そうじゃない

食べ物飲み物のクオリティは、時代が進むにつれてどんどん変化していく。安くて美味しいものが簡単に手に入る時代になっている。

今回する話は、それはそれでいいけどね、といった話であって、何も否定するつもりはないことを念頭においてほしい。

私が異議を申し立てるのは、「果汁入りメロンパン」である。メロンの本当の果肉や果汁がクリーム状で入ったメロンパンを見かける。というか、多くなっている。その方が豪華であって、美味しそうだからだ。しかし、私はそれを見る度に、「そうじゃない」と思う。

メロンなんか入っちゃいないから、メロンパンは美味しかった。カレーパンにカレーが入っていることや、チョココロネにチョコが入っていることとは訳が違う。メロンパンはメロンみたいなパン、それだけなのだ。

いちごみるくにも、苺の果肉のブツブツとした食感が感じられることもある。別にいちごを誰かが一生懸命絞ってこれができてないことくらい分かってる。だから、どんな感じで味がついているのかわからなくても、いちごと牛乳を混ぜたものだとわかればいい。ピンク色が全部嘘だっていい。完全なる加工の感じも魅力のひとつだった。

チョコレートも1番美味しく感じるのは間違いなくアンパンマンペロペロチョコだ。ピンクを食べても白を食べてもチョコはチョコだけど、本当に美味しいのだ。そのよくわからない感じがいい。値段の割に量が少ないのもいい。あれだからいいのだ。

飲み物、パンに関わらず、グミやラムネでも、より果物本物に近づけたがる傾向にある。それはそれで本当に美味しい。食べたい。けどそれは、「へー、食べてみたいな」止まりになる。最初に食べる人に向けて作っている。違う。

人には誰しも、「あ、アポロでも買ったろかな」と思った経験がある。アポロに原作はない。アポロというひとつの食べ物として存在している。「あ、なんかアポロでも食べたろかな」という感覚は、「アポロのこういう味が好きだから、食べたい」とかじゃないのだ。「なんかアポロ食べたい」なのだ。

本物の食べ物に近いグミは、本物の食べ物には敵わないのだ。そんなの、グミを殺している。
ミカンっぽいグミは、所詮グミ、だけどそんなのグミが黙っちゃいない。そうやって喧嘩しているから、何度も食べたいと思えないのだ。

言ってしまえば、コーラって一体なんなんだ?、という話である。得体の知れない黒い飲み物なのだ。だけどみんな好きだから飲んでる。すでに実在する食べ物じゃなくて、化学物質でできているから好きなのだ。

食べ物と化学物質の共存は永遠の課題だと思う。けれど、それを無理やり仲良くさせる必要はない。得体の知れない何かがあって良い。健康に良いとか悪いとかは、食べる側飲む側の責任である。身体に悪いなら身体に悪い見た目をしてくれ。青とか緑とかピンクとか、そんな色であってもいいと思う。

でも、より果物に近いお菓子、具が入ったメロンパンはこれからも興味をそそるし、実際美味しい。間違いない。
しかしながら、ずっと昔から存在する、独自のアイデアはずっとそのまま、よくわからないものであってほしい。

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