「K-1ダイナマイト」の編の区分について② 編の一覧

この記事では「K-1ダイナマイト」の物語を話題で分割する「○○編」という区分の根拠として雑誌掲載時のアオリを参照し、各編が収録している話・おおまかな内容・構成を一覧することを目的に作成しました。各編には所見を添えています。

考察とまとめ では、全編通しての気づきとして「この作品は主人公4人体制じゃないか?」という話をしています。

参考資料
「K-1ダイナマイト」に関する記事はこの画像が手元にあると便利!

アオリで読む○○編の区分

凡例

【○○編という括りについて】
「K-1ダイナマイト」は連載時より物語の内容を編で分割していた。大体の場合は内容が一区切りする話の最終ページのアオリで新編スタートが予告され、その際に「○○編」と呼称された。全部で5編※※ある。

  1. 《名称なし》

  2.  K計画編

  3.  K-1ジュニアGP編

  4. 《ラストバトル編》 ※※

  5.  舞人VS.C4編 

    ※ 《》は名称なし。ラストバトル編は仮称
    ※※ ラストバトル編はアオリに準拠した場合区分はないので厳密にはK-1ジュニアGP編に組み入れて全4編であるが、当方での便宜的な事情で区分している

【各編の内容について】
以下より、各編について収録されている話の単行本でのタイトルおよび巻数を記載し、おおまかな内容と構成上の所見を述べる。編の収録タイトルに続けて、編の切り替わりの根拠とした雑誌(月コロ、別コロ)のアオリを引用した。その際に〔雑誌の年月号数〕〔掲載話の単行本収録時のタイトル〕を付記した。アオリの引用に雑誌名を記載していないものは「月刊コロコロコミック」より


1.名称なし

《1巻》
「世界最強を目指す奴」「K計画ーー選ばれし者」「謎の少年、C4登場!!」「「最強」の誇りにかけて」
《2巻》
「おれが最強だ!!」

新連載のため該当する記述なし。

〔内容と所見〕
主人公の大奈舞人は“世界最強の男”を目指している。舞人が大好きな空手をはじめたところを、偶然、アンディ・フグに見出され、正道会館に入門してからK計画のメンバー候補に指名されるまでの話運命のライバル・C4との出会いのほか、正道空手の秘奥義《天魔》のこと、C4とその双子の兄・ニトロの確執についても触れられる。なお、ここまでの話で(含みはあるものの)《K計画》はK-1Jrリーグ(後のK-1ジュニアGP)に出場する正道会館代表選手を選抜するための計画である、と説明されている。


2.K計画編

《2巻》
「K計画への試練」「見えない敵」「四天王、現る!!」
《3巻》
「爆発!! Dモード」「だれだ!? 謎の強敵」「たおせ!! 仮面の男」「ねらわれた四天王」「勝利のかたち」「明かされた真実」
《4巻》
「沈まない闘志」「だれよりも強く!!」

K-1Jrリーグ出場をかけて、次回より「K計画」編突入だっ!!

1999年7月号(掲載話「おれが最強だ!!」)

〔内容と所見〕
カルネアデス号搭乗(「四天王、現る!!」)からがK計画編という気がするが、「おれが最強だ!!」で説明されたように《K計画》は正道会館からK-1Jrリーグに出場する選手を選抜するための計画という前提でこの編はスタート。しかし、蓋を開けてみたら…ということが描かれていく。計画を妨害しようと現れた謎の格闘集団「BEAST(ビースト)」との攻防が展開され、その渦中での地雷とタクマの決裂の一件は最終話まで尾を引く

(追記)
前半は、将来有望な格闘家を育成してK-1ジュニアGPの選手として輩出するというK計画の表向きの目的に取り組む内容だが、ビーストの一味が正体である仮面の男の襲撃を受けて、終盤で「ビーストに対抗しうる力の持ち主を見出す」という裏の目的が明かされる構成だ。つまり、この編はK計画の全容を描くことを軸にまとめられている。


3.K-1ジュニアGP編

《4巻》
「開幕!! K-1ジュニアGP」「炸裂! ダイナマイト・キック」
《5巻》
「最強の格闘技」※ 「自分の技を身につけろ!!」「戦士のプライド」「激突!! G・GVS嵐の鉄槌」
《6巻》
「さく裂! 本物のG・G」「限界の果てまで……」「激突! 空手VS空手」「「こわし屋」の恐怖」
《7巻》
「究極のハンディ」「悲しみの兄弟対決」「激突!! 涙にかくれた思い」「殺人格闘集団ビースト!!」「「気」をあやつる者!!」「アプサラスとの死闘」

備考: 全16+1話 ※は2号分で1話

ついにカルネアデス計画をクリアしたマイト。次号から「K-1ジュニアGP編」突入だ!!

2000年6月号(掲載話「だれよりも強く!!」)

〔内容と所見〕
K-1ジュニアGPの会場であるファイ島を舞台に激しいバトルが繰り広げられる。
参加選手たちそれぞれの思惑が交錯する中、舞人とC4は順調にGPトーナメントを勝ち進んでいく。しかし、ここでも暗躍するビーストの魔の手が大会を襲う。双子の確執に決着。ラストバトルの手引きをするアプサラスはタクマ関係の話題で重要な人物。なお、このGP編は全編中最も長く17ヶ月にわたって描かれた。


4.《ラストバトル》編

《8巻》
「地下の番人、ケルベロス」「2つの究極奥義」「最強」

第三区分「K-1ジュニアGP編」と区分する文言はないが、私がここを別にした経緯は以下の記事の補記に記した。

友のためにビーストの本拠地に向かうマイト。ラストバトル開始だ!!

2001年11月号(掲載話「アプサラスとの死闘」)

ビーストの本拠地へ突入/最終バトルだ!!

2001年12月号 前扉(掲載話「地下の番人、ケルベロス」)


〔内容と所見〕
ビーストの本拠地ダンテズ・インフェルノ島を舞台にする
。舞人とタクマの一騎打ち。空手の秘奥義《天魔》とビーストの究極奥義《B×B×B(ビーキュービック)》が最強をかけて激突する。舞人はこれまでのバトルで培ってきたものから己の目指す“最強”を説く。
この対決でタクマの最強が覆されることにより、かつて彼に憧れていた地雷の標榜する“強さ”が完全に塗り替えられる結末となっている。しかし、ラストバトルを目前にして登場したアプサラスとタクマの関係にある違和感から、「K計画編」での2人の決裂について再読が促され、遠ざかる決戦の地を見つめる地雷の心境をより複雑に読ませる構成。


5.舞人VS.C4編

8巻
「永遠のライバル」

舞人VS.C4編 激闘特別読切り!!

別冊コロコロコミックSpecial 2002年4月号 前扉(掲載話「永遠のライバル」)

〔内容と所見〕
コロコロコミック本誌では実現しなかった舞人とC4の運命のライバル対決を描いた1話。舞台は、ダンテズ・インフェルノ島の決闘から2年後のK-1ジュニアGP決勝戦。本誌掲載ぶんのストーリーでおのおのの迷いをふっきった登場人物たちに見守られながら、純粋に強さを競い合うライバル同士が決着をつける。ただひとつ、C4の目の病だけが気がかりだが……。最後は大団円で雑誌連載は終了。

考察とまとめ

以上のように掲載誌上のアオリによる区分における各編の内容をまとめた。

全編を参照してわかることは、主人公の舞人のほかにも展開していく物語の話題において継続的に重要となる登場人物がいるということ。C4、タクマ、地雷だ。「K-1ダイナマイト」は“主人公4人体制の物語”という捉え方ができそうではないか? もちろん他のキャラクター個々にも物語があってそれらは展開上すべて関係するが、際立って行動と心情に重点を置かれ続けていた。

その証左であるかのように、作品の最後を締めくくるラストバトル編を開始する2001年12月号(掲載話、33話「地下の番人、ケルベロス」)の「登場人物紹介」に名を連ねる4人は舞人、C4、タクマ、地雷だ。

K-1ジュニアGPを舞台に《K-1ジュニア世界チャンピオンで最強の座にいるC4》《ビースト頭首家の一員として格闘技界で最強になろうとしてるタクマ》はそれぞれに事情を持つ固有の物語がすでにある。そこに《空手で世界最強の男になりたい舞人》が現れて、2人と関わっていく。

C4には兄・ニトロとの確執があった。
タクマは彼自身の野心的な取り組みに着手しはじめた。

K-1ジュニアGPで最強をかけた戦いから外れる彼ら固有の物語は、舞人の最強を目指す物語に絡められ総括されるかたちで読者に提示されている。 ゆえに、まぎれもなく舞人が主人公の物語といえる。

しかし、もうひとりの主人公と目すことのできる《地雷》は他の3人と異なり、自らが決戦の場を踏むことのない特殊な立ち位置で固有の物語を構築している。彼が舞人とタクマの板挟みになる状況によって物語の全体像は複雑化する。

地雷は唯一最強を自身のテーマに掲げていない。K-1ジュニアGPにも、ダンテズ・インフェルノ島の戦いにも参加しない。そんな彼のことを舞人もタクマもひとりの格闘家としてどのように認識しているか? は、特段触れられない。

ただ傍観するだけの彼の物語はクライマックスにおいても釈然としない。大怪我により実際目にすることはできなかった決戦の結果を人づてに聞く。舞人の勝利を喜びながら、敗者として出奔するタクマとそのあとを追うアプサラスのことを思って、晴れやかとも煮え切らないともつかない複雑な表情を浮かべて沈黙する。

登場人物の心理をハッキリ理解することはできないものだが、地雷はわからない。彼が結局どういう存在だったのか? どうなりたかったのか? は沈黙の表情によって誰の物語に絡められることもなく幕引きしてしまう。舞人並びにC4、タクマたちの「最強をめぐる」物語に併記される地雷の物語があって、K-1ダイナマイトの物語は構造的に分裂しているといえるかもしれない。



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