走る

私の人生の、地獄ランキングTOP10には堂々のランクインを果たすほどの行事、それは徒競走である。
リレーなどの足が速い子がいるからなんとかなる、クラスの個性が出るタイプの走りも地獄だ。
でもみてる分には1番面白いし、ことがうまく進んだ場合1番楽しかった種目と言えるのも徒競走であろう。

私は言わずと知れた走るのが遅い人間である。瞬足の対義語が私だ。コーナーで差をつけられる側の人間だ。中学高校で初めて50メートルが9秒台になり、全盛期は8.9秒であった。そんな、走るのが苦手な人達は、本当に完全に、常人の理解を超えた苦労をしてきているのだ。

まず、そのタイムを記録する時間が地獄なのだ。どんだけ頑張っても自分が遅い。なんでかわからないけどめちゃくちゃ遅いのだ。とんでもなく恥ずかしい。走り出した瞬間に隣の子が斜め前にいるのだ。
いつ学んだんだ?いつそんなに速く走れるようになったんだ?

リレーももう走順決めの段階から申し訳なさで押しつぶされそうになっていた。どうせお荷物なんだろうな、なんとかしてこいつをカバーしなきゃみたいな感じで思われてるんだろうなとか考えていたが、実際そうなんだろう。
当日もおっくうになるほど気持ちは重いのだ。私が抜かすことはほぼ100%ありえない。私が走り切るまで抜かされなければ大成功だ。「抜かされてもまた抜かすから平気だよ」と色んな人が言ってくれた。けど嫌だった。

実際、リレーで一度も抜かされることはなかった。運が良かった。めちゃくちゃ後ろが空いてたり、抜かせるほど速くはない子とたまたま当たっていたのだ。
でも、別に誰にも抜かされてない場合、クラスの歓声を受けながら走るのには悪い気持ちはしない。むしろちょっと感動する。

だから、来世、リレーをやる機会があれば、補欠で出るくらい、小学校高学年のリレー選手に選ばれ、高校の選択種目は100メートルにするくらいには足が速くあって欲しい。私もみんなに頼られてみたかった。アンカーとかになってみたかった。もし子供が産まれたら、誰よりもはやく歩けるようにさせ、狂ったように鬼ごっこを実施して、そんな風に惨めな思いをさせないようにしたいなと思う。

とはいえ、私の子供なら絶対に鈍臭い。足は遅い。だから、私は自分の子供に「リレーは直線でパス渡すまでのあの期間で抜かされるからな、気を付けろ。」と絶対に教える。これは、あいうえおを覚える前に教えるつもりだ。

もしこれをみている中に、私の足の遅さを知る、かつて同じクラスだった人がいるのならこの場を借りて言わせてほしい。
本当に迷惑かけてごめんな、まじでふざけてないのよ、まじの速さなのよ。でも誰も責めてきたり呆れたようなこと言わなくて、ほんとにありがとう。

とか言ったって、誰も気にしてないだろう。私だけが焦ってたのだろう。そう思ったら本当に可愛い地獄である。
足が速かった人たちも忘れないでほしい。あなたたちが輝けるのは、私たちがいるからです。

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