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【創作大賞2024】アイラブユー、オーバーエイジ。【あらすじ+第1話】


あらすじ

舞台はこの現代によく似た世界。
17歳を迎える誕生日の夜、ユウの元にやってきたのは彼女の前世で不老不死のエイジと、彼女の魂を狩りに来た死神だった。
とある「事件」で得たエイジの不老不死の力は、現世であるユウの寿命をも食い潰してしまった為、このままではユウは17歳で寿命が尽き死んでしまうという。

死神たちは彼女の魂を極上の魂と呼び、我先へと襲いかかる。エイジはそんなユウを必ず守ると誓うが……。

死神との戦い、2人の力、神さえ知らない因果と「事件」の真相。
エイジとユウの運命に抗う戦いが今、始まる。


_______________  


第1話


●ユウの夢の中 ※このシーンは表紙の前に描いてください。

漂う断片的な映像。
中世の裁判の騒ぐ傍聴席。
裁判長や陪審員ようなものが座り、自分に対し裁判が今行われているシーン。
※あくまで被告人側で一人称視点。実際はユウが被告人ではありません。後に出てくるエイジの目で見た視界を彼女が夢で見ています。
ユウ(またこの夢…)
裁判官「被告人を有罪とし、死刑に処す!」
高い位置にある席から裁判官が木槌を打ち付け、強い口調で言い放つ。
ユウ【ここ数年、誕生日前夜に見る夢は、私が処刑される夢…】


●前世エイジの舞台、魔法が存在する国 “ブルームス”

中世の北欧のような国。
賑わう街並から外れた森の中にほんの少し大きな家。※ 3人住める位の大きさです。
ベル「エイジ!お前、また街で勝手に魔法を使ったな!」
ベルが玄関のドアを開け、外に向かって叫ぶ。
エイジは屋根の上で居眠りしていて、仰向きに寝てあくびをしながら適当にベルに返事する。
エイジ「ごめん先生ぇ〜、カッとなってつい〜…」
すると真横に杖(スティック?)を持ったベルが突然現れ、エイジを立って見下している。※ 魔法で屋根上まで移動してきています。
ゴゴゴ…と、かなり冷静な顔で怒っている。
ベル「馬鹿者。魔法を“つい”で使うなと言っただろう」
エイジ「ご、ごめんなさっ……!!」

場面転換し、エイジ、ベル、ダリアの3人が食卓を囲うシーン。

ダリアはこの家の住込み家政夫兼エイジの兄貴的存在。中性的な顔。8:2で分けたテクノカットのブロンド髪。長身モデルのようなスタイリッシュな容姿。
ダリア「ベルも許してあげなよ〜。エイジだって魔女を差別する商人にちょっとビックリさせただけなんでしょ」
※魔法を使われて、商人がエイジに腰を抜かしているシーンを小さく描いてください。

ベルはブルームスの権威ある魔法使い。この国の魔女の中では一二を争う実力を持つが、常に魔法に真面目で厳格。エイジの師範であり、母親的存在。目鼻が少し濃く、30代前半くらいだが年齢を感じさせない美人。研究終わりか少し疲れ気味。
ベル「ダリアはエイジに甘過ぎる。全く…いいか、エイジ。魔法というのは使える者と使えぬ者が存在する以上対等を保つのが難しい技術なんだ。だがこの国で皆平等に生きていく為には、対等こそが土台であるべきなんだ。それを無視してあまつさえ力を行使するなんて……」

エイジはそんなベルの唯一の愛弟子。今作の主人公。捨て子で赤ちゃんの頃ベルの家に預けられた。淡いピンク系の髪色が目立ち、澄んだブルーグレーの瞳は大きく、目尻のまつ毛がハッキリとしている。少し暴走しがちで単純明快な少年。歳は16歳。お腹がすいていて待ちきれないのかベルの説教をよそにヨダレが垂らしているが、頭には大きなたんこぶが2~3個出来ている。

エイジ「ダリアの飯うまそー!!もう食っていい?魔法使った後ってめっちゃ腹減んだよなー!」
ダリア「いいよー、今日は市場で港町の魚が安かったから奮発しちゃった!魚のパイ絶対美味しいから食べてみて!」
エイジはキラキラな目で料理を見つめ手を合わせる。
ベル「お前たちィ…。ハァ…まあエイジ、とにかく人は傷つけるなよ。その為に魔法を教えた訳では無いんだ。そんなんではいつまでも半人前のままだ。後日その商人にはお詫びをしに行くからな」
落胆しながら料理を口にするベルにエイジはもぐもぐ頬張りゴクッと飲み込み言う。
「先生、ごめんなさい」
エイジは少し納得がいっていないのかムスッとした顔で続け、「でもさ、魔法使いだからってだけでパンひとつ買わせてくれなかったんだ。あっちだって対話する気無いぜ!」
ダリア「確かに、僕は魔法使いじゃないから実害無いけど、街とか魔法使いに対して中傷的な看板とか立ってたし、最近やたら目立つよね」
ベル「んん…まあ、そうなんだが」
ベル【確かに2人の言う通りで、近頃国中で魔法使いに対しての差別が蔓延っている。うだつの上がらない国の政策を誤魔化す為の言わばスケープゴートだろうが…】
※ここでベルが国の政治にも関わる立場だと見せてください。
ダリア「もー2人とも!ごはんは楽しい話して、美味しい顔で食べましょ!」
パン!と両手を鳴らし、笑顔で仕切るダリア。
ベル「ふっ…そうだな、すまないダリア」
ふふ、とちょっと嬉しそうに顔をほんのり赤くするダリアを見たエイジ。
ふーん?とした顔をしてフォークを口に咥え、自分の分のご飯が乗った皿を持ち「夜風でも浴びながら飯食おーっと」と立ちだして、部屋を出る。残された2人。
ベル「エイジ!…まったく、アイツは」
ベルは疲れ果てた素振りで、食事を続ける。
ダリア「ベルは…ほんといつまでもお母さんだね」
頬杖ついてベルに優しく笑うダリア。
ベル「(少し優しい顔で)…あの子を我が家で引き取ってからもう16年か…」



ベルの断片的な回想。外に出歩くことすら出来ないような猛吹雪の家。玄関の扉を開けると籠に入った泣き叫ぶ赤ん坊と手紙。

ダリア「そろそろ1人立ちさせたらどう?ある程度、魔法使えるようになったんでしょ?」
ベル「…いや、まだまだだよ。あの子は魔法…というより力を持つ者の責任が分かっていない」
ダリア「相変わらず厳しいなー。ま、そんなベルも僕は素敵だと思うけどね」
ベルはふ、と笑った。
屋根上でご飯を食べ始めるエイジ。
エイジ「うーん結構魔法使えるようになったんだけどなー、魔法の元の血魂も言うこと聞くし…。ったく、先生ほんと厳しいんだよなあ」
エイジ(もし、立派な魔法使いになれたら、先生たちに恩返ししたいな。新しい大きい家建てて、先生の書斎広げて、ダリアには世界中の花苗とかプレゼントして…)
エイジ「うっま!!流石ダリア!」

翌日、ベルとエイジは修行の一環として、魔法の元となる「血魂(けっこん)」の鍛錬をしていた。
ベルの部屋には様々な植物や本などが乱雑に置いてあり、エイジが窓際で向かい座るベルに見えるように、自身の人差し指をナイフで軽く切る。
切った所から血が滲み出し、そのまま下にある平らな皿へ滴り落ちる。
ベルはそっとそれを見つめる。エイジはふー…と深呼吸し集中すると、目をカッと開き、
エイジ「血魂、フレア!」
と呟く。
すると、血が蒸発し、空気中でバチッと軽く一瞬だけ火花が散り、そのまま余韻のように血の粉が下へ落ちた。
ベル「…エイジ、血の粉が落ちているぞ。己の出した血を全て余すこと無く使えと言っているはずだ。血は魂であり、お前自身だ。集中しないからそうなる」
ベルはエイジを冷静に諭す。
エイジ「だって!さっきまで隣山50周も走らされたのにそのあとで集中なんか無理だよ!」
図星か悪態つくエイジ。ベルが同じく指を切ると、スっと静かに「血魂、フレア」と呟く。
その瞬間、二人の間でバチバチっと強い火花が瞬き熱風が吹く。そしてそのまま痕跡も無くシン、と静まった。
ベル「私は100周したし、お前はまだ鍛錬が足りないんだ。集中するほど火花は強く瞬き、光風が舞う。例えば災害等の際に火打ち石の代わり等にも使えるだろう。灯台のように灯り代わりにもなるかもしれない。いいか?常に人の為に使いなさい」
エイジ「…先生、これ、もし人に当たったらどうなるの?」
ベル「血魂の火花は言わば小さな太陽のようなものだから、火傷どころではないな。勿論精度にも寄るから、お前のような半端者ならば火傷以下程度だろうが」
ベルは目も合わさず皿を片付ける。
エイジ「ぐぬぬ…攻撃型の魔法ってほんと使い道ムズい」
ベル「攻撃型だと決めつけるな。活用は様々にある……さて、都の議会所へ行くからお前も支度なさい。」

● ブルームスの都

賑わう街中。大きなロマネスク建築調の建物(政治議会の建物)を東に大きな都ができている。南にある港町から続く水道があり、それをつたって街の中央には大きな噴水が設置されて賑わっている。
「魔女追放を!」「魔女裁判に賛成!」というポスターが散見される。
エイジ「なーんか嫌な貼り紙」
エイジはムスッとチラ見する。
ベル「放っておきなさい」
ベルは一瞥もくれず歩いていく。場所は議会所。議会で働く者たちが集まる。ベルもその1人でエイジはベルの従者だ。

ベルとエイジが廊下を歩いていると、赤茶の短髪の大男が近づく。
ローダンセ「ベル!それにエイジ!いやあ、ベルがいるだけで場が引き締まるな」
屈託のない笑顔でベルの背中をバンバン叩く。
ベル「ローダンセ、すまないこんな忙しい時に暇を貰って。魔法省の皆は元気か」
ローダンセ「ああ元気さ、少したるんだがな!ベルは昔から働き過ぎだ!もっと俺達を頼っていいんだぞ!ハッハッハ!」とニコニコ笑う。魔法省の大臣であるローダンセはベルにそっと耳打ちする。
ローダンセ「ただ…すまない。西の魔女裁判を止められなかった」
ベル「!」
ローダンセ「罪状は魔法による人攫いだ。勿論冤罪だが…認められなかった。裁判執行者が国に言い伏せられた人間だったんだ。あと彼女は家族を人質に処刑前、魔法省の人間が指示したと言わせられている」
ベル「なんてこと…」
ベルは苦しそうに手で額を覆う。
ローダンセ「隣国に協力してもらってはいるが、正直魔女追放派の奴らの動きが早すぎてな…こちらが対話を求めるのをいいことに…」
2人が話している内容にエイジがムウ…とした顔でいると、奥にある出口がザワザワ騒がしい。すると門番を突破した記者が複数人近寄ってきた。
記者①「魔法賢者ベルさん!我が国の禁忌である不老不死の力を手にされたとのことですが本当ですか!」
記者②「真実であれば国家転覆罪となる大きな問題です!お答えください!」
ベル、ローダンセ達を始め、議会所がザワつく。
ベル「何の話ですか?」と怪訝な顔。
ローダンセ「根も葉もない話で初耳だ、どこから出た話だ?」
記者①「ご自身の事でしょう!この話に流石に国も動いてるとか」
記者②「この国で禁忌であると定められたものを得られたという事は、国に対する対抗勢力を作られるおつもりなのでは?」
煽るように問い質す記者達に「事実無根、証拠も無い」と否定するが、煽りは収まらない。
すると見ていたエイジが記者達に叫ぶ。「バカ言ってんじゃねえ!そうやって冤罪吹っ掛けて楽しいか!?先生がンなことする訳ねえだろ!アァ!?」
ベル「エイジ!やめなさい!」
記者「や、やはり、市民を魔法で脅すのか!」
エイジ「安心しな、テメェらだけだよ…」
挑発に歯止めが聞かないエイジは気をザワつかせ、己の血が貯まっている魔法用の特別な携帯用瓶にそっと手をやる。するとベルがエイジの手を叩き、無理やりガシッとエイジの頭に手を付き、自身と共に強引にお辞儀させる。
ベル「大変失礼いたしました。この者の無礼については私の指導不足でございます。とにかく…この場はどうかお帰りください」
エイジ「なんっ…」
エイジが文句言おうとするがベルがそのまま動かない。しかも力が強い為エイジも視線しか動かせないが、ベルの表情は髪で見えないでいる。
ローダンセが記者達を追い出していく姿を見届けるベルとエイジ。
エイジは納得がいっておらず、イライラしている様子。


● ベルの家

エイジ「先生!なんでもっと言い返さなかったんだよ!」
怒号でキッチンで調理していたダリアがビクッと驚く。
ベル「…当たり前だ。事実無根な上に、あんな分かりやすい挑発にわざわざ乗る必要などない」
背後で激昂するエイジに、ベルは何事も無かった様に資料を整理している。
エイジ「なめられていい加減悔しくねえのかよ!!」
ベル「…それよりも、また言いつけを守らなかったな。魔法を使えない者に力を行使するなと何度言わせるんだ」
エイジ「…ッ、そんな奴らに殺されてる仲間がいても…そんなこと言うのかよ」
言いにくそうに話すエイジにベルの手が止まった。
エイジ「争いがダメとかは分かってるよ!でもこの国の流れが無実の仲間に手出してるってわかってて黙ってられるほど、俺は出来た人間になれねえよ…」
ベル「エイジ、」
振り返るベルにエイジは悲しそうに心底悔しそうに見下ろす。
エイジ「先生はきっとこの先のこと考えてるんだってわかるけど」
エイジ「それが理想だとしても……そんな人間なら、俺は、嫌だ、なりたくない」
ベル「エイジ、それは」
話を聞いて欲しいと、ベルが片手をエイジに向ける。
エイジ「こんな先生、見たくなかった」
今にも泣き出しそうな顔でベルを一瞥して、部屋を飛び出し、バン!と大きな音で自分の部屋を閉めベッドに籠るエイジ。ぽつんと呆然とするベル。ダリアがやって来て、エイジの部屋のほうを見た後、ベルを見つめ「ベル、どうしたの」と聞く。
ベル「…すまない、少し1人にしてくれ」
ベルは寂しそうに呟いた。

夜。寂しく食卓でご飯を食べるダリアは、ベルが心配で部屋をもう一度覗く。
ダリア「…ベル、エイジも年頃だから、カッとなっただけで大丈夫。きっと明日になれば頭冷やして謝ってくるよ」
ベル「…」
背中を向けたままのベル。
ダリア「…」
やれやれと肩をすくめ、ダリアはベルの部屋の入口付近のテーブルに食事の入ったトレーを置く。
ダリア「北の山で採れた甘くて美味しい果実パイ作ったから!超レアな果実なんだから絶対食べてよ〜!絶対元気出るから!」
ダリアはそう言って部屋を去った。
ベル「…」
ベルは顔を覆っている。

更に深夜。ホーホーとフクロウの鳴き声。
ダリアは自分の部屋でスヤスヤ寝ている。ベルの机は灯りが着いているが…、エイジがコソっとベルの部屋を覗く。そーっと近づくとベルは泣き腫らした顔で机に突っ伏して寝ていた。エイジは申し訳ない顔で、そっとブランケットをかける。
すると自分の腹が大きく鳴る。昨夜は「飯いらない!」とダリアに突っぱねてしまった為、ご飯を食べていなかった。
エイジ「…うう、先生、ごめんなさいっ」
部屋の隅にある手付かずのパイを半分食べる。
エイジ「うま!先生ごめんなさい、明日きちんと謝ります。パイ食べた事も含めて」


●エイジの夢の中。

誰かの声が聞こえる。
神「憐れな子よ、お前の命は直に……ああ、あの世の狭間で……また会おう」
何者かのぼやけた輪郭だけが見える。エイジの頬に触れそうで触れない距離まで手を差し伸べている。
エイジ(誰だ…俺の命が…何…)


●再度深夜の家。

エイジ「ハッ!!」
夢に魘され、目が覚めると体が熱っぽく汗ばんでいる。
エイジ「なんだ、さっきの夢…」
すると玄関からバタバタと騒がしく聞こえる。心配で見に行くと、憲兵達がベルを連行しようとしている。
憲兵長「ベル・オーバー。お前が不老不死の力を振りかざし、市民に不安を煽り騙し、国を混乱へと陥れているという密告があった。よって尋問を行う。留置場へ連れて行け」
ベル「何のことだっ…」
唖然とするエイジ。
エイジ「…テメェら何してんだゴラァ!!!」
エイジは叫び飛び掛るが憲兵隊が彼を押さえつける。
ダリア「ベル!何があったの!アンタ達ベルを離しなさいよ!」
続いてダリアも憲兵に詰寄るが、簡単に取り押さえられた。
エイジ「クッソ…テメェらいい加減に…(くそ、こんな時に頭痛え…体が熱い)」
ベル「待て!2人は関係ない!触るな!ウッ」
憲兵「黙れ!抵抗するな!」
憲兵に殴られたベルがエイジの瞳に映し出され、彼は何かが切れたように叫ぶ。
エイジ「その汚ぇ手で……ッ、先生に触んじゃねぇえ!!!!!」
途端エイジの赤黒い殺気がぶわっと勢いよくその場を巻き込むように広がった。
兵士たちが慌てふためく。ベルも驚いている。
我を忘れたエイジは怒りに任せ目を見開く。
ベル「エイジ!やめろ!!」
ベルが叫ぶが間に合わず、エイジは先程殴られて出た己の血が着いた両手を前に差し出し、大声で呪文を唱えた。
エイジ「血魂!!フレア!!!!」
途端、今までに無い、ベルの火花以上の暴風のような音と火炎が起き、複数の憲兵が騒ぎ火傷などし負傷する。
エイジ「ハァッ…ぐっ……ハァッ、ハアッ」
立っているだけで精一杯な状態のエイジ。汗だくでぜえぜえしている。ベルもダリアも憲兵長も驚き、傍には倒れた憲兵たち。
ベル「……エ、エイジ…お前…」
ダリア「……」
エイジ【みんな…何やってんだ逃げてくれよ…先生…戦ってくれよ…俺は…また3人で…ああ、視界が…】
エイジ「せん……ダリ…逃…げ…」
そのままグラッと白目を剥き、エイジは倒れた。

●裁判所併設している牢獄。

鎧を着た兵が牢の外で1人立っている。3人はそこに投獄されている。
エイジが目が覚めると、木の手枷で両手を嵌められたダリアが「起きた…っエイジ、ホント心配させて…」と泣きながら寄り掛かる。
エイジ「ここは……せ、先生はっ!?」
ダリア「ここは特別裁判所の牢よ。今、ベルが取り調べ受けてる。」
エイジ「そんな…今すぐ止めさせねえと…!」
動こうとするが体がまだダルいのと手が縛られている為、上手く動けない。
ダリア「無理よ…今は何とかベルが話付けに行っているはずだから、大丈夫、安心して。ベルを信じましょ」
エイジ「……でも…」
ダリア僕たちがこれ以上暴れても、ベルの立場が危うくなるだけでしょ。ローダンセくんも近くにいるはずだから、じっと耐えるの。いいね」
エイジ「……」
ダリアの真っ直ぐに真剣な顔で黙り頷くエイジ。
ダリア「それよりエイジ、その…大丈夫?さっきの魔法のせいか体調悪いみたいだけど…」
エイジ「え?ああ、いや、なんか魔法使う前から…」
エイジが話し始めると、扉の奥の階段から音が聞こえる。ベルの取り調べが一旦終わり、憲兵に連れられてきたのだ。

憲兵「ベルの尋問は終了した。次はダリア、貴様の番だ。来い!」
グイと雑に引っ張られる。
ダリア「ちょっと!丁重に扱ってよね!」
エイジ「ダリア!」
ダリア「だーいじょうぶ!こう見えて僕強いんだから!エイジはベルを見てあげて」
ダリアはウインクをして笑顔で連れられていく。
ベル「……エイジ…」
やつれた顔でベルがエイジに話しかける。
エイジ「せ、先生、大丈夫!?怪我してない!?」
ベル「ああ…大丈夫だ、ありがとう。……いや、そうじゃないな」
ベルは向き合ってエイジの額にコツッと己の額を当てる。
ベル「エイジ…ダリア…本当にすまない。こんなことに巻き込んでしまって…本当に…」
ベルはかなり疲れた顔をしていた。
エイジ「何言ってんだよ先生!俺らなら大丈夫だよ!」
ベル「……。エイジ、落ち着いて聞いてくれ。」
エイジ「え?う、うん」
ベル「……今回の密告はあの噂の通り…私が不老不死の強大な力で国を混乱に貶めようとした事へ対してのものだった」
エイジ「は!?」
ベル「勿論でっち上げだが、何故か不老不死の力の源になる金の実が家にあったことになっている。証拠として見せられたが、私は法や禁忌を犯しはしない…が…魔女裁判で我々が勝つことは無理だ」
エイジ「なんで!?そんなの家に無かったろ!?」
ベル「証拠なんかどうとでもなる。アイツらは立場ある私を見せしめにして魔女の勢力にトドメをさしたいんだろう」
エイジ「そんな…!こうなったら魔法で…!」
エイジは床をガンと強く殴った。
ベル「それはダメだと言っただろう」
エイジ「だから何で!魔女裁判は絶対実刑判決なるんだぞ!こんな冤罪…それを見逃したら先生が…!先生言ったじゃん、魔法は人の為に使えって!それが今だろ!?!それにっ…不老不死の伝承だって本当にその通りかなんて…」
ベル「真意のほどはともかく、これだけ有名な実だ。口実としては充分さ」
エイジ「なら!」
ベル「…確かに、冤罪で無数の仲間達が苦しんできた。その通りだ。それでも話合いをして融和するんだ。悪意の挑発に乗れば同じ立場になってしまう。ここまで来ると魔法使いも憎しみを抱いた状態で戦うことになるんだ。それでは後世も争いは避けられないし、解決にならないと私は思っている。この苦しみの連鎖は、私達が最後でなきゃダメなんだ」
エイジ「だったら…どうしろって言うんだよ…」
ベルはそっとエイジの頬に触れ、優しく見つめる。
ベル「生きてくれ。何があっても強くあってくれ。…そして弱き者を守る為に、正しいと思うことにその力を使いなさい。私はこの結論を選んだが、お前がお前なりの答えが見つけた時…次会う時にその答えを教えてくれ。勝手ですまないが…頼む、これが最後の教えになる。」
エイジ「…せん、せい…?何言ってんだよ、さ、最後って…」
ベル「…きっとダリアが戻ってきたら次はエイジ、お前が尋問を受ける番だろう。だがお前はさっきの魔法のこともあり、かなり危険視されている。そこでお前はローダンセに協力してもらって、無関係だと言うことにするから、そのまま街を超えて海の向こうの国まで亡命するんだ。」
エイジ「せ、先生は?ダリア達は!?」
ベル「…大丈夫、私達はきっとお前を守ってみせる」
エイジ「答えになってねえよ!先生、俺だけ助かるなんて」
ベル「エイジ、頼む…最初で最後の、…これは母としてのお願いだ」
堪えられずベルの涙がポタっと床へ落ちる。
エイジ「…なんで…俺ッッ」
エイジもボロボロに泣いている。何かを絞り出すように、グゥっと噛み締め、何かを振り切るように頭を振り、そして、前を向く。

エイジ「先生、俺、先生の子供で幸せでした。ありがとう」
ベルが泣きながら手を触れた瞬間、頭に強く重い衝撃を受け気を失う。
エイジがベルを木の手枷で思いきり殴ったのだ。ドサッと倒れるベルをエイジは冷たい目で見つめる。その瞳からは涙が一筋伝ったが、強い決意が滲む目だった。


● 裁判所

ザワつく裁判所。傍聴席は国民たちがかなり集まっていた。
モブ市民「おいおい聴いたか、今回の騒動、ベル様んとこの弟子が企んでたって自供したらしいぞ」
モブ「やっぱりな!ベル様があんなひでーこと考えるはずねえって思ってたよ」
モブ「でも師匠としての責任があるだろ」
静粛に!と木槌の音が響く。
裁判長「被告人、エイジ・オーバー。お前は師であるベルの下にいながら不老不死の力があると言われる実を手に入れ、魔法使い界隈や家族を巻き込み、ひいては国ごと混乱に陥れようとしていた。その為に、賢者ベルを利用し、そのチャンスを待っていたと。間違いないな?」
エイジ【連鎖の最後は、先生達じゃない】
陪審員席で退屈そうに見つめる国の役人と苦しそうに見つめるローダンセ。

裁判長「被告人は弁明無しか?」
無表情だったエイジは、途端に人一倍悪い顔で大笑いした。
エイジ「…フッ、フハハッ、アハハハハ!!大正解!!合ってるよ!俺一人だけで考え抜いた悪戯さ!!それにみんな揃って騙されてんだから笑えるよなあ!!ベルも役人共も利用されてんの気づかずコロッと騙されやがって馬鹿ばっかだ!!!まあ俺はこんな国が混乱してんの見れりゃ最っ高に満足なんだよ!!!」
すると傍聴席の国民たちの怒号が飛び交う。エイジは一世一代の大芝居を打って出た。
ベルとダリアが傍聴席を掻き分けて、証言台に立つエイジに叫ぶと目が合うが、彼は悪い顔で笑った。ベルは絶望の顔。
エイジ【俺がその最後になる】
ベル「違います!彼は!彼はそんな子ではありません!」
ダリア「ベル!」
ベル「エイジ!エイジ!!」
その声は怒号で掻き消される。
混乱の中、裁判長が木槌を叩きつけ叫ぶ。
裁判長「被告人を有罪とし、即死刑に処す!!火炙りの刑として、処刑人は即刻準備せよ!」

ザワつく処刑場。晒し台のようになっている。国民も見れる広場。
エイジ【先生…ダリア…ごめん、最後まで勝手なことして】
準備が着々と進むのを丸太に貼り付けされた状態のエイジが無気力に見つめる。
エイジ【ダリア…本当に大好きだったぜ、憧れの兄貴だった。先生のこと、よろしくな】
エイジ【先生……先生には本当に感謝してる。俺は、先生のこと、本当に尊敬してる。きっと、母親ってこんな感じで………なんで俺たちが…】
処刑人が下の木々に火を放つ。
エイジ【ただ、ただ生きていたかっただけなのに…。クソ!クソ!!ああ、もうダメだ…もう死ぬ、熱い!熱い!!ぐああ…神様!いるなら!!神様どうか、あの人達を…】
風と共に大きな業火がエイジを包む。

エイジ【ああ、もうあの家にはもう、戻れないんだ…俺たち】

楽しかった3人の食事風景が走馬灯として見える。

火はゴオッと唸り、勢いよく彼を飲み込み燃え上がった。
※最後、国の景色が遠ざかっていくように描いてください。




● この世界によく似た現代。朝。

ユウ「……ッ!!」
部屋でガバッと起き上がり目が覚める女子高生 ユウ。げほげほと咳込む。
ユウ「…また…ッ、この夢…」

● 同時にとある場所の墓 ※ユウのシーンと並行して描いてください。

荒れた墓地の隅にある墓。大きな掘り起こされたような土の盛り上がり。
ユウ「なんなの…一体…」
そこから片手がガバッと地面から飛び出すように出てくる。





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