分割③「出版社内容情報」で読むK-1ダイナマイトーー「出版社内容情報」にあらわれる物語の特徴

元記事が長いので見出しごとに分割しました。

ここは「出版社内容情報」にあらわれる物語の特徴 の項の抜き出しです。個別記事にして若干ゆとりができたので、もくじ をつけたぜ!

この項では…

「出版社内容情報」はその性質上、限られた文字数で単行本を紹介し購買者の興味を惹くために最低限の情報で詳細を省いた描写がされている。これがミスリードを誘い、実際の内容との間に齟齬が生じる場合もある。ここでは記載されている情報について単行本の内容と比較しながら、「出版社内容情報」で特徴的といえる点を指摘していきたい。

前項(上記)で全巻を通した流れと読み取れる情報をまとめた。これに補足するかたちで以下に述べる。

〔1.ビースト登場のタイミング〕

際立った特徴としては、ビーストに関わる情報が7巻まで明かされないところだ。仮面の男との関連も言われないため、地雷が個人的に悪事を働いていたかのようだ。

ビーストという大悪は終盤になって付け足された設定に読める。仲間を全滅させるほど強いタクマなる人物がいきなり登場するし、「復活し」たとされるB×B×Bが奥義の名とわかるようには書かれていない。最終巻はこれまでの《舞人が最強の男を目指す物語》から逸脱する急転直下の展開とあって、輪をかけて荒唐無稽な結末であったのでは? と憶測するところである。

実際は、1巻からその正体がビーストのタクマが正道会館の門下生として登場(この時点ではシルエットのみ)しており、物語の筋に絡んできている。「K計画」の真の目的こそがビーストとの闘いに備えたものだった。

B×B×Bもまた、おそらくは、舞人のアルティメット・マイト・ザ・グレート(=天魔)の対として当初から構想上あったものではなかったか。2巻の「四天王、現る!!」でタクマが披露した空中での高速の足さばきはB×B×Bを一連の動きとして成立させる要の技術である。

しかし、この作品が初期構想から大幅な改修を余儀なくされただろうことは読者からも想像に難くない大事件が起こった。既読者は知ってのとおり連載中に舞人の師匠役で本人として登場していたアンディ・フグが病気で亡くなった。

月刊連載作品のエピソードが完成してから雑誌に掲載されるまでの時間差がどれぐらいあるのか不明だが、アンディの死は5巻収録の「最強の格闘技」が掲載されたあたりだった。展開が見直されたのはその数話先からだろう。

アンディが本来絡むはずだったことを考えるとビーストの決戦に至るまでのエピソードは違うものだったと思われるが、それでもB×B×Bおよびビーストとの対決は当初の構想から予定されていたに違いない。たしかに急転直下ではあるものの「出版社内容情報」ほど物語を露骨に転じる構成ではない。

〔2.キックボクサー〕

アンディの死による影響を感じさせるのはキックボクサーの作品での扱いだろう。

作品序盤では、キックボクシングをとりたてて悪と関連づける描写がある(翔矢の父親の因縁の相手など)。一方で、正体を隠されているがピーター・アーツらしき人物がC4とニトロの師匠として登場しており、作品上でのキックボクサーの性格付けの奥行きが感じられた。

3巻の「出版社内容情報」でも、悪役として登場した仮面の男を"仮面をかぶった謎のキックボクサー"として紹介し、4巻では引き続き仮面の男の攻撃を"空手とはちがう、キックボクサーのキックの軌道に苦戦"と言って異質さを際立てている。

しかし、終盤ではこれらはなかったことになっており、仮にアンディ、アーツらを絡めた描写を予定していたとすれば、アンディの死がそれを不可能にしたため中止したのではないかと推測する。
 
ひとまず、「出版社内容情報」においてキックボクシングに引き続き、下瀬がその使い手として詠春拳が紹介されたことで、K-1が異種格闘試合であるという特徴をいうことに一役買っているといえるだろう。(ただし当時K-1に詠春拳での参戦はなくフィクションである)

……なお、「出版社内容情報」ではC4とニトロがキックボクサーということには一言も言及されていない。地雷だけがキックボクサーだったかのようである。

〔3.話題転換の役目を担うニトロ、敵役としての位置づけ〕

はじめに言及したとおり「出版社内容情報」においてビーストは終盤になってはじめて登場する構成だ。ニトロは7巻でその一員として再登場したことでビーストの存在を知らしめた。彼は、2巻でもK-1ジュニアGPの情報を舞人に知らせる役割を担っており、話題の転換点において次の話題で重要な情報をもたらす存在であることがわかる。

また、当初想定される位置づけは舞人とC4の関係に割ってはいる敵役であり、ビーストとして再登場することでその印象が増強されるものの、タクマの登場によりその位置づけは揺らぐ。これは敵役の背後にさらなる大ボスが控えているという定石による展開といえる。

しかし、作中においてはタクマは1巻からK計画について訳知りであり、2巻以降でビーストとして破壊工作を繰り広げていく。その目的は詳細不明のままだが、関係性に割って入るニトロとは別の性質をもった敵役だ。ニトロのビースト入りは性質の違う敵役同士が共謀する事態として描かれていた。そして、いよいよビーストの野望が明らかになる…という、やはり「出版社内容情報」より込み入った展開をしている。

〔4.地雷〕

作中では複雑な立ち位置にあって最後までその心理描写を丁寧にされる地雷だが、「出版社内容情報」では以上で確認したとおりである。すなわち、舞人の親友だったが、個人的に仮面の男として悪事をはたらいていたキックボクサー、という悪党である。

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