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「アイラブユー、オーバーエイジ。」第3話/第一夜

●引き続き丘の上のビル。満月が眩しく照らす。

ユウ「償いに来た…?」
空を浮かぶ死神と後が無いユウの間にエイジが入る。
ユウ「あなた一体…」
エイジを背後で見つめるユウ。
エイジ「話は後でだ。俺から離れるなよ」
死神「…誰、アンタ」
そう言うと死神が改めて大きく鎌を振りかぶる。
エイジは素早くユウを容易くお姫様抱っこする。
ユウ「へっ!?」
エイジ「俺に掴まれ。飛ぶぞ」
言うやいなや屋上から飛び、エイジは勢いよく隣の建物に移る。
ユウ「ぎゃあああ!」
死神「なっ…!」
ダンッと着地するエイジ。そのままユウを連れて、ビルの中へと入っていく。
静かな夜のビル内。散乱する器材や資材などの陰に隠れている。
エイジ「このままやり過ごして朝を迎えよう。アイツは満月の夜しか狩りができないんだ」
ユウ「朝!?ちょっと待ってよ!狩りって、な、何てかアイツは何!?んで、アンタは何者なの!?」
パニックなユウは食い気味で聞く。
エイジ「アイツは死神だよ。今日が命日のお前の魂を狩りに来た」
ユウ「……め…ねえ、私今日死ぬって本当なの?」
先程死神から言われた言葉を思い出し、絶望的な顔で尋ねるユウにエイジは向き合い語りかける。
エイジ「いや、死なない」
困惑するユウ。
エイジ「死なせない。その為に俺が来たんだ」

死神「ふーんふん♫アイツはどこかな〜」
怪しく笑う死神はステップを踏みながら進む。

ユウ「よ、よく分かんないけど、順番に話して…頭整理したい」
エイジ「そうだな。…まずユウ、お前は急遽17歳で死ぬ事が決まったんだよ」
ユウ「何で…か、体弱いから…?」
反応に困るユウ。エイジは続ける。
エイジ「だから、そんなお前の魂を狩りに死神が躍起になってんだ」
ユウ「そんな…なんで私が…」
エイジ「俺達が飯を食うように、死神にとって魂を狩ることは同じような意味があるんだ。でも本来死ぬ事象のあとに死神が魂を救うから、アイツみたいに死神の手で殺すことは出来ない」
ユウ「じゃあなんでアイツは」
エイジ「死神にも…色々いるらしい。…でも、大丈夫だ。俺がお前を守る」
ユウ「どうやって?」
エイジ「死神の心臓を焼くか、朝まで待つか…。満月の力が無けりゃ人は殺せないはず。つまり朝が明けたら助かる見込みかある」
ユウ「ね、ねえ…どうしてエイジはここまで守ろうとしてくれるの?エイジは一体なんなの?」
エイジは少しだけ黙り、ユウが怪訝な顔で見つめる。
ユウ「…エイジ?」
エイジ「実は、」
死神「ユウちゃーーん」
エイジ「!」
死神「もう隠れてないで出ておいでよー」
そう言うと死神は鎌で部屋を荒らし始めた。2人は急いで物陰に隠れ、息を潜める。
ユウ「どうしよ、アイツ来ちゃった」
エイジ「…クソ」
死神「あと、邪魔したお前ー」
死神が2人の近くを通る。
死神「お前、伊良部ユウの前世だろ」と冷たい顔で言い放った。
※2人のアップでお願いします。
死神「同じ魂の匂いなんだもん、すーぐわかっちゃった。なんでここにいるのか知らないけど、そりゃユウも死ぬことになるよね」
歩きながら悪い笑顔で続ける。
死神「同じ世に2つの同じ魂はいられないもんねえ。アンタなんでここにいるの?」
ユウはエイジを見つめる。
エイジは申し訳無さそうに俯き、暫くするとグッと目を閉じ歯を食いしばり、そしてユウの手を握り、彼女の顔を見つめて何かを話す。

すると走っていくユウを見つける死神。
死神「あーー見つけた!てか逃げてんじゃねーよ!!」
と鎌を振ると暴風が起きる。追いかける死神にエイジが現れ、飛び蹴りをする。死神は勢いよく追いかけたので、勢いそのまま器材などに衝突する。
死神「…がはっ…何すんだよ!」
エイジ「テメェ…俺がどう伝えようか悩んでた事、ベラベラ喋りやがって…絶対ェあの世に送り返してやる」
エイジは怒りに満ちた顔で睨みをきかす。死神はニイッと笑い再度大きな鎌を振り回す。
死神「フッ、死に損ないの魔法使いが」
エイジ「うるせえな」
エイジはしていた鋭利な石のようなネックレスで手を傷つけ、血を滲ませ、深呼吸し、死神に向かって駆け出す。
素早い動きで死神の頬に拳がかするが、死神も素早く避ける。
死神「そんなん当たるかよ!ウスノロ!」ズサッと地面を滑る。
エイジ「さっきは当たったろうがよ!」
エイジは右ストレートを繰り出す。そして避けた死神は素早く地面に手を付き、左足を蹴り上げエイジに当てる。
そんなやり合いを続け、エイジは死神に鎌で頬を斬り付けられ血が噴き出す。
エイジ「グッ…」
拳で拭うエイジに死神は完全に舐めた顔で笑う。
死神「ざっこー」

一方、ビルから出たユウは走って家に向かっていた。
ユウ(なんなの…なんなのマジで)
ユウは走りながら先程のシーンを思い返す。

【回想】
エイジ「アイツ(死神)の言ってることは…殆ど真実だ。」
ユウ「…ハァッ!?」
エイジ「だけど、俺達2人が揃えば半分にされた魂が共鳴して一つの魂としてアイツを倒す力を発揮できるんだよ。何もしなければユウは…死ぬ……けど!その力があれば俺はユウを全力で助けることが出来る」
ユウ「…は、もう意味わかんない…」
エイジ「このままじゃ、お前の寿命は17歳で終わっちまう。…頼む。俺達の輪廻を元に戻す為に、ユウがこれからも生きてく為に、お願いだ。俺を信じてほしい」
ユウ「そ、そんなこと言われても…」
エイジ「振り回して本当にごめん。でも、信じて欲しい。俺は絶対に、お前を死なせない。絶対に守る」
ユウの手を握り、真っ直ぐに見つめるエイジ。
ユウ「なに、ほんと、もう意味わかんないよ…」
と混乱の中ユウは走り出して逃げてしまう。
エイジ「ユウ!」
【回想終わり】

死神「魂を二分されてるから」
エイジ「2人が揃えばアイツを倒す力を発揮できる」「ユウがこれからも生きてく為に、俺を信じてほしい」

ユウ「んああ〜!本当にもうどうしよ…、け、警察…?ああでもなんて言えば……!」
状況に戸惑い狼狽えるユウに姉からスマホのメッセージが届く。実は先程松雪と歩いている時に、ユウは危険を感じ姉に助けを求めるメッセージを送っていたのだ。
(※メッセージで、ユウ【お姉ちゃん、助けて〇〇ビルに連れてかれそう】姉【大丈夫!?すぐ行くから待ってて!】とやり取りしてます。)
ユウ「や、ヤバい忘れてた!お姉ちゃんがビルに行っちゃう…!」

シーンはまたエイジと死神に。建物内。まだ決着が付かない。
エイジ「血魂!フレア!」
そう叫ぶとエイジは頬の血を拳で拭き、その拳を魔法で燃やし、死神に殴りかかる。が、間一髪で避けられる。
死神「ちょっとー!めっちゃ血ィ付いたじゃん!」
エイジ「…ハァ、ハァ…」
お互い決定打を決められないものの、エイジのほうがバテている。
エイジ(クソ…やっぱり力が上手く出せない…でも死神の心臓さえ焼ければ)
死神「ふん…どうせ伊良部ユウに逃げられてんだろ。アンタも諦めな、所詮人間なんて弱い生き物でしょ」
エイジ「…(ユウは逃げれたのか…?このまま朝を迎えられたら…御の字…)」
死神「…なんでアンタがここに来れたのかもよくわかんないけど、冥土側の私からしたら、現世のあの子なんかほっとけばいいのにって思うよ。アンタが生きて、あの子が死ぬ。私は極上の魂も貰える。折角輪廻に逆らえてる生きられてんだから、それでwin-winじゃん」
死神がエイジに憐れみながら問う。そんなエイジは口を拭いながら答える。
エイジ「…確かに何もしなきゃ俺はこのままなら死なない。」
死神「だったら!」
エイジ「でも、それはユウには関係ない」

エイジはベルの顔を思い返す。
ベル【お前が正しいと思うことに力を使いなさい】
【お前がお前なりの答えが見つけた時…次会う時にその答えを教えてくれ。】
エイジ(先生…俺は、)

エイジ「アイツを巻き込みたくなかった…だから、俺が今お前を倒す。これで良かったんだ。それが運命に対する抗いだとしてもな。」
そう言うとエイジは吹っ切った様にニッと笑った。
死神は、はあ…と溜息を着いて「抗ってんじゃねえよ」とイラついた顔で鎌を振りかぶった。すると鎌が天井に当たり、粉塵が舞った。
エイジがゴホッゴホッと咳込みながら口を覆っていると、後ろからユウがエイジの元に戻ってきた。
ユウ「エイジ!」
エイジ「ユウ!!…どうして」
ユウ「家族がこっち向かってるの!その前にコイツ倒さないと!!」
エイジ「で、でも」
ユウ「信じる!…信じるから!私だって…大切な人巻き込みたくないの!!」
ユウはグッとエイジの腕を掴んでそう言った。エイジは暫くユウを見つめると、悟ったのかキリッとした笑顔で言う。「わかった。ありがとう」

死神「もーなんなんだよ!!!イラつくなあ!」
鎌を一振り、二振りして風を起こし、粉塵を飛ばす。粉塵は無くなるとエイジとユウが正面に立っていた。
死神「…!…なんだ戻ってきたの?悪いけど、もうお喋りはお終い。さっさと死ね!」
死神がもう一度鎌を振りかぶった時、エイジとユウは「血魂!フレア!」と叫んだ。
すると死神の体や服に着いたエイジの血がゴオッと燃えた。
死神「ぎゃあッ!?」
死神【突然、火が!?…そうか、アイツ拳をかすめたのはわざと燃える血を付着させる為…】
死神「ぐあ…よくも私に…この…死に損ない共がァ!!!」
我を忘れ半身燃えながら死神は2人へと鎌先を向ける。
エイジはユウの手を握りもう一度叫んだ。
エイジ「あの世に帰れ!」
すると鎌先も全身も燃え、轟音を鳴らす火柱が立った。死神は阿鼻叫喚の中、そのまま塵になって消えた。
ユウ「…お、終わったの」
エイジ「…。ああ、殺気も消えた」
ユウは力が抜けたのか、ぺたんと尻もちをし「こ、怖かった…」と涙目に言った。
エイジはふ、と優しく笑い、膝をつきユウを抱き締めて言った。「ありがとう。ユウは俺が絶対に守りきる」

姉「ユウ!ユウ!!」
遠くで姉の声やサイレンが聴こえる。
ユウはエイジの手を握り言った。
ユウ「エイジ…私達のこと、教えて」

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