一周して笑いも要か?義の世界、忠臣蔵。

今更ながら、「決算!忠臣蔵」を観た感想を書こうと思う。 

僕は記憶力が非常に乏しいので、だいたい新作映画は公開早々観にいくようにしている。そうすると、いつ観にいったっけぇ、と失念する心配がないからだ。

本作は11月下旬に公開なのだから、その頃行ったのだろう。

結論から書いちゃおう。

この作品に対する感想は「吉本興業のせいで台無し」の一言に尽きる。

ちょっと辛口なんだけど、もう本当に残念だったんだ。半年くらいほったらかして話すのも嫌んなるくらい、赤穂にルーツのある僕からしたらドン引きだったんだよね。

これは時代劇エンターテインメントとやらじゃない、コメディ映画。


忠臣蔵っていうのは、赤穂の人にとっては年の暮れには必ず観るのが風習ってくらい、土着性の高いものなんだよね。だからあんまり弄くり回して欲しくないっていうか、別に現代ナイズドして“義”でコテコテにしなくてもいいけど、でもやっぱり「笑い」にはして欲しくないのが本音なのだ。

だから、内蔵助役の堤真一が「これはもう笑いではない、僕は笑いとは言いたくない」って言うもんだから、あ、案外原作(忠臣蔵の決算書)に沿った淡々とした映画なんかなって思うじゃーん?そりゃ思うじゃん、内蔵助が言うんだぜぇ?

それが蓋を開いたら、出るわ出るわ吉本芸人。西川きよしから村上ショージまで、豪華なこと。またこの中堅以上の芸人さんって個々キャラクターとしての味の濃さがはんぱないから、どれだけ髷を結っても全然武士にならない。

武士にならないどころか、今にも「ドゥーン!!」って言い出しそうで、こっちも全然感情移入できない。


その点、岡村隆史はやっぱりすごかった。

長助という金庫番を見事に演じていて、どこにもナインティナインの岡村隆史はいないんだもんな。ネタバレは避けつつ感動したシーンを挙げると、物語の転換点で見せた演技がほんとうに素晴らしい。

よく言われる、「セリフがない演技こそ演技力が」なんとやらで、僕の乏しい語彙力では表わせない、悲しいシーンを演じ切ってる。

また、そのシーンで堤真一がやっとこさ内蔵助に見えた、堤真一を内蔵助に昇華させた演技だったというのもあるのかもしれない。

ちなみに一流の役者陣はさすが、有無を言わせず猛々しい演技だったよ。

それから、面白い描き方だなと思ったのは、ずっと画面のどこかに残金が出ていて、ストーリーの進行に合わせてお金が増えたり減ったりするんだけど。

それが、現代人はまったく馴染みのない品物ばっかりで興味深い。

昼行灯と称された内蔵助のお茶屋代も、こんなにするのかぁ、いつの時代も美しい女性と酒はおじぇじぇ(大阪弁で銭のこと)になるんだなあ、と感心してみたりしてね。

あ、あとこれも良いなと思ったんだけど、この作品は家族や身内と観れる映画。

気まずいシーンが一切ない。エッチなシーンはもちろん、胸キュン必須の小っ恥ずかしいトゥンク…な顎クイもない。全くない。

それって意外とポイント高いのは、こういう歴史物って案外予想もしないタイミングで上様にアーレーってされたりするから、お茶の間で観賞してると困るんだよね。

よかった点はそのくらいで、あとは石原さとみの色気が下品なくらいダダ漏れしてた印象しかないかな。

我ながら酷評の一番の理由は、この映画(ここはネタバレして申し訳ないけど)肝心の討ち入りが丸ごと一切カットされてるんだよね。

もちろん意図してのことだろうけど、物語のクライマックスである討ち入りがナレーションでの回想ってのはおい、冒頭の芸人の登場シーンあんなに必要やったんか、と思わざるを得ない。

そしてそれを忠臣蔵って冠つけちゃうのはちょっと悲しいかな。


こういうパロディ化(と言ったらあかんのか)アザーストーリー的なものって、映像にするとどうしても本題との違いばっかり浮き彫りになっちゃって難しいんだろうけどね。

でも見方を変えたら、「そんな忠臣蔵ハチャメチャに求めてませんけど」みたいな人にはイイかも。時代劇風のものが観たいとか、家族で集まるからなんかアマプラでつけようか、みたいなニーズにはぴったり。

僕ですか?正直、金曜ロードショーでやるならつけとこ、位です。

以上、西浜大二郎の映画レビューでした。