分割②「出版社内容情報」で読むK-1ダイナマイトーー舞人を中心にした物語流れの把握

元記事が長いので見出しごとに分割しました。

ここは舞人を中心にした物語流れの把握 の項の抜き出しです。

「K-1ダイナマイト」は登場人物の文脈が複雑に絡み合う物語であるが、単行本各巻の「出版社内容情報」のあらすじは主人公・大奈舞人の一人称形で紹介され、舞人の活躍の要点を押さえて展開がまとめられている。

物語の流れは以下のようになる。

【第1巻】〔主人公・舞人の紹介、K計画への参加〕。格闘経験ゼロだが舞人は最強の男を目指している。空手をはじめた、という導入。スキルアップのためのK計画への参加という第一関門が待ち受ける。【第2巻】はK計画の話題は一旦脇へおいて〔C4とニトロの紹介・具体的な目標の設定〕がされ、舞人とC4のライバル関係にニトロが絡んでくる三角関係的な構図が提示される。「目のハンデ」をめぐったC4とニトロの因縁も物語に絡むことを予感させる内容である。また、《K-1ジュニアリーグ(のちジュニアGPに呼称変更)に出場して優勝すること》が最強になるための具体的な達成目標として示され、物語の筋道が立つ。

【第3巻】〔K計画での事件勃発〕。K-1ジュニアGP出場までの鍛錬で参加している合宿(K計画)に仮面の男というキックボクサーが現れて妨害を受けるが【第4巻】でその正体が親友の地雷だとわかり対決。(〔K計画:親友との戦い〕

【第5巻】でいよいよK-1ジュニアGPに出場。舞人の過去が明かされる。空手に興味を持つきっかけとなった大先輩・下瀬が空手を馬鹿にするようになり別の格闘技の使い手になっていた、というショッキングな事実に直面。彼との試合〔K-1ジュニアGP:先輩との空手の威信をかけた戦い〕での勝利を決心。【第6巻】までこの話題は続く。この時点で舞人は必殺技「G・G」を編み出している。

【第7巻】ではライバル・C4の試合の話題。〔K-1ジュニアGP:ニトロとC4の対決〕はライバルとの三角関係で絡んできているニトロを倒して、C4が勝ち進むことができるか? が舞人にとっては重要なことだ。彼らの試合は第2巻で予告されていた「目のハンデ」の因縁をめぐる対決でもある。また、ニトロがその一員であると言われて「殺人格闘集団・ビースト」の名がやっとここに登場する。

【第8巻】では、ビーストがC4を誘拐する急展開〔K-1ジュニアGPとん挫:誘拐されたC4の救出〕。舞人はビーストの本拠地へ向かい、アルティメット・マイト・ザ・グレート(正道空手奥義『天魔』)で番人を倒す。突如タクマの名とB×B×Bの復活が言われ、なかまがみんなやられてる、ライバルは戦闘不能で見守っているという極限状況に。舞人はタクマに、B×B×Bに勝たなければならない。

 *

このように《舞人が最強の男を目指す物語》というのは、素人からはじめて空手を鍛錬し、選手選考のための強化合宿(K計画)に参加し、代表選手としてK-1ジュニアGPに出場してライバルC4と優勝をかけて戦う、という流れだ。

「G・G(ガトリング・ガンキックス)」「アルティメット・マイト・ザ・グレート」という必殺技の体得で技術の向上が伺え、技量が試される局面の戦いにおいて倒し超えるべき存在として悪に手を染めている親友や心変わりしてしまった先輩(※ 元の文で地雷を「親友」、下瀬を「空手の大先輩」と呼称している)といった舞人にとって近しい人物の配置がドラマを盛り上げている。

目標であるC4との対決における邪魔者としてその兄・ニトロの存在が序盤から影を落としていたが、予告されたとおりK-1ジュニアGPの舞台でC4とニトロが対決することになる。舞人が主導して解決できない問題に阻まれて、目標達成を挫かれる危機だ。

ここで登場する「殺人格闘集団ビースト」により、いよいよ急展開。ビーストにC4がさらわれてしまう。舞人の具体的な達成目標(=大会のチャンピオン)が奪われ、《舞人が最強の男を目指す物語》はとん挫してしまう。

そして、とって変わるように突然現れた人物・タクマとB×B×Bの復活が話題に浮上。

ーータクマ誰だ? B×B×B ってなんだ?

よくわからないけれど殺人格闘集団に関わることだから、いかにも危険。それでも打ち破りC4を救出しなければ舞人がC4と戦うことは永遠に叶わない。『K-1ダイナマイト』は本来の《舞人が最強の男を目指す物語》に物語の軌道を戻すための戦いが最後に展開されることになる。

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