「K-1ダイナマイト」のことを友人に話したチャットの抜き出し《後編》
※ ネタバレあります
※ 友人はイマジナリーフレンドではありません
【後編】は主にタクマとアプサラスの話をしています。
わたしは当時連載を読んで、地雷くんとアプサラスがとても気に入っていました。2人とも不憫です。なぜこんなにつらい目にあわなければならないのでしょう? とても気になったので改めて読み直すにあたっては、タクマのところを入念に読んだという経緯があります。
【前編】はこれ
さあ、【前編】を読んでうんざりしなかった人は【後編】も読めるはず!
地の文がわたし
文頭二字下げ 〉は友人の発言
※は状況説明 / ⇒ は内容の補足
※ 参考
① 共にビーストであるタクマと地雷が仲間割れして、地雷はビーストを抜ける ⇒ ② タクマはC4を倒すために、C4の内情(双子の確執)を利用。試合で戦わせるも途中で双子は仲直り(②´) ⇒ ③ タクマはB×B×Bを復活させたい。ビーストを抜けた地雷(①)への報復をみせしめにして、仲直りした兄(②´)に危険が迫っていると脅し、C4を協力させる ⇒ ④ 舞人はC4救出に動く ⇒ ⑤ 舞人は天魔を完成。タクマはB×B×B(③)で対決を挑む。
● 様子が違ったのはB×B×Bのせい? アプサラスのせい?
さて、ヒロイン登場だ! アプサラスがB×B×Bが見たい! というのをタクマは知っている。C4くんを島にさらうことには「ビーストの掟に反する」と反対されたけど、B×B×B復活するって言っても? て話を振るわけですよ。
アプサラスは大喜び! タクマがアプサラスにどうあっても協力させたかったのか、喜ばせたかったのかは、わからない……
> アプサラスについてきてほしかったのかなぁ
アプサラスには、C4くんのライバルの舞人くんが応援に駆け付けそうだから、船を出港できるように見張りにおいて足止めを指示したっぽいです。
アプサラスは舞人を気絶させたものの、離脱が遅れて、(目を覚まし、なおも歩みを止めない)舞人を殺すために自分の命を捨てる宣言してる。から、舞人を足止め? 殺す? 指示を出した時点でアプサラスも殺すつもりだったのか、アプサラス強いから大丈夫だと思って任せてたのか、わからない。
> 大丈夫だと思って任せてたんだと思いたいなぁ個人的には。……任せられるのがアプサラスちゃんしかいなかったのだろうかとか思ってしまった(人材不足説)
でね。タクマはB×B×Bの復活を確信したと同時に、島に「C4と舞人を助けるぞー!」と息巻く大量の侵入者が来たという知らせを受けます。舞人が島にいるということは、アプサラスの消息が心配だ、という知らせでもあるわけです。
> 少なくとも殺害には失敗しちゃったということだものね。
タクマは高笑いして「大量の実験台が手に入った!」とか言ってるので、失敗しちゃったアプサラスをどう思ったかはわかんない。不安になったのか、忘却の彼方なのか。
常に行動を共にしているわたしのアプサラスは真のビーストだから他とは違う、とか、そんなの聞きたくねぇよ! て自慢をC4くんにしてた、そのアプサラスのことが忘却の彼方って普通だったらどうかしてるよね?
> 不安とか心配とか、自分の中のそういう感情について鈍感なのかもしれない。
タクマとアプサラスの再開シーンがすごい。タクマはB×B×Bで、舞人と親睦のあったK-1ファイターの一人を餌食にしようとしている。そういう場面に舞人とアプサラスは出くわします。
当然、舞人くんはタクマを止めに入ろうとするんだけど、アプサラスに取り押さえられる。技を決め終えたタクマがアプサラスの存在に気付く。「アプサラス……それに、大奈舞人!」の順で、気が付きます。
> 忘れてなくて気にかけていたからこその反応順だと思いたい。
アプサラスは舞人くんを両腕で抱きかかえた姿勢で、タクマに《舞人がB×B×Bを打ち破る技を持っている危険がある》《自分ごと撃ち抜け(※ そういう技があるのか飛び道具があるのか謎)》と志願しました。
さあ、考えてみましょう! 仮に、これまでのタクマの努力がアプサラスのためで、アプサラスの安否が心配で、アプサラスが好きだった場合のことを……!
> いいからダッシュでこっちおいで! いっしょにいくよ! って言ってほしい。けど そんなこと言えたら暗黒格闘組織のボスなんてやってないよねえええええ
だってねぇ。「自分のことしか考えない」「相手を傷つけることを恐れない」「情をもたない」「迷わない」を、実践しようとしてるんだよ、タクマは。
> 情と信念の間でセルフ板挟み衝突事故起こしてる??
(2人とも真のビーストゆえに)おなじ信念をもっていることになっているアプサラスは、タクマへの情はあるけど、護衛という立場上、身を挺して主人を守るというのは当然の職務であって、情があるということを隠すことができる。
表面上は、アプサラスは自分の職務のことだけを、タクマや舞人が傷つくことも恐れておらず、情もないし、迷いもない っていう態度を示しているとも言えるのよね。…アプサラスがタクマのことが好きっていう内実を知らなければ!
アプサラスは、猫を抱きかかえて庇いながらいじめっ子にボコられてたところを、タクマに拾われて、育てられて、護衛に起用されたっていう……至れり尽くせりなんだな。
アプサラスは生き物が好きだから守っていた。ゆえに、ビーストに生まれながら(※ アジトの島で生まれ育ったぐらいの意味)、ビースト失格と言われていたのね。
だから、タクマに恩義があるという話だけど。
> 確か舞人にも結構情が移ってなかったっけ?
うん。舞人に情が移っているということを読み取ったかもわかんないよね。自分で殺せないから、タクマに自分ごと殺せ! って言ってるんだったら、悔しいよな。タクマ。
出会った時の、好きなものを抱きかかえて守るという絵面をタクマは想起したとも限らないんだよなぁ。猫抱っこからの、舞人抱っこ…。
> トラウマになりそうですね…
……まだ! まだタクマがアプサラスのことをどう思ってるかはわかんないんだよぉ~。アプサラスの《B×B×Bより強い奥義を舞人が会得した情報》を得て、タクマは「舞人と遊ぶ!」と言います。(このセリフはまえに地雷くんが言ってたやつです)
> アプサラスちゃんの訴えはどうなるんだそれは。
そうなの! 「舞人と遊ぶ」からの「おれのために死ね、アプサラス」だから「ビーストの掟」とか言ってくる職務に真面目なアプサラスなんてもういらねぇ! ということかもわかんない。
とりあえず、ここでやっと、タクマの戦いに向かう動機が「最強と戦って倒したい!」ていう、舞人くんやC4くんと同じになる。
> 同じなんだけど「こいつは張り倒さねばならぬ……」ってなっちゃうあたりがラスボスですね。(※ 舞人とC4に比べて動機に至るまでの過程が私怨くさい、ぐらいの意味)……コミュニケーションに難があるのか情緒に問題があるのか単なる鬼畜なのかよく分かんないよ!
● タクマ、前に出る。
※ 舞人とタクマの決戦の話題に突入
(ネットの拾い画像を見ながら)舞人くんが「最強」を説くシーン。……この一個一個のセリフが、タクマがアプサラスへの恋心を素直に表せないことへのありがたいお説教に読める。「痛くても、ケガしても、どんなに怖くっても……前へ出る!」……で、タクマが前に出るよ!
そこもなんか両義的で、ぐぬぬ…ってなるとこなの。生きてたアプサラスがタクマの身を案じて止めに入ったのを「じゃま」って。すがってきたのを払いのける絵なんだけれどね……。
> マジで邪魔なのか巻き込みたくないのか、どっちともとれますね! タクマは戦いたいから前に出るのか、後ろにアプサラスちゃんがいるから前に出るのか、どっちなんだろう……。
ね! すでにタクマは舞人の技と闘志を思い知って、自分は技に使う足を折られててヤバイから、思わず笑みがこぼれちゃうような状況なのよね。
舞人強いし、アプサラスの言ってたことは(舞人に情が湧いたことをごまかすためではない)本気の忠告で、自分への愛が本物だったという気づきもあった(?)だろうし。
……本物の愛っていうか、自分への情だったという気づき? 地雷くんはタクマのマント持ち歩いてたけど、タクマにじゃなくて、ビーストに、だったからね。
その気づきがあっただろうタイミングでの「アプサラス、生きていたのか……」なので。
「すべてわかっている。じゃまだ、アプサラス」 なにを、なにを、わかったというんだ!! まじか? タクマさま!! 聞いてないだろ、おい! …と思ったかどうかはわかんないけど、アプサラスは技の影響で萎れた老婆なのに表情がエロいのが良い。
> 男子小学生の性癖が乱れてしまう! 男装の美少女って時点で大概だけど!! 自分一人で納得するんじゃない! 報告・連絡・相談!!
自分の恋心を報告・連絡・相談。主人が、部下に? セクハラにならない? とりあえず、命からがらタクマの身を案じてやってきたアプサラスからしたら「じゃま」とか言われたら……。むかつくセリフ回しだわ!
> 利用したいのか守りたいのか、アプサラスちゃん視点だと分かんないねぇ……(仮に、タクマがアプサラスのことが好きなら)「私はあなたを失い難いと思っているので、積極的に自分の身を守ってください」程度でもいいから意思表示はしておくべきだと思うんですよ。
「さっき、死ねっていいましたよね?」で返されるのでは……。好きなものを守る子を、いじめっこから救い出して、鍛えて、護衛につかせるまでが精一杯だったので無理じゃん? タクマ、一応、ビーストの頭首家の人だからビーストらしく振舞うことから降りると示しがつかない。
(アプサラスのほうも)失格者と罵られて所在ないところに、帰属できる立ち位置を与えてもらった、っていう、それだけのこととして理解するほかないもんね。
> 利用するつもりだとしても、目をかけてもらえただけ幸いだった……ってなっちゃうよね。
アプサラスが自分から告るなんてできないのよ。
(男装の美少女、という話題を受けて)アプサラスが自分から男装したのか、タクマが男装させてたのか、考えてみると闇が深い。自分が男装させた美少女(好き)が、憎い奴を抱っこしてる状況って相当性癖がこじれる(´・ω・`)
> むしろ護衛として傍に置いてれば、ビースト内部でのやっかみとかは避けられるとか考えてたんじゃないかなぁ?
護衛として傍においてれば居場所を与えられるが、異性だと色々問題があるから男装してもらおう! というのは通りいいよね……。
あと、《“好きなものを守る子”に守られてるんだから、自分はその子から好かれてる!》んだったらいいのになぁ、みたいな発想があって、自分のこと守らせてもいそう。(逞しい想像力)
死ぬようなことをする命令の前に「おれのために」と前置きしたの、《アプサラスは職務を全うするためでなく、おれのために死ぬ!》と自己完結しようとしてたんじゃないか、とも。
> 生きるか死ぬかの瀬戸際になる前にさー「俺のために生きてください」とか意思確認しておいたっていいじゃない(暴論)
ですよねー!! でも、それを言って決戦のラストスパートきるとか、死亡フラグかな? とか、負けた(= 死んだ)場合のアプサラスの気持ちとか考えると気負わせるのも? 心配? みたいな?
> 死亡フラグを恐れていてはラスボスは務まらないのだ。アプサラスちゃんだって、何も言ってくれないのはそれはそれで不安だと思うんだけど。タクマさんめんどくさい。
● タクマとアプサラスのその後
舞人VS.C4編で、タクマとアプサラスはまるで舞人君のご両親ですか? という風情(アプサラスは男装やめてる)で試合観戦に来てるので、どうにかなったみたいよ。
> とりあえず最低限生きててよかったです(小並感)
二人とも元がいくつかわかんないけど、ずいぶんお育ちになっておられますが。
> 苦労したんじゃないだろうか。というか、表出てきて大丈夫な身分なんだろうか。逮捕されない??
やっぱり、治安組織とビーストの癒着が……。
(さいごに)タクマについての所見
以上です。
構成の話をすると言って後半はひたすらタクマとはなんだったのか? を語ったあげくのアプタクトークでした。お時間とらせていただき、ありがとうございました!
*
色々まとまりなく喋りましたが、せっかくタクマ関係の話題を扱っている記事なので、タクマに関する所見を最後に述べておきたいと思います。(※2018年2月時点の見解) 建設的な話は、また別の機会にするのでおおまかなところをば。
タクマはビースト頭首家の人間なので、“けものの心”に標榜されるようなビーストらしい振る舞いをしようとがんばってるっぽいです。しかし、読んでいると所どころに、あるまじき振る舞いがあり、それが端的に現れる描写が「泣いてる人」への反応です。
泣かせるのも、泣かれるのも、泣いているのを見るのも心理的にグッとくるものがあるらしく、たぶん「かわいそう」とか思ってるのではないか。タクマのエピソードには泣く人が絶対に出てくる。
面白いのが、回想される昔のタクマは泣いてる子を助けているけれど、作中現在においては誰かしら泣かせてる。なんとなくだけれど、人を泣かせるのはよくない的なヒロイックな気分がタクマにはあって、ゆえに、練習試合で相手選手に怯んで泣いた地雷くんには何もしなかったし、いじめっ子に反撃できずに泣いていたアプサラスも助けたのではなかったか?
しかし、そうであったとしても地雷が通っていたジムのエピソードのように、大抵のタクマの行動は善意としては受け入れられない。タクマの進言は不適切な指導を批判したともとれる内容だけれども、受け手の気持ちを一切配慮しない言い回しだった。ーーさすが頭首家の人だ! と、その態度が通用するのはビースト内部だけでしょう。当然、反感を買います。
見逃された地雷くんも根に持ったらしい、というのは、舞人が挑発して言った「かわいそう」に過剰に反応したように、場合によっては舐められたともとられる。「かわいそう」という温情は相手のプライドを傷つけたり、保護という名の支配にもなったりする。だからイライラする。
そういう、思いやりを嫌うエピソードは「K-1ダイナマイト」全体を通していくつも描かれていたでしょう。タクマも例にもれず、他人をイラつかせたし、自分もやられてイライラします。
受け手側の微妙な心理によって善意の行動が受け入れてもらえないというコミュニケーションの失敗が、タクマにはありがちなように思われるのです。それでも地雷くんやアプサラスは懐いてきた。回想中に二人と向き合うタクマ(マントを広げて見せる、仮面を渡す)は、不可解な態度の多い彼にはめずらしく感情がストレートに顔に現れているように見受けられます。
2018年2月頃 記
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