「K-1ダイナマイト」の編の区分について①

※ 他社ブログで2018年9月8日付で作成した記事の再録・修正版
※ 補記が内容の2/3を占めます。

「K-1ダイナマイト」の雑誌掲載時のアオリで編の区分がされていることに気が付いたので、当方で感想・考察・研究する際はそこでの区分を利用しようと区分の定義をまとめた、ついでにWikipedia記事との比較もした、というレポートです。

区分の根拠となるアオリを引用したら記事が煩雑になるので、このレポート(概要・調査結果・まとめ)においては省略して要点のみにとどめました。

補記は、第三区分が内容的に長く、便宜上わけたほうがいいんじゃないか? という私の独断について説明しています。

参考資料
話数、タイトル、収録巻、雑誌掲載号は、本文中書いたり書いてなかったりするので以下の資料が手元にあると混乱しないよ!

物語の区分「○○編」について

概要

Wikipediaの「ストーリーの流れ」は事件と舞人の行動や境遇を客観的に追う形でまとめている。【修行編: 舞人が正道会館に入門して山奥の合宿所でK計画メンバーに正式決定するまで】、【カルネアデス計画編: K計画のメイン合宿地である大型船カルネアデス号搭乗中の出来事】、【K-1ジュニアGP編: K-1ジュニアGPの試合での出来事】、【ビースト決戦編: C4誘拐を発端としたビーストのアジトでの決戦】をそれぞれの編の内容的大枠として区分しており、これは雑誌上とは別の意図に基づいている。

雑誌上での区分の根拠となる文言が記述されているアオリ(作品の扉ページ、本編の開始および最後のページに添えられた鑑賞する読者の気分を盛り上げる文言)を調査し、各区分(○○編)の内容を整理してWikipediaとの区分の意図の相違を比較した。


調査結果

雑誌での編の区分(連載時マンガに添えられたアオリを参照)に準拠する場合、第一区分は1話-5話であり、これに編の名称はない。

第二区分のカルネアデス計画編(雑誌表記「K計画編」)は山奥の合宿所の出来事も含めて6話-16話となる。前半は、将来有望な格闘家を育成してK-1ジュニアGPの選手として輩出するというK計画の表向きの目的に取り組む内容だが、ビーストの一味が正体である仮面の男の襲撃を受けて、終盤で「ビーストに対抗しうる力の持ち主を見出す」という裏の目的が明かされる構成だ。つまり、この編はK計画の全容を描くことを軸にまとめられている。

また、番外編を除いて雑誌上で編の名称があるのは「K-1ジュニアGP編」(17話-)までである。一応、ダンテズ・インフェルノ島への移動を予告する32話に(次号から)“ラストバトル開始”のアオリが添えられているが、この“ラストバトル”という文言は「K計画編」のクライマックスである仮面の男との対決を描いた15話、16話にも添えられている。読者に編の終盤を告げる意味を持つが、編を区切る説明の語ではないだろう。 ⇒ 記事の末部に追記

雑誌における区分を参考にしつつ編ごとに内容をまとめると、

第一区分
1-5話
今後のドラマの方向性を定める導入部。

アンディ・フグに誘われて舞人は正道会館に入門。後のライバル・C4との出会いと交流があり、彼と対戦するためにK-1ジュニアGP出場を目指して、その選手選考を兼ねたK計画参加への意欲を燃やす。

第二区分
6-16話 (「K計画編」
K計画の全容を描くことを軸にドラマが展開されていく。

K計画の正式参加メンバーになるための山奥の合宿を経て、メイン合宿地である大型船カルネアデス号に搭乗した舞人ら参加者は、逃げ場のない海の上で正体不明の仮面の男の襲撃に遭う。それは潜伏していた謎の格闘組織ビーストの一味だった。実は、K計画にはビーストに対抗しうる力の持ち主を見出すという裏の目的があった。

第三区分
17-35話 (「K-1ジュニアGP編」
(大雑把に)GP開催期間中の出来事という括り。

仮面の男を凌ぐ戦いぶりを認められ、舞人はK-1ジュニアGPに正道会館の代表選手として出場を果たす。大会がビーストの暗躍により不穏な状況の中、舞人とC4は勝ち進んでいった。しかし、C4誘拐により大会はとん挫して、舞人らK-1ジュニアファイターは彼を取り戻すためにビーストのアジトに侵攻。舞人は誘拐の首謀者であるタクマと互いの最強奥義をぶつけ合う命がけの一騎打ちで決着をつける。

まとめ

冒頭のWikipediaの「ストーリーの流れ」を繰り返す

修行編: 舞人が正道会館に入門して山奥の合宿所でK計画メンバーに正式決定するまで
カルネアデス計画編:
 K計画のメイン合宿地である大型船カルネアデス号搭乗中の出来事
K-1ジュニアGP編: 
K-1ジュニアGPの試合での出来事
ビースト決戦編: 
C4誘拐を発端としたビーストのアジトでの決戦

相違点は、Wikipediaでは a.カルネアデス号の出来事 b.ジュニアGPの試合での出来事 c.C4誘拐を発端にしたビーストとの決戦 を大きな括りとしてピックアップしているが、先に書いたとおり雑誌においてaはK計画の話題の(大半を占めているが)一部だし、b・cはK-1グランプリ開催期間中の一連の出来事として特に分割していない。


補記: ラストバトル編の区分

第三区分についてダンテズインフェルノ島での決闘を区分しない、とした。しかし「K計画編」「K-1グランプリGP編」の構成とアオリの文言を再検討すると、記事中で言及した15、16話の「ラストバトル」と33話の「ラストバトル」とは文言の扱いに違いがあるように思われた。

まず、以下に14、15、16話の関連するアオリを列挙する。

"「K計画」編、クライマックス!!"(本編前)
"マイトの、そして「K計画」の運命は!?"(本編後)

2000年4月号(掲載話「明かされた真実」)

”ラストバトル開始!!”(扉)
”次号、決着”(本編後)

2000年5月号(掲載話「沈まない闘志」)

”ラストバトルに生き残るのは誰だ!?/K計画編終結!!”(扉)
”ついにカルネアデス計画をクリアしたマイト。次号から「K-1ジュニアGP編」に突入だ!!”(本編後)

2000年6月号(掲載話「だれよりも強く!!」)

…ちなみに、17話(2000年7月号、掲載話「開幕!! K-1ジュニアGP」)の扉のアオリには”新シリーズスタート!! K-1ジュニアGP/開幕!!” とあって、16、17話の間で編が区切れているのは明らかである。

第二区分「K計画編」は、この計画の全容を描くことを軸にドラマを展開していく構成だ。表向きの意義は正道会館が代表者として送り出すにふさわしい門下生を合宿中の鍛錬と素行によって抜擢するという目的がある。一方で、正道会館は危険視している格闘組織ビーストとの前面衝突を予期しており、輩出する門下生にはビーストに対抗しうる力の持ち主であることを望んでいた。

ストーリーの筋立てとして代表者はビーストに打ち勝つ証明が求められている。ゆえに、代表者となるマイトとビーストの一味・仮面の男との決着により締め括られるが、雑誌のアオリではこういった構成上の意義を明確に言われていた。14から16話にかけて彼らの決着が「K計画編」の「クライマックス」の「ラストバトル」だとわかる。

つづく、第三区分「K-1ジュニアGP編」は、大雑把にはK-1ジュニアGPのさなかでの出来事で、正道会館が懸念していたビーストとの衝突を描いている。作品のメインストーリーにおいてGPリーグの意義はマイトがC4との頂上決戦に世界最強の目標のため挑むのだが、ビーストの暗躍で頓挫する。マイトはビーストとの対決へ向かわなければならないというストーリーラインの転換点があった。

この区分は20ヶ月にわたっての長期の話題である。その間、実際の事件として、この作品がもともとK-1および正道会館とのタイアップ企画であり、その要として作中に登場していたキーパーソンであるアンディ・フグが病で急死する。それが2000年10月号と11月号の間の出来事※ で、この編の構成の見直しがされただろうとは想像に難くない。

※ 掲載話は、5巻収録、2号分を1話とする19話「最強の格闘技」の後半、20話「自分の技を身につけろ!!」が該当する

それに関連してか、劇中の登場人物の行動にも急転がある。ビーストの首謀者として正体を現したタクマが、自らがGPリーグの舞台でC4を打ち負かしてビーストの名と脅威を知らしめるという本来の計画を破棄してしまう。タクマはビーストの究極奥義「B×B×B」の会得で自らの最強を証明することに傾倒していき、その実験体としてC4を捕えてK-1ジュニアGPリーグを去るのである。

話題がK-1ジュニアGPでの戦いから移る、その転換点に登場するのがアプサラスだ。31話「「気」をあやつる者!!」で登場するアプサラスは月刊コロコロコミック誌上での連載が終了するまでの5話の間に物語の展開を翻弄する人物で、タクマの側近として見てきた彼の過去を語り、その心理についてを仄めかすような活躍をする。

マイトがアプサラスを破る32話から最終話までのアオリを見よう。

“友のためにビーストの本拠地に向かうマイト。さあ、ラストバトル開始だっ!!”(本編後)

2001年11月号(掲載話、32話「アプサラスとの死闘」)

“ビーストの本拠地へ突入!!”
“最終バトルだ!!”(いずれも扉)

2001年12月号(掲載話、33話「地下の番人、ケルベロス」)

“天魔V.S.B×B×B!! 最大の決戦が始まる!! 次号、感動の最終回!!”(本編後)

2002年1月号(掲載話、34話「2つの究極奥義」)

“マイト対タクマ。命を懸けた最終決戦の行方は!?”(本編前)
“3年間の応援、ありがとう!! /これがマイトのラストバトルだ!!”(扉)

2002年2月号(掲載話、35話「最強」)

以上の通り、「K-1ジュニアGP編」のクライマックスに意味がとどまらない。タクマとの対決がこの連載を締めくくる最後の戦いとして絶えず言及され続けている。これはマイトがK-1ジュニアGPリーグに出場する本来の目標であったC4との対決が叶わないことを告げている。(但し、2002年2月号の最終ページのアオリには“別冊コロコロ4月号で/K-1ダイナマイト特別編掲載決定!!/マイトの戦いは、まだ終わらない!!”とあって、もしかすると32話の時点で別コロでの特別編は決定していて、その宣伝をするための布石だったのかもしれない)。

ここで検討したい「ラストバトル」という語についてだが、タクマの方針転換以来、アプサラスによりもたらせる「B×B×B」復活にかけるタクマの心理的話題がマイトの最強を目指す話題と比肩する重大なものとして物語に台頭してくる。これは、「B×B×B」復活とマイトの「アルティメット・マイト・ザ・グレート(正道空手奥義「天魔」)」が完成することとが並走して語られる33話以降の構成を見ても明らかだ。

つまり、マイトが32話でアプサラスを打ち破り、ダンテズインフェルノ島へ移動して、タクマとの互いの奥義をぶつけ合う対決に臨む33話以降の展開は、「K-1ジュニアGP編」で暗躍していたビーストの悪事の文脈ではなく、タクマという個人についてを話題として新たに語られはじめたのではなかったか。

―― 余談だが、雑誌掲載時の本編開始ページにある「あらすじ」などが記されている枠内の「おもな登場人物」にタクマが名を連ねるのは2001年12月号(掲載話、33話「地下の番人、ケルベロス」)がはじめてである。最大4名紹介されるが残りは“大奈舞人、C4、地雷” であり、ここに地雷の名前があることは注意したい。

マイトがC4との対決を頓挫させられ新たな行動に駆り立てられたように、タクマもビーストの計画から逸脱していた。K-1ジュニアGPの舞台で本来到達すべき目標から外れた2人は互いの奥義を以て対決せざるを得なくなる。そのような「ラストバトル」というのは「K-1ジュニアGP編」の一部とするには新しい情報が多く、想定されていたビーストとの戦いとも異なる話題のように思われる。だから、私が「K-1ダイナマイト」を編で区分する際には33話から最終話(35話)までに絶えず言われていたアオリの文言をとって「ラストバトル編」と呼称したい。


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