談するも、「死を受け入れろ」と言われてしまう。そこへ、正体はシスの暗黒卿であるパルパティーンが、「シスの業に死を克服するものが有る」と誘惑するわけですが……。

まず、私は、未来視、予知にこそ落とし穴が在るのだと考えています。

私は、「もし、未来を視たのなら、その未来は変えられない」と思っています。何故なら、未来を「視た」という過去形である、つまり、未来を視るという行為や行動、出来事が「過去のもの(こと)」になるのだから、それを変えるというのは、未来ではなく過去を変えようとすることなのではないか―そこへ考え着いたからです。

未来は「まだ」不確定なものであり、だからこそ変えることも出来るだろうと思います。

しかし、当たり前ですが、過去はすでに確定してしまったことです。変えることは出来ません(たとえ、タイムマシンが在ったとしても、出来ないと考えています。それはまた、別の機会に)。

皮肉なことに、アナキンの母、シミ・スカイウォーカーが愛する息子との別れ際に、こう説き伏せ(自身にも言い聞かせ)ます。

これが運命なのよ、アナキン。運命は変えられない。癪だからといって、陽が沈むのを止められないように。

ここで、ものすごくザックリな話ですが、太陽が沈むのは、そうゆう仕組みで天体同士が作用しているからですよね。つまり、沈む(様に見える軌道で動く)要素は過去に既に決まっていると言えます。もし、その要素に何らかの変化が有れば、その先の軌道も変わるでしょう(そう聞くと、じゃあ、日没を止められるのでは?と思いますよね。そうです。それを行うだけの何らかの力が在れば、止められます。ただし、今ある世界⦅主に周囲の惑星⦆が崩壊することは必至でしょう。ずっと日が昇ってたり、ずっと日が沈んでいるのですから)。

こう見ていくと、アナキンは「母に言われた言葉を忘れ、日が沈むのを止めようとした」とも言えます(師であるオビ=ワンやヨーダはおろか、自分の母であっても、年長者の言うことをなかなか聞かないのは、反抗的な面がよく出てますね)。

アナキンの失敗は、日が沈むことに囚われ、その前後のことを意識しなかったことにあると考えています。

日が沈む前は日が昇っています。日が沈んだ後は、特に何事も無ければまた昇ります。当たり前ですが、重要なことであると思っています。「日が昇らなければ、日が沈むとは思わないだろうし、同じように、日が沈むと思わなければ、日が昇るとも思わないだろう」そう考えているからです。対に成っていることも大事ですが、ここでは、それが繰り返しているのなら、その前後がある(昇→沈→昇)ということが、より大事です。

陽が沈むのを止めるには、沈みかけているのを止めるのではなく、昇らなくすればいい、という方法もあるからです。昇らないのであれば、沈みようがありません。また、日が沈んだ後、どのような夜が訪れるのかは、実際になってみないと判らないと思います。どのような夜かは、日が沈むという太陽の話とはまた別の話になるからです。今度は太陽が、訪れる夜の要素の一つになるのです。訪れる夜は、満点の星空かもしれませんし、曇り空かもしれません。あるいは嵐の夜になるかもしれません。

これは予知とその前後の話になります。

パドメは苦しんでいる。そして「死の危機に瀕している様に」視える。アナキンが視たのは、実はその光景だけで、パドメが死んだ姿や死体は視ていません。また、母シミと同じ様な状況とも限りません。

つまり、苦しんだ後のパドメがどうなったか、そもそも、何故パドメはそれ程に苦しんでいるのか、アナキンは全く知りません。あくまでも、パドメの死の危機を予知しただけです。アナキン(ベイダー)の危機を察知したパルパティーンが現場に赴くと、まだアナキンは生きていました。だからサイボーグに成ったわけですから。この時、パルパティーンも「おお。まだ生きておる」と言っているので、アナキンの生死は危機の予知の時点では不明瞭なものだったのです。

物語のラスト、アナキンのサイボーグ化手術とパドメの出産が同時に執り行われます。アナキンは負傷の苦しみの末サイボーグに成り、生きながらえ、パドメは、アナキンが暗黒面へと転落したことによるショックと出産の苦しみの末、息絶えます。

「そなたの怒りが、あの者(パドメ)を殺したようだ」

パルパティーンのその言葉にアナキンは絶望し、悲痛な叫びを上げます。自分が不確定であった、予知の前後を決めてしまったのです。愛する妻という太陽を沈める原因は、自分自身であった。そして、その後訪れる夜には星の輝き(希望)は(この時点では)無く、一切の暗黒となってしまったのです。此処にきて、アナキンはようやく自身の転落を受け入れ、「完全に」ダース・ベイダーとなったのです。

アナキンは、余りにも予知に、そして過去の出来事に囚われすぎたと言えます。

頂いた支援に関しましては、制作活動並びに慈善活動への支援・寄付に使用していきます。